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アジャイル

パノプティコンで監視された状態でイノベーションが起きにくいワケ

リプリパ編集部

2024年も本格的にスタートしました。テクノロジー関連の話題を広く提供するリープリーパー(略称:リプリパ)を、今年もどうぞよろしくお願いします。

今年は、元日の能登半島地震という文字通り衝撃的な出来事から始まってしまいました。罹災された皆さんには、心からお見舞い申し上げます。寒さが続く中、余震と復旧という課題が今も立ち塞がっています。一刻も早く、平穏な日常が訪れることを願っています。

さて、去年、特に新型コロナウイルスが5類感染症に移行した去年の5月以後、御社の働き方や現場のルールはどう変わったでしょうか?組織やチームの勤務ルールが調整されるとしたら、次のタイミングは恐らく年度末でしょうが、4年前のことを思い出してください。『未知のウイルスが蔓延し始めているらしい』という年末の報道を発端に、年明けから5月の連休明け頃に掛けて、私たちの社会は一気に世界的大混乱に陥りました。今も新型コロナウイルスだけでなく、インフルエンザの感染者数が増えています。

「リモートか出社か」論争の中でたびたび指摘されていたのが、会社が社員の日々の労働状況を細かく監視する、いわゆるマイクロマネージメントの是非です。年末の大掃除のつもりで、このテーマについて2回の記事で振り返ってみましょう。

コロナ禍によって増えた、リモート監視というニーズ

コロナ禍が拡大していく前代未聞の状況の中で、多くの組織や個人が、リモートでのコミュニケーションの特徴を十分に理解できていませんでした。そもそもリモートで日常的に仕事をした経験があった人は、業種や職種、環境で限られていましたが、家族まで同様に家から出られなくなる状況など想定外でした。

急な学校の休校や子どもの世話、制限付きの通院や介護など、それぞれ事情が異なるという当たり前の現実が突きつけられました。また、会社説明会や採用面接、セミナーなどのイベント、学校の授業はリモートに移行し、新入社員や異動してきた人たちの十分な指導ができないまま、新年度がスタートしました。身体面だけでなくメンタルヘルスの深刻な問題が、私たちの生活を蝕んでいきました。

会社側にしても、想定外の問題が次々に起きました。何とか勤務体系を調整しても、機材が確保できない。SaaSのライセンスが足りず、VPN機器やソフトウェアが古い。社員の自宅のネットワーク回線では十分な速度が出ずに、ビデオ会議やクラウドストレージ、DaaS(アプリケーションとしてのデスクトップ環境)が使えない。IT企業の若手社員ですら、実は自宅にパソコンや固定回線を持っていなかった。いろいろなことが判明して、業界を驚かせもしました。

また、厳格もしくは旧い体質の企業は頑なに出社を基本とし、紙とハンコのために社員の健康リスクを冒させる例が報告されるたびに、日本のDXが遠くへ霞みました。そして一部の企業は、デバイスやソフトウェア、ネットワークなど、さまざまな手法で、社員の行動をトラッキングしたわけです。

社員を監視したい組織 vs そんなのは絶対イヤな個人

組織の理屈としては、社員が会社から離れていると、ちゃんと働いているのか、仕事に集中しているのかが分かりづらいという懸念があります。社員同士のコミュニケーションやチーム内での意思疎通が難しいことも課題です。Slackのレポートでも、日本は「見た目だけ忙しそうに見える業務」が多い国の一つだと指摘されたので、無理もありません。

一方、社員としては、一挙手一投足までいちいち口出しされそうなのは、やはりストレスフルです。また、自分の貢献が正当に評価されているか、ビデオ会議やテキストのやり取りだけでは相談し辛いという不安もあります。

また、『施策あれば、対策あり』で、監視をかいくぐる様子も見られました。活動していることを偽装するために、子どもが遊ぶ列車のオモチャにワイヤレスマウスを縛り付けて走らせたり、散歩する犬の首輪にデバイスをぶら下げたり、キーボードをランダムに叩いていることを偽装するプログラムをわざわざ書いたりと、涙ぐましい創意工夫(?)としてのバッドノウハウが、ソーシャルメディア上でたびたび話題になりました。苦しい時ほどユーモアが大切だとはいえ、これは本当に正しいハックの方向でしょうか?

