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リプリパ編集部

意思決定速度と成功率に性別や世代・キャリアで違いはあるのか?

リプリパ編集部

仕事とは「決定して、具体的な次のアクションに移すこと」。ここリープリーパーでは、ソフトウェア開発にも重要な役割を果たす、意思決定についての考察を何度か紹介しています。

意思決定には、スピードが重要だと言われています。もちろん、質も重要ですが、同様に速度を意識することが鍵。失敗を恐れて慎重になり、時間を掛ければ掛けるほど、逆に失敗の確率が上がってしまうパラドックスがあるからです。そして、その有効な解決策の一つが、小さなトライ&エラーを繰り返して改善していくアジャイルという手法です。

しかし、意思決定の速度を上げることは、どんな組織でも・誰でも可能なのでしょうか?元々、そうできる素地がある組織や、ある程度優秀な人材が集まったチームだからできるのでは?メンバーの性別や世代、キャリア、組織規模で違うのでは?そんな観点から改めて考察してみます。

責任回避の意識が強い日本社会の現実

まず、日本社会の労働意識を他国と比較したレポートを見てみましょう。主な要点は以下のとおりですが、残念ながら、迅速な意志決定が下される環境にはない現実が、はっきりと示されています。つまらない仕事で責任を負いたくないし、判断を誤って失敗したくない、何より意志決定する立場になりたくない—そんな諦めが漂っています。

  • 働くことの幸せ・不幸せを実感している割合が、両方とも低い。
  • 40代までの労働者が働く幸せを実感している割合が低い。
  • 権威主義や責任回避の意識が強い一方で、職場の相互尊重は弱い。
  • 賃金を重視する意識が高い割に、寛容性は低い。
  • 業務外で学習・自己啓発に使う時間が最も少ない。
  • 労働時間が男性に偏っていて、女性よりも働く幸せの実感が低い。
組織文化 類似度マッピング
組織文化 類似度マッピング – グローバル就業実態・成長意識調査(2022年)
出典:グローバル就業実態・成長意識調査-はたらくWell-beingの国際比較 – パーソル総合研究所(画像は編集部で一部編集)
https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/data/global-well-being.html

属性に対するアンコンシャス・バイアスは邪魔

とはいえ、プロジェクトでは誰かが意志決定する必要があります。では、スピーディーに決断できるのはどんな属性の人でしょうか?逆に、どんな人は向いていないのでしょうか?

まず前提として、意思決定のスピードや成功率に以下のような要素は関係しません。むしろ、個人差・組織差が大きく影響します。

  • 性別
  • 世代・年代・年齢
  • キャリア
  • 人種・民族
  • 地域

ただ、個人差・組織差が多いからといって『人それぞれ、企業それぞれ』で終わってしまうと先に進まず、建設的な知識になりません。また、上記のような属性に対するステレオタイプな考え方、アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)に、未だに縛られている人たちも、少なくないのが現実。これらを一つずつ、具体的に見てみることが、誤解の解消と状況の改善につながります。

性別

ジェンダーギャップ指数が低い日本では、女性の社会進出やキャリア形成を阻む、有形無形の障害「ガラスの天井」に阻まれてきました。「女性だから、なかなか意志決定ができない」という偏見の前に、そもそも意志決定のチャンスがなかったのが現実です。

成果という質を上げたくても、機会という量そのものがない。限られたチャンスで成果を上げるのは至難の業。パリテ(女男同数参加)が配慮されても、逆差別ではないかと、バックラッシュも浴びる。しかも、仕事だけでなく家庭での役割もある。

LGBTQなどの性的マイノリティーは、さらに難しい立場に追いやられています。元々の条件が男性とは大きく異なる八方塞がりの状況で、意志決定の速度を属性に関連付けるのは大きな間違いでしょう。

世代・年代・年齢

対面のリアルタイムコミュニケーションを前提とした人たちと、スマートフォンとソーシャルメディアネイティブな世代とでは、意志決定に使うメインのツールが違うことは珍しくありません。重要な決定はやはり対面でやりたい人と、リモートでも意志決定がスムーズに進む組織とでも差があります。

ただこれを、世代や年代・年齢で区別するのはやや乱暴でしょう。ビデオ会議とチャットを延々と繰り返しても具体的に進まないプロジェクトもあれば、決裁権者との面談やアナログなプロセスを経て、計画が高速に進む組織もあります。

その一方で、例えば、中高年男性ばかりのホモソーシャル(単一の社会的属性)な組織では、ハイコンテキストなコミュニケーションが主流になりがちです。封建的・家父長的・排他的な慣習が支配し、仕事のプロセスが言語化・文章化されず、考え方が硬直化していれば、新しいイノベーションは生まれづらくなりがちです。

ただ、社会を揺るがすような出来事が、その年代に与える強い危機感は否定できません。東日本大震災や新型コロナウイルスの経験や記憶は、私たちに時間が有限であることを強く刻みました。

キャリア

経験を積んで状況を冷静に俯瞰できるようになるほど、実は、わかりやすい答えは出しづらくもなるもの。真摯に答えようとすればするほど、『一概には言えない』と、煮え切らない態度にならざるを得ません。

それでも、現場の状況を十分に知っているプロは、経験を活かして迅速で正確な判断を下せます。例えば、キャリア終盤のベテランだからこそ、限られた時間を大切にするのも当然です。

逆に、失敗すると次がないと思い込んでいる経験が浅いZ世代が、責任やリスク回避を考えて、なかなか決断できないことも珍しくありません。物価高騰や人手不足に反して賃金上昇が進まず、非正規や副業など雇用の流動化が進む日本社会。キャリアを犠牲にしてまで、何かを決める責任を負いたくないとリスク回避する心情は、十分理解できます。

人種・民族

以前の記事で、海外のコンサルティングファームによる分析と、「意思決定遅延理論」を紹介しました。欧米の企業を対象とした調査というバイアスが完全にゼロではないにしても、傾向は日本の企業にも該当すると言えるでしょう。

地域

国によって、働き方に対する意識が違うことは、前述のレポートでも示されています。ただ、意志決定の速度に対する意識が、先進国とグローバルサウスとで違うとしたら、それは地域差というより、産業構造や社会の違いが影響しているかもしれません。

ジョブ型の欧米先進国とメンバーシップ型の日本とでは、労働環境が違います。そのため、雇用の流動化・柔軟性が、迅速な意志決定のプレッシャーになっている可能性もあります。

協力先や競合相手が多い都市部と地方都市でも、マーケットが広いB2BとローカルのB2C、業種や商材の種類、対象となるマーケットなどの条件でも異なります。


意志決定の速度を上げる前に、人や組織に対する先入観や偏見から自由になることが必要です。では、意志決定を具体的にスピードアップさせ、成功率を高めるには、具体的に何が・誰が重要なのでしょう?次回、それについて深掘りしてみましょう。

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