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ル・コルビュジエ:システム開発に通じる設計思想と全体の機能美

リプリパ編集部

「細部の完成度が全体を決める」「ミニマムに作って高速に改善する」「細部と全体の調和」というアジャイルな姿勢は、システム開発のスタイルというだけでなく、BlueMemeの企業哲学そのもの。

それを生涯をかけて追求し続けたのが、近代建築の父とも呼ばれるル・コルビュジエです。今回も、BlueMemeの会議室の名前をきっかけに、「システム開発と建築との関係」について深掘りしてみます。

BlueMemeが会議室名に「コルビュジエ」を採用した理由

東京神田錦町のBlueMeme社内に複数ある会議室には、それぞれ世界的な建築家の名前が付けられています。GAUDI(ガウディ)とHADID(ハディド)は以前紹介しました。

今回紹介するCORBUSIER(コルビュジエ)と呼ばれる部屋は、10人程度を収容できる場所です。

リモート時代とはいえ、お客さまを含めた対面の打ち合せでよく使われる会議室です。ホワイトボードやモニターも完備しているので、打ち合わせ中のメモはここに書いたり、プレゼン資料を映しながら。外からよく見えるので、誰がどんな会議をしているのか、何となく分かります。

入口と壁はガラスなので、柱もないので開放感があります(入口を押すのか引くのか、毎回少し迷ったりもしますが…)。最大人数が着席することはあまりありませんが、そういうときは流石にちょっと息苦しいことも。

壁がガラス製なのはいろいろメリットがあって、会議に参加している人に急ぎの用事がある場合、紙にメッセージを書いて、ガラス窓越しに見せるアナログな方法も使えます。また、前の会議が長引いていたら、付近をうろうろすることで、使用時間が過ぎていることをやんわり知らせる作戦も。

オフィスの受付カウンターや経理部の勤務エリア越しに、西隣のビルが見えます。よく晴れた日は、西日やビルに反射した光が眩しく差し込みます。

この部屋は、20世紀を代表する建築の巨匠であるル・コルビュジエ(Le Corbusier)へのオマージュですが、単なる偉大さへの敬意だけではありません。

彼が生涯をかけて追求した「細部の完成度が全体を決める」「ミニマムに作って高速に改善する」「細部と全体の調和」という哲学こそが、BlueMemeの企業姿勢に深く通じているからです。

1914年、ル・コルビュジエが提唱した「ドミノシステム」は、柱・床・階段だけで構成される最小限の骨組みでした。装飾を削ぎ落とし、構造の本質だけを残す。工業化された部品で迅速に展開し、同じモジュールを組み合わせることで、さまざまな規模の建築に対応する——これは、現代のソフトウェア開発に通じる発想です。

また、後述する「近代建築の5原則」は、それぞれが独立した要素でありながら、全体として調和する「全体性」の具現化でした。私たちBlueMemeが目指すのは、ル・コルビュジエの建築思想に通じる「小さな単位での全体性」なのです。

ル・コルビュジエとはどんな建築家か?

ル・コルビュジエ(Le Corbusier、本名:シャルル=エドゥアール・ジャンヌレ=グリ 1887-1965)は、スイス生まれの建築家で、都市計画家、デザイナー、画家です。20世紀の建築界に最も大きな影響を与えた人物の一人とされ、後述する「近代建築の5原則」や「モデュロール」といった理論を通じて、建築のあり方を根本から変えました。

若き日のル・コルビュジエは、時計職人の家系に生まれ、装飾美術を学びました。しかし、旅を通じてさまざまな建築に触れる中で、装飾ではなく構造そのものに美を見出すようになります。

1920年代、彼はパリで活動を本格化させ、『住宅は住むための機械である』という有名な言葉を残しました。これは冷徹な機能主義を意味するのではなく、「無駄を削ぎ落とした合理性の中にこそ真の美がある」という、機能美の宣言でした。

ル・コルビュジエの主な代表作

サヴォア邸(1931年 フランス)

近代建築の5原則を完璧に体現した住宅建築。白い箱のような外観、1階を開放するピロティ、屋上庭園、水平に連続する窓。シンプルでありながら、光と空間の関係が計算し尽くされた傑作です。

サヴォア邸(1931年 フランス)
サヴォア邸(1931年 フランス)
出典:写真: Omar Omar CC BY 2.0
https://www.flickr.com/photos/omaromar/9858756/
https://maps.app.goo.gl/dk2RGAXAejHMzYfMA

ロンシャンの礼拝堂(1955年 フランス)

合理主義からの脱却を示す、彫刻的で有機的な建築。厚い壁に開けられた不規則な窓から差し込む光が、神秘的な空間を作り出します。

ロンシャンの礼拝堂(1955年 フランス)
ロンシャンの礼拝堂(1955年 フランス)
出典:Author: 6A.BourgeoisP
https://fr.wikipedia.org/wiki/Fichier:2012-Chapelle_Notre-Dame-du-Haut.jpeg
https://maps.app.goo.gl/jA5Yaf2YWGvH8NbLA

国立西洋美術館(1959年 東京・上野)

