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DX

ITアウトソーシングの今:コスト削減から高付加価値へ

リプリパ編集部

IT業界に限らず、人材獲得競争はかつてないほど激化しています。第2次ベビーブームの年齢層(団塊ジュニア世代)が定年を迎えて続々と退職していく「2030年問題」も目前に迫っています。そこで、考えられる一つのソリューションが、業務の一部を外部に委託するアウトソーシングです。ただ、アウトソーシングといっても、近年その中身が変化していることを知っていますか?ただの、コスト削減じゃないことを。

ビジネスプロセスアウトソーシング(BPO)というニーズ

自社の成長の不可欠な優秀なスキルを持ち、自社のカルチャーとの相性もよく、チームの中でも高いパフォーマンスを示し、採用面接の時の期待通りもしくは期待以上の働きをしてくれる人材が、今すぐ欲しい!ただし、妥当な報酬という条件で…。

そんな都合のいい人材が見つからず、見つかっても定着してくれないことが、多くの経営者の悩みです。そこで考えるのが、アウトソーシング。業務プロセスの一部分を、専門のノウハウを持つ外部組織に委託するのが、ビジネスプロセスアウトソーシング(BPO)です。

従来のアウトソーシングは、自動化できる単純で個別のタスクを中心に、コスト削減することに重点が置かれていました。事務・会計などのバックオフィス業務やネットワーク管理、一部のビジネスプロセスなど、利用範囲も限定的でした。ビジネス環境の変化が緩やかで、単に労働力を補強するだけであれば、これでも十分でした。

その後、単なるコスト削減に留まらず、運用や保守・管理を部分的にベンダーに外部委託して、付加価値を求めるニーズが高まっていきました。報酬も、時間に対する支払いではなく、成果報酬型にシフトしました。

単なるコスト削減から、付加価値を創造するエコシステムの構築へ

ただし、従来アウトソーシングに求められていたコスト削減に加えて、新しいニーズが高まっています。それが、データ分析やサイバーセキュリティー機能、単一ベンダーへの依存ではなく、信頼と透明性に基づくサードパーティーとのエコシステム(生態系)の構築など、付加価値の創造です。

さらに、DXの推進が急務となっている今は、組織の延長と見なされるようなパートナーシップが重視されています。事業戦略を立案するような、専門知識が必要なビジネスのさまざまな領域をサポートする関係です。企業は、高度なコラボレーションによって、自社では入手困難な人材と経験、ナレッジにリーチすることが可能です。高度なスキルと協調性を備えた社内外の人材を、チームメンバーとしてエコシステムの中に招き入れることで、新しいイノベーションを生み出します。

同時に、どの機能を社内に残し、どの機能をアウトソーシングするか、その適切なバランスを判断することは、非常に難しくなっているのが現実です。そのため、既存の人材を活用・教育し、新しい働き方にも対応しながら、信頼できる社外パートナーとの関係を構築していくことも求められています。

現代のアウトソーシングに重要な5つのポイント

欧米では日本よりも一足先に、新型コロナウイルスと共に社会生活を営んでいくアフターコロナの時代へと移っています。コンサルティング企業Deloitte社のレポートによれば、世界規模で見た場合の現代のアウトソーシングにおいて、5つの重要な点が挙げられています。以下、抄訳を交えて見てみましょう。

▼Global Outsourcing Survey 2022 | Deloitte US 公式サイト
https://www2.deloitte.com/us/en/pages/operations/articles/global-outsourcing-survey.html

1.自社に適切な人材を見つけて雇用し続けることは、さらに困難に

レポートでは、経営幹部の実に50%以上が、人員を増やしているにもかかわらず未だに、人材獲得が最重要課題であると回答しています。一部の企業では、リモートワークから出社への回帰も見られ、景気後退によって巨大テック企業の相次ぐ人員整理も話題になるとはいえ、企業がグローバル市場で人材の争奪戦を繰り広げていることは、変わりありません。

