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働き方

「置かれた場所で咲く」としても、自分で自分を置く場所を選びたい

すいすい

『置かれた場所で咲きなさい』という題名の本があります。36歳という若さでノートルダム清心女子大学の学長という、風当りが強い立場に就任された修道女 渡辺 和子さんが書かれた本です。皆さんは「置かれた場所で咲いて」いますか?

2023年も残りわずかになった今、私は初めに根を下ろしたところから、随分遠いところに来てしまったと感じています。3つ目の職場に就いて3か月が経ち、毎日新しい情報が飛び交う中で、試行錯誤しながら新しい業務に取り組んでいます。この本の題名と矛盾するような話をしますが、自分が咲くことができる場所を探し続けている私の話に、しばしお付き合いください。

置かれた場所で咲きなさい (幻冬舎文庫) | 渡辺 和子

「他者から置かれた場所」は人それぞれ

私は両親が教員だったこともあり、子供の頃から学校の先生になるのだと言い聞かされて育ってきました。でも本当は、小学生の頃は画家になりたかったし、美容師もカッコよく見えたし、何より工作をすることや服を作るのが大好きでした。それら全ての将来の漠然とした夢は、親の反対に遭い、自身でも納得して(言い聞かせて)職業として見据えてはいませんでした。中学受験や多くの習い事にも、私の希望は聞き入れられませんでした。

ただ、人に言葉を伝える楽しさ、言葉が届いたときの感動は知っていました。教員になるなら、習熟度が遅れて取り残される子供たちを置いていかないような授業をしたくて、免許を取得しました。しかし私は、大学4年生卒業間際の10月、突然、民間企業への就職をすることに決めたのです。これは、私の人生の中で初めて、「置かれた場所とは違う」進路選択でした。

最初に選んだ場所としての接客業

初めての職場はauショップでした。カウンター営業が主な業務です。人と話すのが大好きなので、今思い返しても楽しかった思い出がいっぱいです。お客様とじっくりお話をして、携帯電話の販売から、ご自宅やご家庭のお困りごとを解決するため生活支援サービスをご案内してきました。

教員にならないことを選択したのは、これからの人生を考えた時に「子供の頃から言い聞かされたままに、いつの間にか教師を選んでいた」というのは、自分の人生に無責任だと感じたからです。もっとアドレナリンが出るスリルを味わってみたかったとか、毎日試行錯誤して進めていく刺激を求めたとか、そういう考えがよぎった、ということもあります。

最近の携帯キャリアは、ECサイトでお買い物もできるし、保険もあるし、銀行もある。お客様に寄り添ったご提案を通じて、安心した暮らしのためのサポートを提供するような業務でした。人との関わりの中で人によりよいサービスを提案する、お困りごとを解決するのはとても楽しい日々でした。今後、携帯電話を人が手放すことはないだろうし、目まぐるしく変わっていく暮らしのサポーターとして寄り添い続ける、発展の未来を期待して選んだ仕事でした。また、良いと感じたものを「これいいよ!」と伝える、「推しの布教」がうまければうまいほど業績に直結することにも、面白味を感じていました。

自分で自分を置く場所を求め続けて

店頭で常連さんができたり友達を連れてきてくれたりすると、働いている地元にたくさんの顔見知りが増えるようになりました。そうして暮らしのサポーター目線でお話を聞いていると、もっと地域に根差して入り込んだ仕事をしたいと思うようになりました。私は自分の生活圏で大きな地域イベントに関わってみたくなり、「いつかコスプレイベントやファッションショーイベント、クリエイターが集う企画の運営をやりたい」という夢を抱いて、退職することにしました。そして、次の夏からご縁あって地元の市役所の職員として、企画・観光の部署に所属することになりました。

私の仕事は、市の記念日を作ったり、観光大使を設置したり、イメージキャラクターの運用、まちの人々や提携学校との連携でイベントを企画運営する仕事でした。いつも芯には市民還元を据え、主役は市民という姿勢を徹底して臨み、やりがいも多くありました。しかし年数を重ねるにつれ、公組織だからこその限界に気づくことが増えていきました。

