MCPが変えるAI連携の未来!APIやLangChain、A2Aとのつながり

前回の記事では、複数のAIモデルやツールを相互に連携させるMCP (Model Component Protocol)という仕組みについて解説しました。APIとの違いを知ることで、MCPへの大きな期待とポテンシャルがより明確になるはずです。
今回は、MCPを取り巻く技術や設計思想をさらに深掘りするため、LangChainとA2A(Agent-to-Agent)という2つの重要なキーワードを取り上げ、MCPとの関係や位置づけを明らかにしていきます。
モデルやツールを「チェーン」として構成するLangChain
LangChainとは、複数のLLM(大規模言語モデル)やツールを連携させるためのオープンソースのフレームワークです。MCPと同様に、モデルやエージェントを部品として接続する設計思想に基づいていて、MCPの理念を実装面で具現化する手段として注目されています。
前回の記事では、MCPを「USB-C規格」、APIを「変換アダプター」に例えました。この例に倣うと、LangChainはMCPという規格に対応した、複数のAIモデルやツールを束ねて制御する「ハブ」のような存在です。
ハブが複数の機器を一括で接続・管理しているのと同様に、LangChainは、開発者がMCP的な構成を試行錯誤しながら素早く形にするための実装環境として、重要な橋渡し役を担っています。
LangChainの主な特徴
- ツール間接続の抽象化:異なるモデルや外部サービスを統一インターフェースで接続・制御可能に
- マルチエージェント構成:複数のエージェントやコンポーネントが連携して、一連のタスクを分担実行
- MCP的アーキテクチャーの実験環境:MCPの設計思想を再現し、実際に動作する連携構成を構築・評価する試験基盤
- チェーンの管理やトレースが可能:プロンプトの流れや各ステップの動作を可視化・検証できる仕組み
- テンプレートやライブラリーが豊富:テンプレートやツールが整備され、ワークフローを簡単に設計・再利用可能
エージェント連携を支えるA2A(Agent-to-Agent)
MCPの設計思想を支えるもう一つの要素が、A2A(Agent-to-Agent)です。これは、複数のAIエージェントが特定の目的のために、協調・分担して処理を実行するアーキテクチャーです。
A2AをUSBエコシステムの中で例えるなら、MCPという共通の接続仕様の上で稼働する「スマートデバイス同士の協調動作」に相当します。例えば、USB-Cで接続されたモニターが、パソコンからの信号を受け取って映像を表示し、同時に給電や入力デバイスの信号も通すような、複数のデバイスの協調した動作です。MCPを介したA2Aでも、複数のAIが自律的に機能し、お互いに信号をやり取りしながら、分担と連携によるタスクを効率的に実現します。
以下のようにAIエージェント同士が連携することで、役割を分担して一つの処理を完結させることができます。
A2Aの処理フロー例(社内業務アシスタント)
- エージェントA:問い合わせ内容を自然言語処理し、分類と意図を推定
- エージェントB:Aの結果をもとに社内ナレッジやWeb APIから情報を収集
- エージェントC:収集したデータから、回答文や提案を生成
- エージェントD:生成した結果を整形・翻訳・要約し、ユーザーへ返答
もちろん、業務システムにも応用できるので、以下のようなワークフローが考えられます。
A2Aの応用例(注文・在庫管理)
- エージェントE:問い合わせ内容を受け付けて分類する
- エージェントF:該当する製品やサービスを照会して受注処理する
- エージェントG:在庫を確認し、納期や配送可否を判断する
- エージェントH:発送手続きを指示し、ユーザーに通知する
このような連携を支えるには、エージェント間の通信やデータのやり取りに統一されたプロトコルが不可欠です。そこで活躍するのがMCP。MCPは、A2A構造を裏で支える統一仕様として、連携品質と拡張性の両方を確保します。
A2Aは今後、エンタープライズ領域での複数のAI実装において、重要な役割を果たすと考えられています。MCPは、その基盤となる通信規格として不可欠な存在です。
MCPとAPI、LangChain、A2Aの関係
これまでに出てきた、MCP関連の要素を整理すると以下のとおりです。
項目 | カテゴリ | 目的 | MCPとの関係 |
MCP | プロトコル (標準仕様) | AIモデル間の共通通信UI | — |
API | インターフェース (通信手段) | Webサービス間の連携 | MCPによって代替・拡張 |
LangChain | フレームワーク (開発ツール) | MCPを構築する実装基盤 | MCPを実現 |
A2A | アーキテクチャ (エージェント構造) | エージェントの協調・分担 | MCPが実現する上位設計 |
マルチローコード戦略とMCPとの接点
複数のAIモデルやツールをダイナミックに連携させるMCPの思想は、複数のローコード・ノーコード開発プラットフォームを組み合わせて、業務全体を最適化する「マルチローコード戦略」とも強く結びついています。
従来のローコード・ノーコード開発は、限られたプラットフォームやツール、ベンダーに依存しがちでした。しかし、業務ニーズの多様化やツールの進化速度の加速、そしてAIの実装が当たり前になる中で、複数のプラットフォームを連携させて活用することが現実的な選択肢となっています。
AIも、モデルやツール、バージョン、プラットフォームによって、特徴や機能に違いがあります。まして、毎週のように新しい機能がリリースされ、環境も大きく変わり続けているため、特定のAIモデルだけを限定して使うのは、必ずしも効果的な選択とはいえません。
MCPを導入することで、ローコード×AIはより高度かつ柔軟に融合できます。OutSystemsやPower Platformなどのローコード基盤に、ChatGPTやClaudeなどのAIエージェントを接続すれば、より強力なシステム開発が可能になります。
MCPは複数のAIが連携する新しいインフラ
今この瞬間も新しいMCPが次々と登場し、紹介されています。
例えば、NotionやSlackでの議事録作成やタスク管理は、すぐにビジネスに活かせます。オープンソースの統合型3DソフトウェアBlenderでは、MCPを経由したプロンプトの指示によって、立体的なオブジェクトを作り出せるようになりました。
また、PhotoshopのデスクトップアプリケーションをMCPで操作してプロンプトで画像を生成し、さらにPremiere ProでスライドショーにしてBGMを添えるワークフローも衝撃的です。
LINEは、公式のMCPサーバー「LINE Bot MCP Server」を公開しています。現在はまだ一部の機能に限定された試験運用中のため、ユーザーにメッセージを送信したり、ユーザー情報を取得できる程度ですが、今後、よりビジネスで運用する上で実務的な機能が期待されます。
▼ニュース:Messaging APIのMCPサーバー「LINE Bot MCP Server」をGitHubで公開しました | LINE Developers
https://developers.line.biz/ja/news/2025/04/14/line-bot-mcp-server
クラウド時代において、APIがSaaS同士を接続させる標準仕様になりました。同様に、異なるベンダーやエンジニアが提供するAIモデル同士を柔軟に連携させるMCPは、AI時代に不可欠な接続規格として定着しつつあります。
ただし、前回の記事で触れたように、仕様の標準化や強固なセキュリティーなど、克服すべき課題はあります。また、AIモデル同士が効果的に連携するには、単なる「点対点」ではなく「コンテキスト共有ベース」に進化し、文脈(コンテキスト)を理解した連携が重要です。
MCPを理解し、APIやLangChain、A2Aなどと適切に組み合わせて設計・実装できることは、今後のプロジェクト推進において欠かせないプロセスになるでしょう。
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