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社会人博士課程在学中に得た7つの所感—1年目の秋編

松原 太一

アドベントカレンダー5本目の今回は、社会人博士課程の学生として、受験から今に至る大学院入学1年目の筆者の所感を書きます。同じように社会人博士課程に挑戦している方や、これから挑戦したい方の参考になれば幸いです。

筆者の情報

  • 九州大学大学院システム生命科学府の社会人博士課程院生(1年目)
  • IT企業の研究開発職
  • 論文執筆はまだ

どのような経緯で受験したか

所属企業であるBlueMemeと大学との共同研究の一環として、僕自身のモチベーションもあり、博士課程として共同研究に参画することが認められたので、受験することになりました。受験科目は、オーラルプレゼンテーションで、修士までの研究内容と入学してからの研究予定を話しました。受験(年明け2月期の受験でした)に向けてのプレゼン資料の準備は大変でしたが、何とか乗り越えました。試験の先生は皆、ライフサイエンスが専門のため、主に自身の使う生物学的実験や理論の基礎的な理解について質問されました。

合格を左右するカギとなったのは、その研究フィールドにおける基礎的な複数の論文を読み込んでどれだけ概要を把握し、研究計画を話せるかということだったと感じます。

九大のシステム生命科学府とはどんなところか

九州大学のシステム生命科学府(福岡市)は、ライフサイエンスの研究に取り組みたい人にとっては非常におすすめの場所です。生命科学とデータサイエンスの両方の素養を活かした研究ができる場所であり、その分野での スペシャリストを目指すことができます。学府内の教授陣は国際的に著名な研究活動を展開するオールスターぞろいで、学府内の構成員のみで学会クラスの勉強会が開けるほどです。DC1、DC2などの学振採択率も国内では非常に高いです。

▼九州大学大学院 システム生命科学府
https://www.sls.kyushu-u.ac.jp/

所感1 : 論文はルーティーン的に読む

入学してしばらくは日々のタスクの割合として、プログラムの実装や実験だけに費やしてしまう日もありました。ですが、それは推奨しません。論文は日課的に読みましょう。論文を読むことで、自然と知識が蓄積されたり、今やっている研究の立ち位置が分かったりします。筆者も毎日読むようになってから、明確に変化がありました。ChatGPTを使った効率的な読み方は、以下も参考にしてください。

所感2:修士から分野・テーマが変わっても全然OK

社会人博士のテーマは、別に修士の時のテーマと一貫していなくてもいいです。やりたいことを研究すればいいです。例えば、修士のときのテーマと博士のテーマが一貫していないことは、受験において不利にはなりません。 単純に、研究遂行能力があるかどうかを見られます。筆者自身、修士までは化学専攻でコロイド粒子の研究をしていましたが、現在はそれとは違う分野にいます。

システム生命科学府はむしろ、コンピュータサイエンスや数理系などの異分野からの編入学をとても推奨しています。

所感3:研究プロジェクトは並列して進める

一つの研究プロジェクトだけにエフォートを割くのではなく、二つのプロジェクトを並行して進めることが重要だと感じています。自身も、最初は一つのプロジェクトだけにしか取り組んでいませんでしたが、そうすると一つが上手くいかなくなったときに 気持ちの面で焦ってしまうことがありました。リスクを緩和させるという意味も含めて、可能なら並列的に作業を進めていくようにしたいです。

所感4:忙しくても研究する時間は必ず取る

どんなに仕事の方(ミーティングや各種業務等)が忙しくても、研究する時間は必ず死守しましょう。なぜかというと、作業しないと研究が進まないからです。忙しくて頭があまり回っていない時でも、とりあえず何か手を動かしておくと、クオリティの良し悪しはあれど、ひとまず前に進みます。具体的には論文読んだり、計算回したり、コード書いたりなどです。

所感5:研究で上手くいかないときの対処法

最低最小限の設定で実験する

筆者は、dryといって、ライフサイエンスの研究の中でも計算機上での実験シミュレーションに取り組んでいて、 上手くいかないケースが多々あります。例えば、以下のようなケースです。

  • 機械学習のロスが下がらない
  • プログラムのエラーが治らない
  • プログラムが何をしているかが解読できない

問題が特定できない場合は、例えばプログラムのハイパーパラメーターを最小の設定で流したり、変数を限りなく削ったりしましょう。

そもそも問題にこだわる必要があるかどうかを再検討し、別の方法を模索する

行き詰ってしまった時は、今起きている問題がそもそも解決するべき問題であるかどうか、俯瞰して考えてみましょう。別にもっと良い方法や、合理的な解決手段があるかもしれません。自分も、2か月程度取り組んでもなかなか解決できない問題があったのですが、視点を変えて取り組んだら上手くいったケースがありました。

他者に相談する

先生や、有識者に相談しましょう。また、先人の知恵を借りるという意味で論文を読むと問題の解決方法が書かれていたりします。大体のことは過去に誰かが解決してくれていたりします。

上手くいかないことは失敗ではない

研究ではポジティブ思考が大事です。研究が思い通りに進まないことは、失敗ではありません。その方法では上手くいかないことが分かった、という意味で肯定的な結果です。

所感6:数日単位でのこまめな目標設定が重要

筆者は博士課程に入ってから、約2週間単位で先生とのミーティングがあり、そのため2週間単位で目標設定と進捗報告をしていました。これが結構よくて、この2週間単位で「○○の実装を完了させる」とか「○○の実験を終えて結果を解釈する」などの目標を意識できるので、機械的に進捗が生まれるようになりました。

所感7:研究はとても楽しい

研究は最高です。研究をしましょう。筆者の目標は研究論文執筆することなので、そこに向けて今後も頑張っていきたいと思います。

あっという間の9ヶ月…研究はさらに続く

いかがでしたか?今回は博士1年目の所感を徒然なるままに書いてみました。1年目といっても、今年の年末までで9ヶ月ですが、本当にあっという間でした。年が明けても、もちろん研究はまだまだ続きます。
現在の感想としては、博士課程は非常に充実しています。私の場合は、生命科学の専門性が築かれているのに加え、GPUを用いた深層学習モデリングや量子計算プログラムの構築などの計算機科学的な知見が深まっているなど社会人博士入学に伴って大きく成長を感じています。
ちょっと気が早いですが、皆さん、どうぞよいお年をお迎えください。

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ABOUT ME
松原 太一
松原 太一
研究員(専門分野:バイオインフォマティクス・深層学習・量子コンピューティング)
2021年から株式会社BlueMemeで量子コンピューティングやゲノム情報解析の研究開発を担当。専門分野は、量子AIの生命医科学への応用。BlueMemeに在籍する傍ら、2023年度より社会人学生として、九州大学大学院システム生命科学府へ進学し博士号取得を目指す。
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