日本に唯一あるル・コルビュジエ建築であり、世界遺産にも登録されています。「無限成長美術館」構想に基づき、中心から外側へと螺旋状に展開する設計が特徴です。BlueMeme本社からも30分弱。

国立西洋美術館(1959年 東京・上野)
国立西洋美術館(1959年 東京・上野)
出典:Author: 663highland CC BY-SA 4.0
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:National_museum_of_western_art05s3200.jpg
https://maps.app.goo.gl/cxX4DfKPjQ9iTre28

ル・コルビュジエの主な功績

次に、彼の主な功績にフォーカスを当ててみましょう。

1. ドミノシステム:モジュール設計の原型

1914年に発表された「ドミノシステム(Maison Dom-Ino)」は、柱・床・階段だけで構成される最小限の骨組みです。壁や間仕切りは自由に配置でき、工業化された部品による大量生産を可能にしました。

建築を「部品の組み合わせ」として捉えたこの発想は、高品質なプロトタイプを設計し、それを複製することで全体の美しさを保証する。最初の設計の完成度が、すべてを左右するという思想を体現しています。

2. 近代建築の5原則:標準化されたルール

1927年、ル・コルビュジエは「近代建築の5原則」を体系化しました。これらは、各要素が独立しながらも全体として調和する「全体性」を実現するルールです。

  1. ピロティ:柱で建物を持ち上げ、1階を開放する
  2. 屋上庭園:屋上を緑化し、都市に自然を取り戻す
  3. 自由な平面:構造から解放された、柔軟な間取り
  4. 水平連続窓:横に長く連続する窓で、均質な採光を実現
  5. 自由なファサード:構造と切り離された外壁デザイン

3. モデュロール:人間中心設計の比例システム

「モデュロール(Modulor)」は、人体の寸法を基準とした比例システムです。かなり大柄ですが身長183cmの人間が手を上げた高さ226cmを基準に、黄金比やフィボナッチ数列を組み合わせた寸法体系を、ル・コルビュジエは構築しました。

人間の身体という小さな単位から全体を設計する発想は、連続するフラクタル的な全体性そのもの。モデュロールというシステムは、建築だけでなく、家具や都市計画にも応用されました。

4. 「住宅は住むための機械」:機能美の追求

この言葉は、しばしば冷たい機能主義の象徴として誤解されます。しかし実際には、「無駄を削ぎ落とした構造そのものに美がある」という、機能美の宣言でした。

装飾ではなく、構造が語る美しさ。効率性と美は対立するものではなく、むしろ、「真に効率的なものこそが美しい」という思想です。

5. 都市計画への影響:全体最適の視点

ル・コルビュジエは、建築単体ではなく、都市全体を見据えた設計思想を持っていました。「輝く都市(La Ville Radieuse)」構想では、高層建築と緑地を組み合わせた未来都市を提案。建築というミクロから、都市というマクロへ。全体性を保ちながらスケールアップする発想を示しました。

6. 継続的な進化と適応

さらに、ル・コルビュジエは、生涯を通じて自らの理論を更新し続けました。初期の工業化・合理化から、中期の彫刻的表現、後期のブルータリズム(装飾的なデザインよりも、建材や構造要素を強調する建築様式)へ。時代と対話しながら進化を続けた姿勢は、変化への適応そのものでした。

BlueMemeの企業文化との接点

ル・コルビュジエの建築思想は、BlueMemeが大切にする価値観と深く共鳴しています。

ドミノシステム=APIやMCP、マイクロサービス

柱・床・階段という最小限のモジュールを組み合わせて、さまざまな建築を生み出すドミノシステム。これは、現代のシステム開発におけるAPIやMCP、マイクロサービスに通じています。高品質な小さなコンポーネントを設計し、それらを自由に組み合わせることで複雑なシステムを構築する。最初の1つの完成度が、全体の美しさを左右します。

5原則=アジャイルのプロトコル

近代建築の5原則は、アジャイルマニフェストとして整理された「標準化されたプロトコル」に相当します。スプリント、デイリースタンドアップ、レトロスペクティブ——これらのルールが、チーム全体のパフォーマンスを高め、調和を生みます。日本家屋なら、茶室における作法や流儀のように、決められたルールが全体の美しさを保証します。

モデュロール=UX設計

人間の身体を起点に、建築全体を設計するモデュロール理論。これは「ユーザーを起点にシステムを設計する」UX設計の先駆けです。アジャイル開発における「ユーザーストーリー」から設計を始める思想——小さな単位であるユーザー体験(CX)から、全体(システム)へと広げていく、フラクタル的な全体性です。

機能美=美しいコード

「住宅は住むための機械」という言葉が示す機能美。これは、システム開発における「美しいコード」に通じます。それは、人とAI両方にとって可読性(リーダブル)が担保されていることであり、保守性が高く、無駄のないコードのことです。

効率性と美しさは対立しません。むしろ、真に効率的なものこそが美しいといえます。装飾ではなく、構造そのものが語る美しさです。

継続的改善=アジャイル開発

ル・コルビュジエが生涯を通じて理論を更新し続けたように、「ミニマムに作って、トライ&エラーを高速に繰り返し、常に改善していく」アジャイル開発。変化する時代や環境に適応しながら、アルハンブラ宮殿のように何百年もかけて進化を続ける姿勢です。