実はテクノロジーによる監視は、児童や生徒、学生も対象になっています。EdTech(エデュテック 教育機関でのテクノロジーの活用)や教育DXの名の下に、学校での子どもの集中度をAIやウェアラブルデバイスで計測・分析する技術開発と実証実験が進んでいます。生徒それぞれの状況を細かく把握できる一方で、プライバシー侵害や監視教育になると、議論を巻き起こしています。

パノプティコンという「効率的な監視」の仕組み

北海道を舞台にした大人気マンガ『ゴールデンカムイ』の中には、網走監獄が登場します(1月後半には実写映画が公開!)。網走監獄は、現在では重要文化財を抱える博物館になっていますが、中央見張所の「五翼放射状平屋舎房」は、星型を半分にしたような構造になっています。

〈最新映像解禁〉映画『ゴールデンカムイ』予告【2024年1月19日(金)公開ッ‼】 – YouTube

▼舎房及び中央見張所 | 博物館 網走監獄
https://www.kangoku.jp/exhibition_facility_goyokuhousha.html

監視の話で時々目にするキーワードが「パノプティコン」です。これは、19世紀のイギリスの哲学者ジェレミ・ベンサムが設計した、刑務所施設の建築構造です。死角ができないように作られた監視塔を中心に、少人数の看守で多くの囚人を効率的に監視できます。

Jeremy Bentham’s ‘perfect’ prison | The Panopticon – YouTube

パノプティコンの特徴は、看守側からは囚人が効率的に見張れる一方、囚人側からは看守の動きが分かりづらくなっている点です。そのため、実際に監視が機能しているかどうかというより、「監視されているのではないか」「されているに違いない」と対象者に思わせることが、最大の効果であるとも指摘されています。疑心暗鬼から猜疑心や妄想を抱くことで、人は他者に暴力的になったり自棄を起こしたり、自己保身に走ります。疑念や恐怖、混乱こそが人を支配する、残酷な心理的効果が実現されています。

このような状況では、他者と協力したり困っている誰かを支援するような関係など、構築できるはずがありません。チームワークが唯一発揮されるとしたら、脱獄や集団暴動の時です。前述のように、監視をかいくぐったり見張りを騙すチートという形で実現されます(昨今では、生成AIの制限をどうやってハックするか、ユーザー間でナレッジを共有する関係が見られます)。また逆に、裏切りや策略、失敗の人間ドラマが絡むことで、物語が成立し、数多くの小説や映画になってきました。

マイクロマネージメントにも、それなりのメリットはある!

社員を細かく監視するマイクロマネージメントにも、一定のメリットはあります。例えば、タスクを正確かつ効率的に完了させるために、マイクロマネージメントは有効です。高い正確性が求められ、細部にまで気を配る必要があったり、繰り返しの多い作業、締め切りが厳しい仕事では、生産性の向上や品質管理、ミスの減少に役立ちます。特に、集中や整理整頓が苦手な社員、経験が浅い新人にとっては、細かく丁寧なサポートや指導を提供することは有益です。

  • 生産性の向上:社員がより効率的にタスクに集中できる。特に、自主管理が未経験・不得手な場合。
  • 組織力の向上:タスクの優先順位付けや効果的な時間配分により、組織や時間管理の改善につながる。
  • 品質の維持:既存のルーティーンワークの繰り返しによる、高い品質の維持やミスの回避。
  • 目標の達成:タスクを管理しやすい小さな塊に分解することで、目標達成をより容易にする。

厳しい監視は、アジャイルや自発性や創造性を阻害しがち

マイクロマネージメントは、どちらかというとかなりウォーターフォール的な発想で、どうしてもアジャイルなワークスタイルや個人の自主性にとって障害となりがちです。

そもそもアジャイル(俊敏さ)の特徴は、柔軟性や適応性、個人やチームの自主性を重視すること。個人の自発性を促すためには、社員が信頼され、力を与えられ、サポートされていると感じられる環境を作ることが重要です。

一方、マイクロマネージメントの特徴は、硬直性や統制性、緊密な監督を重視することです。これら2つのアプローチは基本的に相容れず、組み合わせようとすると混乱やフラストレーション、生産性の低下につながります。言い方を変えると、すでにアジャイルなワークスタイルやマインドがある程度機能している組織では、マイクロマネージメントは逆効果だと言えるでしょう。

  • イノベーションを阻害:懲罰的・拘束的な面が強いと、新しい挑戦よりも、リスク回避・現状維持に走りがち。
  • アジャイルとは相反:迅速な意思決定や信頼・協力、創造性・革新性が不可欠なアジャイル環境とは相容れない。
  • ストレスフル:過度に重視すると、監視と成果主義によるプレッシャーから、燃え尽き症候群になるリスクも。
  • 向き不向きがある:人によっては厳しすぎたり激しすぎるため、すべての性格に合うとは限らない。


リープリーパーは、アジャイルを推進している立場上、マイクロマネージメントについてはどうしても否定的・批判的な表現が多目になってしまいます。しかし、刑務所のような厳格な監視システムになりがちな環境では、残念ながらイノベーションは起きづらいのも事実です。

では、マイクロマネージメントの罠に陥らず、革新的なアイデアを生み出すカルチャーをどうやって醸成していくべきか?次回も引き続き、マイクロマネージメントの本質について考えてみましょう。

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リープリーパー(略称:リプリパ)編集部です。新しいミライへと飛躍する人たちのためのメディアを作るために、活動しています。ご意見・ご感想など、お気軽にお寄せください。
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