顧客の成功をシステムの信頼性で支えるエンジニア、CSEとCREとは
ITエンジニアといっても職種はさまざまですが、近年、顧客信頼性エンジニア(CRE)と、カスタマーサクセスエンジニア(CSE)が注目されています。これらの職種は、SaaS企業の成長に伴って、企業の競争力向上と顧客満足度の強化に欠かせない存在となっています。
今回は、両者の役割や違い、チームにとってのメリット、キャリアパスの築き方などについても掘り下げてみます。
CREとCSEとは?それぞれの役割と違い
あなたは何が専門ですか?もしくは、御社にはどんな人材がいますか?または、これからどんなスキルを目指しているでしょうか?今回スポットを当てるのは、顧客のシステムの信頼性向上に貢献する「顧客信頼性エンジニア(CRE)」と、顧客の成功体験を最適化する「カスタマーサクセスエンジニア(CSE)」です。
CREとCSEはどちらも、顧客視点を持ち、顧客に対する技術支援を目的とした職種です。両者の目的や活動範囲には違いがあります。
- CRE(顧客信頼性エンジニア):顧客のシステムの可用性や信頼性を向上させることを目的に、SRE(サイト信頼性エンジニアリング)の考え方を取り入れて支援する。顧客のインフラ監視やパフォーマンスチューニングを通じて、予期せぬ障害の発生を最小限に抑える役割を担う。
- CSE(カスタマーサクセスエンジニア):顧客のプロダクト活用を促進し、カスタマーサクセス(成功としてのビジネスゴール達成)を実現するための技術的サポートを提供。トレーニングの実施や機能の最適化支援、トラブルシューティングなど、顧客が製品を最大限に活用できるように伴走する。
SaaSとSREの普及から、ローコード+AIの影響まで
そもそも、CREとCSEが求められるようになった背景を見てみましょう。そこには、SaaS(Software as a Service)の普及やクラウドコンピューティングの進化、SRE(Site Reliability Engineering)やDevOps(Development & Operations)の台頭が深く関係しています。
アルファベットの略号がさらにいろいろ並んで混乱しそうですが、それぞれが関係するので、一旦、大まかな歴史的経緯と共に整理しておきます。
1. SaaSとクラウドの普及
インターネットが本格的に普及した1990年代末から2000年代初頭に掛けて、パソコンの処理能力の向上やブロードバンド回線の高速化により、ビジネスシーンでITが使われることが一般化しました。ITシステムの一部も、オンプレミスからクラウドサービスへ移行され、SalesforceやGoogleなどの企業がSaaS(サービスとしてのソフトウェア)モデルを拡大させました。
従来のソフトウェア販売ではリリースのタイムスパンも長く、買い切りライセンスの期間中を通じて、サポートも緩やかでした。それがSaaSへと移行することで、短期のアップデートが繰り返され、サブスクリプションベースでの継続的なサポートと、顧客の維持が重視されるようになりました。
この変化に伴って、ただのソフトウェア販売ではなく、導入後の顧客ビジネスの成功を支援する「カスタマーサクセス」という概念が台頭し、CSEの役割が形成されました。
- 従来のソフトウェア販売:ライセンス購入後のサポートは限定的
- SaaSモデル:継続的な利用と満足度向上が重要 → CSEが必要に
2. SREとローコード開発の登場
2000年代半ばになると、GoogleがSRE(サイト信頼性エンジニアリング)という概念を導入しました。これは、ソフトウェア開発・運用の手法を使い、管理者としての人ではなく自動化によって、システムの信頼性と可用性を高めることを目的としたアプローチです。
SREの考え方は急速に広まり、クラウドサービスプロバイダーやSaaS企業でも採用されるように。そして、このSREを自社内部だけでなく、顧客のシステム運用にも適用する職種として、CREが誕生しました。
また、2010年代に入ると、ローコードという新しいシステム開発手法が注目を集めるようになりました。
- SREの目的:システムの99.99%の可用性を維持しながら、エンジニアリングによる運用効率化を推進
- CREの誕生:SREの手法を社内だけでなく、顧客のシステム運用支援に適用する動きが誕生
- ローコード開発:プログラミングを効率化できる開発手法により、リリースやテストも高速化
3. DevOpsの普及と開発・運用の融合
システム開発と運用を一体として捉える、DevOps(開発と運用)の概念も普及が進みました。開発と運用の壁をなくす中で、企業はシステムの迅速なデリバリーと安定性の両立を求めるようになり、さらにセキュリティーの視点も加えたDevSecOpsとして拡がりました。
