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働き方

知見を生かした挑戦が楽しい!IT業界に進んだ化学修士卒の経験談

松原 太一

今回は、大学の学部と大学院修士で化学を学んだ筆者が、就職でIT業界に進んで得た感想をまとめてみます。化学を学んでいた知識や経験は、直接関係なさそうなIT業界においても大きく活きています。今までの技術解説の記事とはちょっと違って、今回は「化学系学部出身者だからこそ、IT業界への就職もおすすめできる」ことや、「大学院博士課程で量子コンピューターの研究をする筆者が、キャリア選びで重視していたこと」などのトピックについて紹介します。

化学専攻から、IT業界で量子コンピューターという新しい挑戦へ

私は現在、IT企業であるBlueMemeで研究開発職に就いています。研究内容は主に、量子コンピューターアルゴリズムの開発で、実機やGPUシミュレーションを使ってその性能を検証しています。特に、コンピューターサイエンスと医学の融合である「バイオインフォマティクス」という領域において、量子コンピューターの活用方法を構築しています。

ですが、入社する前は現在の領域とは異なり、元々、大学と大学院修士では化学を学んでいました。具体的には、物理と化学の融合領域である物理化学で、コロイド粒子について研究していました。

BlueMemeに入社するきっかけは、就職活動で社長の松岡さんにお会いして『量子コンピューターをやらないか?』と誘われたことです。元々、量子化学を含む化学を学んでいたおかげで、量子コンピューターの破壊的インパクトが理解できたのと、最先端テクノロジーをやってみたいという好奇心があって、入社を決めました。

化学といえば、工業・化学業界や化粧品業界への就職がメインと考えられていましたが、何か新しいことをやってみたいという思いから、どちらかというと多数派ではなく小数派であるIT業界に進むことにしました。

今後さらに距離が近づく、ITと自然科学の専門性

面接のときに松岡さんが言っていた、印象的な言葉があります。それは、『プログラミングやシステム開発ができる人材は多くいるけど、化学や数学などの自然科学の専門知識を持っている人材は少なくて、そのような人材を探している』ということでした。

元々、私は、コンピューターサイエンスやプログラミングというよりも、物理学の理論や実験科学をメインに研究していました。そのため、IT業界への就職には少し不安もありましたが、『プログラミングの技術等は、入社してから身に付ければいいや』と思いました。

実際このIT業界に入ってみて分かったのは、化学を始めとする自然科学の専門性が、IT業界において相対的にとても重要になってきているということです。

一昔前のITというと、例えばWindowsコンピューター、インターネットを用いたネットワークビジネス、組み込みデータベースの構築、電話回線といった言葉で代表されるものだったと思います。しかし、テクノロジーの発展によって、現在のITは意味合いがかなり変容したように思います。

ここで、『現在のIT技術は何を思い浮かべますか?』とChatGPTに聞いてみたところ、以下のような答えが返ってきました。

  1. クラウドコンピューティング: AWS、Azureなどのクラウドサービス。
  2. ビッグデータ: データ解析、データマイニングの技術。
  3. 人工知能: 深層学習、機械学習などのAI技術。
  4. IoT (Internet of Things): あらゆるデバイスのインターネット接続。
  5. 仮想通貨: ビットコインなどの暗号通貨。
  6. 量子コンピューティング: 量子ビットを利用したコンピューティング技術。

2010年代には、データサイエンスという言葉が生まれ、リストの一番目にあるような、クラウドにより貯めたデータを数学的な知見を使って分析することの重要性が認識されていきました。また、現在は、人工知能や量子コンピューティングなどが急速に発展し、その研究開発には自然科学の知見が必要とされます。このように、元は数学や化学、物理の枠組みで生まれた概念が現在のIT業界に多く見られ、今後もその流れは加速していくでしょう。