2.高い付加価値を生む、サードパーティーのサービスを運用する

製品開発や販売など、自社の業務(コアビジネス)に直結したバックオフィス機能は社内管理のままで、約半数の48%が社内で処理していると回答しています。しかし、財務や調達、物流などのアウトソーシングはさらに増えると指摘されています。一方で、サードパーティーのITサービスを導入している企業は、76%に達しています。単なるコスト効率よりも付加価値を提供する、高度なIT環境へと進化が加速しています。

3.サイバーセキュリティーとデータ分析が、アウトソーシングの優先上位に

企業が懸念しているのが、データの収集と保護という両方の機能です。サイバーセキュリティーへの懸念が、組織の戦略的優先事項を達成するための課題として挙げられています。8割以上の企業が、サイバーセキュリティー機能の一部または全部を、サードパーティベンダーに依存しています。また、サービスプロバイダーには、セキュリティー面だけでなく、データ分析の能力も期待されています。

4.内部ソーシング先としての社内の海外拠点

リモートワークの普及も伴って、社外のアウトソーシング先を利用する代わりに、世界各地に設置した社内のオフショア・ニアショア拠点を活用する動きが進んでいます。欧米の場合、インドは依然として主要なアウトソーシング先ですが、過度に依存しているのもリスクになります。そこで、東ヨーロッパやラテンアメリカ、アジア太平洋諸国などが、新しい選択肢になっています。拠点を効果的に運用するには、ビジネスとテクノロジーの両方に精通した人材の存在や、インフラの充実だけでなく、自社との差異が大きくない時間帯(時差)や文化圏など、いろいろな要素が考慮されます。日本文化圏の企業が自社の組織として委託できる海外拠点は、極めて限定的にならざるを得ないかもしれません。

5.アウトソース先という立場から、生態系の中のパートナーへの進化

一部の企業では、アウトソース先=単なる外注先としての関係に留めているところも多いでしょう。そのため、組織カルチャーやコラボレーションはあまり重視されていません。しかし、外部パートナーを含めたカルチャーのマッチングや、組織全体のコラボレーションは、チームが高いパフォーマンスを発揮することに不可欠です。

メンバーシップ型?ジョブ型?流動化する日本の雇用環境

日本では、従来の家族主義的な「メンバーシップ型」の働き方が変わりつつあります。とにかく、その組織に所属さえしていれば、ポジションに適したスキルを持っているかどうかに関係なく、とにかく雇用は守られていました。解雇規制が厳しいこともあり、組織は従業員を家族のように抱えてきました。

一方、世界の大半は、人のスキルや経験に基づいて雇用される「ジョブ型」です。職務内容や勤務時間、勤務地などが明確に雇用契約書(JD)で示されます。組織側には、スキルを持つ人材が活躍できる場を用意する責任があります。適した業務がない場合は、従業員は自分の実績やキャリアを積み重ねられる次の場へと移っていきます。

終身雇用が崩れる一方、新卒一括採用を見直す動きもあります。しかし、個人を無理にジョブに当てはめたりせず、個人の人間性を尊重する、メンバーシップ型雇用ならではのメリットも再評価され、多くの企業でジョブ型との混在・併用が模索されています。このような日本の労働市場の流動化も、アウトソーシングに付加価値を求める流れと深く関係しています。

アウトソーシングに代わる、新たな知的労働者という存在

テクノロジーの進化やグローバル化、働き方の変化によって、企業がアウトソーシングを利用する場合の優先順位やニーズも変化しています。何をアウトソースし、自社の強みにフォーカスすべきか?従業員のキャリアや雇用、組織のカルチャーを考慮しつつ、透明性と革新性があるコラボレーションが実現できるか? ここで重要な役割を果たすのが、デジタルレイバーと呼ばれる「仮想知的労働者」です。労働者といっても、定型業務を自動化することで、人間が処理する必要がある業務の負担を軽減し、生産性向上につなげるソフトウェアロボットのこと。実はこのデジタルレイバーが、ITアウトソーシングの概念を大きく変えています。次回は、このデジタルレイバーの活躍について、考えてみましょう。

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リープリーパー(略称:リプリパ)編集部です。新しいミライへと飛躍する人たちのためのメディアを作るために、活動しています。ご意見・ご感想など、お気軽にお寄せください。
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