DevOps/DevSecOpsは、CREとCSEを語る上で極めて重要な概念でもあります。
- DevOps/DevSecOpsの影響:開発エンジニアが運用やセキュリティーにも責任を持ち、システムの継続的改善に取り組む
- CRE/CSEとの密接な関係:システムの可用性とパフォーマンスを維持し、顧客のサービス活用を技術的・継続的に支援
4. ローコードとAIによって強化されるCREとCSE
現在、SaaSはさらに市場が拡大し、膨大なAPIによって柔軟かつ複雑に連携しています。さらに、劇的な革新を続けるAIの影響により、企業のシステム開発や運用、技術サポートの方法も大きく変化しているのはご存じのとおり。
CREとCSEによるシステムの高い信頼性と上質な顧客体験(CX)の実現が、企業の競争力を決定づける要因となっています。それを実現するプラットフォームとして、ローコード開発とAIが注目されています。
- CREの進化:オブザーバビリティー(可観測性)ツールの活用で、予測的なシステム運用が求められる
- CSEの役割の拡大:AIやデータ分析を活用し、プロアクティブ(能動的)なカスタマーサクセスを推進
CREとCSEの具体的な成功事例
事例1:SalesforceにおけるCSEの活用
Salesforceでは、CSEチームが顧客に積極的に導入を支援し、プロダクトの活用率向上を実現。特に高度なカスタマイズ支援により、エンタープライズ企業の業務効率化に貢献しました。
CSの極意は”顧客の自走”にあり。謎に包まれたセールスフォースのカスタマーサクセスを大解剖 | CXin(シーエックスイン)
事例2:GoogleのCRE戦略
Google Cloudは、CREチームを設置し、SREの考え方を顧客に適用。これにより、サービスの安定稼働率を99.99%に向上させ、SLA(サービス品質保証)を強化しました。
事例3:SmartHRにおける
クラウド人事労務ソフトウェアを提供するSmartHRでは、導入や設定をサポートする資料やビデオ教材、担当者と直接オンラインで相談できるサポートやチャットなどで、カスタマーサクセスを実現しています。
CREとCSEがチームにもたらす安心とメリット
このようなCSEやCREに対するニーズは、システム開発・運用の内製化と深く関係しています。企業が外部ベンダーに依存せず、自社でサービスの改善や運用を実施するには不可欠。これは当然、ビジネスプロセスマネジメント(BPM)とも深く関わります。
- CREとBPM:プロセスの信頼性を確保するために、CREがシステムの可用性を担保
- CSEとBPM:業務プロセスの最適化を図るため、CSEがプロダクトの適用を推進
また、CREとCSEという存在は、チームメンバーにとっても以下のようなメリットを提供します。
- トラブル対応の迅速化:システム障害時の迅速な復旧が可能
- 技術ナレッジの共有:新しい技術やトラブルシューティングの知見がチームに蓄積
- 業務負担の軽減:開発チームやサポート部門の負担を分散し、効率的な業務運営を実現
CREとCSEのキャリアパスと成長戦略
最後に、CREとCSEとしてのエンジニアのキャリアパスも描いておきましょう。
両者は、企業の成長と顧客の成功を支え、ビジネスと技術の橋渡しをする重要な職種。SaaSの普及やクラウドの台頭、SREやDevOpsの進化とともに誕生した役割であり、ローコード開発とAIの普及で、さらに重視されることは間違いありません。時代のニーズによって生まれ、変化し続けている、システムの信頼性を通じて企業の顧客体験を担うポジションといっていいでしょう。
- キャリアの価値:顧客との直接的な関係を築きながら、技術力を活かせるため、テクニカルスキルとビジネススキルの両方を伸ばせる。
- 認定資格がない場合のスキル構築:データ分析、クラウド技術(AWS/GCP/Azure)、アジャイル開発、SREの原則を学ぶことが重要。
- キャリアパスの例:
- CSE → カスタマーサクセスリーダー → プロダクトマネージャー
- CRE → SREエンジニア → CTO(最高技術責任者)
BlueMemeでは、ビジネスアーキテクトという肩書きのエンジニアが活躍しています。組織のビジネスモデルや業務プロセスを理解し、ローコード・ノーコード開発プラットフォームを使って形にする立場です。CREとCSEとして技術的に実現することで、企業のDX推進を支援しています。
顧客のビジネスゴール達成か、ITシステムの信頼性・柔軟性かではなく、その両方。変化が激しく厳しい現代は、どちらか一方が欠けても大きなリスクです。
BlueMemeのビジネスアーキテクトは、CREやCSEの視点を取り入れながら、御社の成長を支援します。DX推進や組織変革に関するお困りごとは、お気軽にご相談ください。



