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DX

続けるか?諦めるのか?BCPとDXにも関わる情報トリアージとは?

リプリパ編集部

29年前の今日、1995年1月17日(火)午前5時46分、マグニチュード7.3の阪神・淡路大震災が発生しました。人口密集地の各地で火の手と煙が上がり、押し潰された駅と列車や、高速道路が橋脚ごと横倒しになった映像と共に報道され、全世界に衝撃を与えました。今日は一日、能登半島地震の犠牲者を悼みつつ、神戸を中心に各地で静かに慰霊の祈りが捧げられます。

阪神・淡路大震災では、後に重要となるいくつかのことが世の中に広く知られる契機となりました。その一つがトリアージです。これは、日々の私たちの仕事にも関係する重要なキーワードです。記憶すべき今日という日に、チームマネージメントの視点で考えてみましょう。

緊急時に求められる、冷静かつ大胆な決断

阪神・淡路大震災をきっかけとして広く知られるようになったことは、いくつかあります。例えば、全く見知らぬ一般市民が、場合によっては外部から駆けつけて無償で支援する「ボランティア」は、後の東日本大震災や各地の豪雨水害など、復旧活動の下地を作ることにつながりました。また、1995年は本格的なインターネットの普及が始まる年であり、この震災は民間のビデオカメラ(アナログテープ)が克明に記録したことでも知られています。

そして、この震災がきっかけとなって知られるようになったのが「トリアージ」という概念です。これは、医療現場で負傷者を重症度に基づいて優先順位を付けて分類すること。患者にはトリアージタグが付けられ、「黒 0:死亡」「赤 I:緊急」「黄 II:準緊急」「緑 III:非緊急」の4つに分類されます。最も緊急を要する患者に優先的に治療を施すことで、対応全体の効果を最大化し救命率を上げることを目的としています。

患者の状態を色と記号で識別するトリアージタグ
患者の状態を色と記号で識別するトリアージタグ
出典:一般財団法人日本救急医療財団
https://qqzaidan.jp/about/triagetag/

トリアージを最もよく理解できる、とあるビデオがあります。震源に近く、島内唯一の救急病院だった兵庫県立淡路病院の奮闘の様子を捉えた、貴重な記録です(注意:地震の様子は映っていませんが、心理的な負担を感じる可能性がある方はご注意ください)。

【トリアージの瞬間】唯一とされる『震災当日の医療現場の映像』指揮した外科部長が命じた蘇生中止「やることやって、あかんかったら、次の人を助けなあかん」阪神・淡路大震災(2023年1月17日) – YouTube

いつか必ず役立つ時が来ると信じて、緊急事態に現場で何が起きていたかすべてを記録させる。助からない命の蘇生は諦め、限られた貴重なリソースを少しでも可能性がある人命救助に回す。プロとして冷静かつ的確に判断し、現場に指示を出してその責任を負う。極限状態の現場で判断を下した、当時の外科部長 松田医師のリーダーシップは深い尊敬に値します。

ビジネスにおけるトリアージとしての共通点と違い

ビジネスにおけるトリアージも、相対的な重要性と緊急性に基づいてタスクに優先順位をつけるためのフレームワークです。これは、入ってきた情報をチームの緊急ニーズとの関連性に基づいて整理・分類し、本当に重要なことにチームを集中させるチームマネージメントのプロセスです。情報を整理するインフォメーショントリアージとも呼ばれます。

例えば、プロジェクトの締め切りが迫っているにもかかわらず、想定外の技術的な不具合が起きたり、メンバーの意思疎通ができず、チームが混乱に陥ることは十分あり得ます。重大インシデントのアラートが鳴り響き、メッセージやメールが殺到し、情報が錯綜します。普段は通話しない相手にコールする必要もあれば、リモートだけでは肝心なことが分からない状況も考えられます。

そこで重要なのが、緊急性と優先度で判断する情報管理としてのトリアージです。入ってくる情報の意味を理解して行動に優先順位を付け、混乱した状況を管理する、チームマネージメントの強力な手法です。

ビジネスの現場では、人命を左右するほど厳しい状況にあることは限られますが、トリアージの原則には災害医療とビジネスとでいくつかの共通点・相違点があります。ただし、状況を迅速かつ正確に把握し、優先順位を判断する能力が生命線を握っている点は変わりありません。

共通点

  • さまざまな状況を、相対的な重要性と緊急性に基づいて評価し、優先順位をつけて対応する。
  • プロセスを効果的に実行するためには、明確なルールやガイドラインが不可欠。

相違点

  • 災害の規模や影響を予測する難しさは、一般的なビジネス上の課題をはるかに上回る。
  • 災害の場合、生死が掛かる極度のプレッシャーの中で迅速に決断を下さなければならない。