環境設計が行動を誘導する

BlueMemeのオフィスには、名前が付いた会議室以外に、「スタンディングテーブル」があります。背もたれがなく、座面にクッション性もないため、長時間は座っていられません。つまり、「できるだけ早く会議を切り上げよう」と自然に思える設計です。

これは、ル・コルビュジエが追求した「環境設計が人の行動を誘導する」思想にも通じています。アジャイル開発における短いスプリントやデイリースタンドアップと同じように、物理的な環境が、望ましい行動パターンを生み出します。

社内に点在する、キューブ状のスタンディングテーブル
立って雑談やゲームをしながら、アイデアが浮かぶことも。

全体性の追求

ル・コルビュジエが生涯をかけて追求したのは、「細部の完成度が全体を決める」という全体性でした。一輪の桜が、桜並木全体の美しさを作る。小さなモジュールの品質が、システム全体の堅牢性を保証する。BlueMemeが目指すのは、まさにこの「全体性」です。

細部にこだわり、ミニマムに作り、高速に改善する。細部と全体が調和した、機能的で無駄が無いシステムは、属人性に囚われず、メンテナンス性にも優れ、コストパフォーマンスも高いだけでなく、チームの可能性を最大限に引き出します。これは、美しいシステムとチームを実現します。

ル・コルビュジエ作品の参考文献など

最後に、ル・コルビュジエに関する資料を紹介しておきましょう。彼は、建築の哲学や設計思想を彼自身が書き記しています。スケッチや図面も豊富にあるため、そこから作られた3Dモデルなどもアクセス可能です。

手軽に入手できる書籍

  • 建築をめざして (SD選書21) | ル・コルビュジエ著、吉阪隆正訳
    「住宅は住むための機械」という言葉が登場する、彼の代表的著作。
    https://www.amazon.co.jp/dp/4306050211
  • 輝く都市 (SD選書 33) | ル・コルビュジエ著、坂倉準三訳
    都市計画の理論書。建築から都市へとスケールアップする思想が学べます。
  • ル・コルビュジエ図面集 vol.1 住宅I (LE CORBUSIER PLANS impressions) : Echelle-1, Fondation Le Corbusier
    彼自身が描いたスケッチや図面を収録。思考のプロセスが見える貴重な資料です。

図書館で閲覧できる大型本・専門書

  • 『ル・コルビュジエ全作品集』(全8巻、A.D.A. EDITA Tokyo)
    建築写真と図面を大判で収録。建築の迫力とディテールを堪能できます。古い本で価格もかなり高いものの、多くの公共図書館や大学図書館に所蔵されています。
  • ル・コルビュジエ: 建築とアート、その創造の軌跡 | 森美術館, Echelle-I
    建築だけでなく、絵画や彫刻も含めた創造活動の全貌を紹介。美しいビジュアルが魅力なので、これも図書館で探してみることをお勧めします。

VR・3Dモデル・キットなど

  • Google Arts & Culture:ル・コルビュジエ
    世界各地のル・コルビュジエ建築の思想に手軽に触れられます。国立西洋美術館も、Googleストリートビューで体験可能。螺旋状の動線や光の使い方を、360度の視界で確認できます。
    https://artsandculture.google.com/search?q=Le%20Corbusier
  • Sketchfab:ル・コルビュジエ建築3Dモデル
    建築ファンや研究者がアップロードした、さまざまな3Dモデルがあります。自由に角度や縮尺を変えて、構造の細部を理解できます。
    https://sketchfab.com/search?q=Le%20Corbusier&type=models
  • Virtual Tour / Villa Savoye :: Behance
    3DCGデザイナーmoz氏による、Unreal Engine 4で構築されたサヴォア邸のバーチャルツアーです。
    https://www.behance.net/gallery/79881809/Virtual-Tour-Villa-Savoye
  • 建築ブロック【サヴォア邸】 ル・コルビュジエ Villa Savoye – Architecture Block Company(アーキテクチャーブロックカンパニー)
    LEGOと互換性がある、1,226個のブロックで組み立てられたサヴォア邸。
    https://block.shop-pro.jp/?pid=181107047

質の高い仕事を一緒に追求しませんか?

BlueMemeでは、細部の完成度にこだわり、全体の美しさを追求する価値観を重視しています。例えば、ル・コルビュジエが目指した「環境設計が人の行動を誘導する」思想のように、理念が「理解される」のではなく「体験される」状態を願って、会議室にも名前を付けています。
一人ひとりの貢献が、チーム全体のダイナミクスを生みます。お客さまに喜んでいただくことを目的として、技術的なチャレンジも続けながら、自分の実力もつけていく。そんな志に共感する仲間を求めています。どうぞお気軽に採用情報をご覧ください。

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リープリーパー(略称:リプリパ)編集部です。新しいミライへと飛躍するエンジニアたちに、BlueMemeの研究開発の情報を中心にテクノロジーのさまざまな話題を提供しています。
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