化学や数学などの自然科学の専門知識を持つ人材が、IT業界において優位性を出せるような流れになりつつあります。

現在のキャリアに活きている、化学で学んだあれこれ

システム開発をメインのビジネスとするBlueMemeに入社し、私は研修を通して「アジャイル」と呼ばれるシステム開発の方法論や開発の基礎を学びました。その後、研究開発専門という形で量子コンピューターやバイオテクノロジーに関するテーマについて、大学と共同で研究しています。

そして職務のあらゆる場面で、化学を学んだことが活きていることを感じています。それは、化学があらゆる学問のつなぎ目を担うような学際的な領域だからです。

DNAやたんぱく質など、生物学における登場人物はすべて化学物質である

例えば、生物学で起こる現象は基本的に化学反応なので、化学を分かっていると割とスムーズに内容をキャッチアップできます。

コンピューターサイエンスやシステム開発とは、「計算」でつながる

化学と聞くと、実験室で研究しているイメージが強いかもしれませんが、計算化学という領域も実はあります。そのため、コンピューターのアルゴリズムの開発や、コンピューター自身の演算性能の向上が化学の問題を解く上で重要という考え方は、身についていました。分子構造などを計算する領域である計算化学の問題を解決するために提唱されたコンピューターが、実は量子コンピューターだったりします。

物理学と化学も密接につながる

現在、物理学における量子コンピューターを研究しています。量子コンピューターの情報処理単位である量子ビットは、化学でいうところの電子そのものです。

最新テクノロジーと、優秀な人たちに接して仕事ができるエキサイティングな業界

最後に『IT業界は楽しい!!』ということを伝えたいです。私のような化学出身などの自然科学の人にこそ、参入してきてほしいと強く思います。

最新のテクノロジーや、その第一線の技術者・経営者の近くで仕事ができる

特に大きい理由はこれです。ソフトウェア面でいうと、今はAIが大きな進化をとげ、職務でもかなり身近に扱えるようになりました。自然言語でもプログラミング言語やヒトのDNA、病理組織の画像でも、それがデータで表現されさえすれば何でもAIが学習できます。コンピューターが学習し新しい知見を創出したり、少ないコードでシステム開発ができるすごい発明です。

ハードウェア面で言うと、現在のコンピューティング技術の最前線であるGPUスーパーコンピューターや、実用化がかなり近い量子コンピューター実機など、一昔前はなかった計算リソースに触れることができるという点も魅力です。また、バイオの分野では実験技術自体が超進化していて、データの量・種類ともに増え続け、これまでにない解析ができるようになっています。

さらに、肌感として、IT業界にいる人は松岡さんを始め、最先端技術やそれをビジネスにしようとするキャッチアップ力の高い人が多く、良い刺激を受けることができます。ユニークで個性的な人や、めちゃくちゃ優秀な技術・知見を持っている人と一緒に仕事できるのが楽しいです。

プログラミングや開発の能力が身につく

当たり前ですが、IT業界に入ることでソフトウェア開発やプログラミングに関する先端的な能力が身につきます。私の場合は、pythonやLinux、アジャイルとローコードの考え方に則ったシステム開発の方法論、深層学習モデルの構築法、量子計算機の動作原理・バイオインフォマティクスにおける情報解析の考え方などが業務を通じて自然と身についてきており、現在も身に着けています。

技術のスピードがとても速いので、キャッチアップしたり新しいことに好奇心のある人にはとてもおすすめなフィールドです。

IT業界は楽しい!IT業界はいいぞ!

私の経験から言うと、IT業界は、理系にこそエキサイティングな分野だと思います。それまで知らなかった新しいことを吸収したい人にとっては、うってつけの環境だと言えます。この記事を読んで、IT分野に興味を持ってくれる仲間が増えることを期待しています。

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ABOUT ME
松原 太一
松原 太一
研究員(専門分野:バイオインフォマティクス・深層学習・量子コンピューティング)
2021年から株式会社BlueMemeで量子コンピューティングやゲノム情報解析の研究開発を担当。専門分野は、量子AIの生命医科学への応用。BlueMemeに在籍する傍ら、2023年度より社会人学生として、九州大学大学院システム生命科学府へ進学し博士号取得を目指す。
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