ビジネスの緊急時に決断すべき情報マネージメントとは

災害や事故は多くの場合、ほとんど警告なしに発生し、広範囲に壊滅的な被害をもたらす可能性があります。一方、ビジネスの場合は、いろいろなシナリオを想定して事前に計画を立てて、ある程度準備できると、従来は考えられてきました。しかし、VUCA(揮発性・不確実性・複雑性・曖昧性)と呼ばれる先行きが不透明な現代では、自然災害だけでなく、パンデミックや国際情勢、生成AIの爆発的進化など、想定外の事態が起こり得ます。

ビジネスにおけるトリアージでも、すべての情報が同じ重みを持つわけではありません。早急な対応が必要な重大な事態もあれば、後からケアできる些細な不具合もあります。需要のばらつきを理解し、プロセスを通じて適切なルートを構築することで、本当に必要なところにリソースを集中させる必要があります。共通の目的を達成するためには、タスクに優先順位を付けながらプロセスを合理化することが不可欠です。作業負荷と滞留時間を削減して、原因の概要を理解し、顧客満足度を維持するだけでなく、チームを励まし、適切に導くことも求められています。

ステップ1:ダメージを評価する

  • 情報を集める:全てのチャネルから、問題に関する情報を収集する。オープンなコミュニケーションと積極的な傾聴を奨励し、詳細を把握する。
  • 問題の現場を特定する:技術的なバグなのか、コミュニケーションのギャップなのか、リソースの制約なのかなど、混乱の根本原因を突き止める。
  • 重大性を判断する:入ってきた情報を、緊急度とプロジェクトへの影響度に基づいて、優先順位をつけて的確に分類する(必要なら適宜更新する)。

ステップ2:状況を安定させる

  • 連絡チャネルを確立する:情報の過多を防ぎ、全員が必要なメッセージを受け取れるようにする。普段から手法を整備しておき、緊急時に拡張する。
  • 評価を伝える:状況を明確に把握したら、簡潔かつ確実な方法でチームに伝える。透明性を確保し、メンバー各自が必要な情報に接するようにする。
  • 仕事を任せる:メンバーに具体的な仕事を割り当て、各自の強みや専門性を活用する。役割と責任を明確にすることで、混乱や二重作業を防ぐ。

ステップ3:再構築と回復

  • 進捗状況を監視する:問題解決に向けたチームの進捗状況を把握し、調整が必要な障害やボトルネックを特定する。更新し、必要に応じて調整する。
  • 報告して学習する:一段落したら、状況を分析し、学んだ教訓を確認する。洞察を記録に残してナレッジを共有することで、回復力を高める。
  • 成果を認め合う:チームの努力と回復力を称え、小さな勝利であっても祝うことで士気を高め、逆境に直面しても協力することの重要性を強化する。

BCPとDX、レジリエンスにも深く関係するトリアージ

緊急時ではなく平時の準備と対策が不可欠なのは、ビジネスでも同じ。これは、事業継続計画(BCP)とデジタルトランスフォーメーション(DX)という文脈でも、重要な視点です。製品やサービスだけでなく、ビジネスモデルやプロセス、戦略についても、優先順位を判断して迅速かつ頻繁に、そして経済的に実験する能力が極めて重要となっています。

まず、BCPとは企業が潜在的な脅威に対処するための、予防と回復のシステムを構築すること。多くの企業が、事業継続計画や災害復旧マニュアルを策定していますが、自然災害やパンデミックなどさまざまな混乱に直面することで、実際の現場でリアルに試されています。BCPでも、事業継続に必要な重要性に基づいて、ビジネス情報を分類し、固定資産や在庫、人事などのリソースの優先順位を判断することが必要です。

一方、DXでも情報の優先順位を判断することは重要なポイント。ドラスティックな変化に対応するには、既存の手法やプロセスに囚われず、ゼロから再構築する柔軟性が求められます。そのためには、すべての関係者が必要な時に必要な情報にアクセスできる、オープンな情報管理が必要です。情報の分類や優先順位付け、対応を容易にすることは、トリアージプロセスの自動化にもつながります。

そしてこれらは、組織のレジリエンス(回復力)を構築するための重要な戦略と位置づけられています。これは、突然の変化や課題に対応し、より早く、より強く立ち直る回復力のこと。リスクを回避する施策を取った上で、それでも避けられない外部からの衝撃に対処できる柔軟かつタフなレジリエンスは、組織にも個人にも求められます。変化が予測できないVUCAの時代には、トリアージによる迅速な判断はさらに重要となっているのです。


短期および長期的な視点からサステナブルなビジネスを実現し、破壊を伴う創造性豊かな進化が、予期しないできごとへの回復力を付け、新しい価値を生み出します。そのためには、チームマネージメントにおけるトリアージが不可欠です。次回は、平時に何を意識し準備しておくべきかを考えてみましょう。

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リープリーパー(略称:リプリパ)編集部です。新しいミライへと飛躍する人たちのためのメディアを作るために、活動しています。ご意見・ご感想など、お気軽にお寄せください。
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