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待ち時間や移動、処方箋不要!オンライン診療から医療DXを考えた

kotobato

先日、初めて医療機関のオンライン診療を受けてみましたが、移動や待ち時間がないのは本当に便利でした。一方で、やはり人が関わることの重要性も。医療現場のちょっとしたしかし確実な変化は、実は結構身近で起きているのかもしれません。

身近になっていたオンライン診療を試してみた

数ヶ月前のことですが、初めてオンラインクリニックを利用してみました。きっかけは、日々の睡眠の質があまりよくなかったり、疲れの回復に時間が掛かると感じることが増えたから。そこで、私が住む福岡市内の診療科を調べて対面の診察を受けました。
その時の診断で、別に、年齢やストレスのせいだと軽く片付けられたわけではなかったんですが、セカンドオピニオンとしての見解もほしくなりました。また、オンライン診療という新しい環境には以前から興味があって試してみたかったこともあり、自分で探してトライしてみたという次第です。
私が利用したサービスの場合、ユーザー登録は基本的な情報だけで、金融機関のような身分証明書のアップロードなどは不要。初回だけ、パソコンまたはスマホを使ったビデオ診断を受けました。空きさえあれば、自分の都合に合わせて夜間や週末も比較的自由に予約できました。
予め問診に回答し、予約した日時に15分ほどの診察を受けた後は、診断結果に準じて、必要な薬を自分のニーズに合わせて購入するだけ。後日、処方薬がコンパクトなパッケージで届く流れでした。サブスクやスポットの追加購入も可能で、継続利用のポイントも貯まり、必要があれば新しい診療を予約できる仕組みです。
実際に利用してみて、確かにこれで十分な場合もあるなと実感しました。日時を調整して予約したり、現地に行って待たなくてもいい。処方箋や薬局も不要。忙しい仕事や子育て・介護の合間や、地方都市ならさらに便利なはずです。

そういえば、メガネを作った時の検眼も、担当者とのやり取りはビデオ会議のようなオンラインでした。縦型のモニターに映ったのは、日本語を話すアジア系外国人スタッフでしたが、もしかするとIT開発やサポートのような、オフショア・ニアショア体制だったかもしれません。
インバウンドの観光客らしい人たちも多く見掛けたので、それぞれの外国語に対応した複数のスタッフもいるのでしょう。もちろん、検眼のステップは何の問題もなく修了しました。

現場の工夫で最適化されたデジタル+アナログ手法

一方で、対面でしかできないこともまだ多いのが現状です。
先日、別の件で今度は紹介状を手に久しぶりに大きな総合病院を訪れました。年一回受けている定期健診の結果、『そろそろ一度、専門医でチェックしてもらっておいてもいいのでは』という、掛かりつけ医のアドバイスがきっかけでした。
450床というそれなりの規模の病院は、10年以上前に福岡市内の別の場所から移転してきた、まだ比較的新しい施設です。それもあってか、いろいろなところでシステム化・自動化が進んでいました。
診察券は、モバイルアプリではないもののICカード。セキュリティーのためか、表面には何も印字されていません。このカードを使って自分で受付を登録すると、当日のスケジュールと管理番号が印刷された紙がプリントアウトされます。この紙を色付きのフォルダーに挟んで、指示通りにRPG風に各所を巡回していくフロー。診察の完了を示すために、途中で違う色のフォルダーに差し替えられる仕組みのようです。
総合受付や初診対応、診療科ごとの受付、採血・検尿など、窓口がすべて別れています。当日の番号は振られているものの、名前と生年月日の発声で本人確認を繰り返します。血圧はフロアに設置されている血圧計を使って自分で測り、会計は専用端末で決済します。
正直、すべてがスマートとはいえないものの、デジタルとアナログを組み合わせた現場としての最適化で、精一杯の最適解なのだろうと感じました。