「誰一人取り残さない」という第一項目の使命のもと、足かせが多く、思うようにいかないことにもどかしさ、フラストレーションが溜まっていくのを感じました。本当はこういう風にしたいのに、「行政」の立場からは「私」としての意見は通らない。企画や観光といったフレキシブルな部署の中でも、公に出される意図と発揮される効果にねじれが生じてしまう。公的なセリフになってしまうことことにも窮屈さを感じました。また、モノづくりが好きな自分、人と話すのが好きな自分、新しいことに挑戦したい自分、その多くは「公務員」という立場からプライベート面まで制限されることも多くありました。

結局、私は大きな地域イベントを打ってまちおこしを企画したり、運営までこぎつけることはできませんでした。少なくとも「公務員」としての立場と、「私」としての立場とで、目指すゴールが明確に異なることに気づいてしまい、踏み切れなかったとも言えます。もっと体当たりで仕事ができる環境を求めるようになり、ここでまた一歩、自分で自分を置く別の場所へ踏み出すことに決めました。

BlueMemeという、全く新しい未知の場所

BlueMemeに入社して3か月。毎日が分からないことだらけ!とても難しいことをやっているし、思うようにいかなくて眉間にしわが刻まれそうでちょっと怖いです。でも、今までの中で一番「挑戦」できるし「経験が積まれていく」のをひしひしと感じます。わからないことがたくさんあると不安もあるけど、ワクワクしてしまってアドレナリンが出るというのは私の性格かもしれません。ここでは、皆さん適材適所に力を発揮されているように思います。私にITの知識はありませんが、「言葉を人に届ける力」、「人と協力して遂行する力」が見込まれていると受け止めています。プライベートではサークル活動にも力を割けるようになったので、帽子や服を作って販売することや、京都の友人のカフェの再建に向けたプロジェクトに参画しています。

自分の人生、「今」咲きたいと思っていたところに立っているか?

冒頭の『置かれた場所で咲きなさい』の中でも触れられている教え、「暗いと不平をいうよりも、進んであかりをつけましょう」という言葉は、自らが希望や目標となって現状を変えてくことの大切さを伝えています。私が6年通ったカトリックの母校ではこれに加えて「現状を変えたいのなら人のせいにせず、どんどん自分で動くのだ」と言い聞かされました。

今、最初に私が置かれていた場所からどのくらい歩いてきただろうと振り返ると、随分と遠いところに来てしまっているのではないかとも思います。覚えたてのIT用語で無理やりそれっぽく言うと、こんな感じです。自分のニーズの把握に努めて、何が揃えば今もっと幸せになれるのかという「要件定義」をし、「動かしてみて」、「検証して」、その結果を受け止めて「再度動かしてみる」の繰り返しで、今がある。人生を懸けてアジャイル開発をやっていた…?なんて、だいぶ大きなこと言ったかな。今、必死に勉強中なので「全然違うよ」と声が飛んでくるかもしれませんが。

私は今まで、どこにいても「今、やりたいことができているか?」ということを常に考え、その時立っている場所が幸せかどうか、問いを繰り返してきました。その結果、大好きなモノづくりができて、表に立ってサークル活動ができて、推しの布教が誰かのためになるという「今」を、これまでより遙かに手にできています。来年には自分がこれまでに作ってきた服で写真集を作ってみたい。またそれによってサークル活動の周知をして、作品のファンを増やしていきたいと考えています。まだまだどんどんやりたいことがでてくるので、試行錯誤して夢をもって試していきたいです。

冒頭に紹介した書籍の題名で著者が示していたことは、環境の奴隷になるのではなく、仕方ないと諦めるのでもなく、自らが咲ける努力をしようよ、という意味です。なので、ちょっと矛盾するようですが、「やりたいことができるところ、咲きたいように咲けるところを目指していく」と読み解いてもいいんじゃないでしょうか。

だって、年が明けると、新しい春がまたすぐそこにやって来るんですから。

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ABOUT ME
すいすい
すいすい
あるときはクリエイター、またあるときはフードファイター すいこです。
福岡出身。趣味は服や帽子を作ること。文章を書くのも好きでTRPGの脚本を書くこともあります。最近は作曲に挑戦中。好きな食べ物は焼き鳥と餃子と牛タン。対話は好きだけどハイコンテクストな文章は苦手です。
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