それでも避けられない、長い待ち時間という課題

とはいえ、すべてが終わるまでに4時間ほどの時間が掛かっていました。それもあって、実は、この記事のきっかけとなる下書きをiPhoneで書けたほど。
診察自体は数分で終わったんですが、あちこちの窓口で待つ時間が本当に長くて。幸い、私の診察結果は大した問題もなく薬も不要でしたが、これが処方箋を持って薬局でさらに待つことになれば、半日仕事では済まなかったはず。
また、順番を待っている間いろいろ院内や人を観察していると、職業柄もあってか、ポスターやチラシ、POP、サインの分かり辛さ、アクセシビリティーの不具合、スムーズではない移動の導線設計などがつい目に付きました。
待合のベンチに座っているのは、ほとんどが高齢者。実際、マイナンバーカードを手に戸惑う高齢者の横には、認識デバイスの操作をサポートする専用の職員がずっと張り付いていました。外国人患者への対応も同様で、システムの隙間を埋めるにはどうしても人のフォローが必要になる例でした。
確かに、長い待ち時間は患者にとってストレスフルですし、「何のための予約なのかな」と思わないではありません。医療関係者に暴力を振るったり暴言を吐く、モンスターペイシェントを警告するポスターは何度も目にしました。しかし、毎日溢れかえる多数の外来や入院患者を、とにかく捌いていかなければならない厳しい現実を垣間見れば、現場で懸命に働く人たちを責める気になどなれません。
その日の外来患者は普段よりやや多かったらしく、180人近い人数でした。つまり、最低でも180通りのカスタマイズが必要で、予定通りに進まないことなど当たり前。そこに、必ずしも有効には機能していないプロセス処理やUIも、結果として長い待ち時間につながっているように感じられました。これは、患者側のUXを高めていないだけでなく、間違いなく現場の医療従事者たちの大きな負担にもなっていそうでした。

医療従事者の働き方改革も必須

映画『ナースコール』は人手不足が常態化した病棟で、ある看護師が一日の遅番を乗り切る、緊迫した90分のスイス映画です。実体験をベースにした脚本とはいえフィクションのはずなのに、ドキュメンタリーを見ているような、緊迫した俳優の演技とカメラワークでした。医療現場を知らない一般の聴衆としても引き込まれました。

欠勤者が出たわずか2人の看護師で、26人の患者を看る。突発的なことが次々と起き、ナースコールは鳴りやまない。映画にはAIやロボット、リモート診療は出てきません。テクノロジーやシステムで簡単に解決できる話ではなく、命の現場で人間の醜さや温かさが浮き彫りになります。日本ではなくスイス、ドキュメンタリーではなく物語としての映画、外来ではなく入院。しかし、これをただの絵空事と片付ける気にはとてもなれませんでした。
原題はドイツ語で「ヒロイン」を意味する「HELDIN」。専門職としての責任感や人としての思いやりだけでは、英雄たちはいずれ倒れてしまうでしょう。医療従事者たちにも、働き方のDXが不可欠です。

理想と希望だけでは語れない、医療を取り巻く現実

日本の医療が直面している問題は、複数の構造的課題が重なっています。
少子化を超えた「無子化」と超高齢化が同時進行しています。医療需要は増え続ける一方で医療従事者の不足は慢性化し、医療費の増大と財政の逼迫は、制度の持続性そのものを問い始めています。地域医療を担ってきた中核病院が赤字経営に陥ったり、ランサムウエア被害に遭う厳しいニュースも、残念ながら珍しくありません。
さらに近年は、薬価の上昇という問題が加わっています。医薬品の原薬は中国・インドへの依存度が高く、サプライチェーンへの影響は避けられません。また、中東の原油がストップすることは、透析や手術が必要な患者の命に直結します。
最近知り合った人に、離島の診療所の勤務する医師がいます。空き時間には趣味の釣りを楽しんでいるようです。しかしそれを支えるのは、キャリアを積んだベテランであっても、専門外の診療科目も真摯に学ぶ情熱と、現場の看護師たちとの信頼に基づくスムーズな連携。医療の地域格差は大きく、人口減の中で都市部と地方とが抱える問題は大きく異なります。
医療DXやメディテックについて語るとき、しばしば明るい未来が描かれます。待ち時間ゼロ、どこにいても受診できる、AIが診断を補助する、医療従事者も幸福…そうした未来は、いつかは実現されるのかもしれません。
しかし、インフラ整備や物流、規制緩和、経済的な実現可能性など、障壁は一つではありません。理想が実現するには長い時間が掛かり、今の現実の中で手遅れになる人が出続けることも、冷静に見ておく必要がありそうです。

住まいを医療の入口にするBizcareという試み

BlueMemeグループの出資先であるメディバリーが提供するオンライン診療サービス、「Bizcare(ビズケア)」がスタートして約3ヶ月が経過しました。

Bizcareの仕組みはシンプル。入居者は専用サイトから診療を予約し、ビデオチャットで医師の診察を受け、薬剤師による服薬指導を経て、処方薬の配送を受け取ります。診療から薬の受け取りまで、すべてオンラインで完結します。

この取り組みは、BlueMemeグループ、メディバリー、安田不動産、三井不動産レジデンシャルリースの4社連携で実現しました。Bizcareが示す発想の核心は、「病院側を変える」ではなく「医療の入口を変える」という視点にあります。賃貸マンションという切り口は、不動産事業者にとっての「入居者向け付加価値サービス」として機能します。住まいという、人々が最も多くの時間を過ごす場所に、医療のアクセスポイントを作ることを目指しています。

これは、ローコード開発技術を医療DX基盤に活用したプロダクト構築と、経営基盤の整備を支援する成果の一つですが、まだパイロット段階の取り組みです。BlueMemeの東京オフィスも入居している複合ビル「錦町トラッドスクエア」のレジデンスフロアから始まった小さな実証実験ですが、ここで得られた貴重なデータは、次の製品開発にフィードバックされていきます。

世界ではすでに「生活の中に医療が来てくれる」未来へ

日本の外に目を向けると、「患者が病院に行く」のではなく、「生活者の側に医療が来る」モデルがすでに一定の成熟を見せているようです。

Teladoc Health(アメリカ)

BtoBが主軸の、世界最大規模のオンライン診療プラットフォームです。日常的なかかりつけ医の代替として機能していて、慢性疾患の管理や精神科領域まで対応します。従業員の受診という行為のハードルを下げることで、予防や早期対応を後押しする設計です。

出典:

HealthHub(シンガポール)

薬局・クリニック・デジタルヘルスサービスをワンストップで提供する、政府主導のプラットフォームです。国民が自分で健康記録にアクセスし、予約を入れ、薬を管理できる仕組みを、生活インフラとして整備しています。

出典:HealthHub.
https://www.synapxe.sg/healthtech/national-programmes/healthhub

NHS App(イギリス)

かかりつけ医の予約から処方箋の管理、健康記録の閲覧まで、スマートフォン一つで完結させるアプリです。登録ユーザー3,900万人以上で、クリスマス当日だけでも31万3,000人以上が利用。「医療機関に行く前にまずアプリで確認する」という行動が日常化しています。

出典:NHS App Management Information – December 2025 – NHS England Digital
https://digital.nhs.uk/data-and-information/publications/statistical/nhs-app-statistics/december-2025

これらに共通するのは、「患者がわざわざ病院に行く」から「ケアの方から生活に来てくれる」という設計の転換です。この発想は、予防医療や日常的な健康管理への関心が高まる中でさらに広がっていくはず。IoTデバイスやセンサーと連携した、スマートホームの一角も担っていくでしょう。

変化は、小さな実験の繰り返しから

実は、この記事を書き上げた後、人生で初めて救急搬送されることになってしまいました。技術の最適化や適材適所、そして傷跡が身に沁みます。医療DXへの理想や期待は、医療従事者と患者の双方にとって高いのは間違いありません。IoTやウェアラブルデバイスの進化が続けば、遠隔診療の精度は上がっていくはず。バイタルデータをリアルタイムで共有しながら診察を受ける未来は、それほど遠い話ではないのかもしれません。余計なモノを身につけるのが嫌いな私も、そろそろApple Watchを買う必要があるかとも感じています。
オンライン診療のような、住まいに医療のアクセスポイントができるアプローチは、移動のエネルギーコスト以外にもさまざまなメリットがあります。必要に応じてリアル診療へとつなぐ導線もニーズは高いでしょう。軽症や慢性的な管理はオンラインでも完結できますが、対面での診察や検査が必要な場合のシームレスな橋渡しは、命に関わるサービスとしての完成度に関わります。
しかし、実現にはさまざまな制約があり、時間も掛かります。その間に多くの人が不便を我慢し続け、場合によっては手遅れになるような事態は健全とはいえません。そのためには、まず現場で小さなトライを繰り返す、アジャイルなアプローチしかありません。
現場の変化は、小さな実験の積み重ねからしか生まれません。挑戦を繰り返すことで、医療と生活の関係が少しずつ変わっていく、大きな可能性へと発展していきます。


BlueMemeが医療DXに関与する理由は、医療現場が抱えるシステム化の余地の大きさにあります。病院・クリニック・薬局・保険—これだけ非効率が残っている領域は、DX支援のビジネスとしても未開拓に近いフィールドです。OutSystemsやCreatioといったローコード・ノーコードプラットフォームは、医療系業務フローの構築にも適用できると考えられています。
ご質問やご意見もぜひお寄せください。

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リプリパ編集兼外部ライター
企画制作や広告クリエイティブ畑をずっと彷徨ってきました。狙って作るという点ではライティングもデザインの一つだし、オンラインはリアルの別レイヤーで、効率化は愛すべき無駄を作り出すため。各種ジェネレーティブAIと戯れる日々です。
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