北部九州に見る地方都市のDXチャレンジ例―宗像仙人だより 008
前回の記事の通り、スーパーマーケットチェーンのトライアルは、宗像仙人さんとリプリパ編集部が注目している、小売りDXの先進事例です。スマートカートや顔認識カメラにIoTセンサー、デジタルサイネージと、いろいろなテクノロジーの実証現場でもあります。ただ、どうも一つの民間企業だけの話ではないらしく、トークはさらに続きました。
[nlink url=https://www.leapleaper.jp/2023/07/05/successful-dx-seen-at-the-retail-store-chain/]
SimCity並に急速に進化している、福岡と北九州に挟まれた地域
実はトライアルは、小売り業や自分のところのITビジネスだけやないよ。これ、見てん。
福岡県宮若市で、リテールDX始まります – YouTube
▼官民連携事業「リモートワークタウン ムスブ宮若」プロジェクト / 宮若市
https://www.city.miyawaka.lg.jp/kiji003447697/index.html
へぇ、IT人材拠点の「リモートワークタウン ムスブ宮若」ですか!その中核組織を果たしてるんですね。
ここは、元の小学校がリノベーションされた施設で、前を通るたびに何かが作られようのは気付いとった。最初は寮なのか?とも思ったけど、真っ黒の外壁になってこれはただの店舗じゃないなと。
それがまさかの地域DX拠点、宮若市AI開発センター(MUSUBU AI)だった、と。小学校跡地を利用したスタートアップ拠点ってのは、福岡市にあるFukuoka Growth Nextっぽいですけど、産直レストランやアートイベントとか、いやぁ攻めてますねぇ。
宮若市は、アジアの玄関口でスタートアップ支援も手厚い160万都市の福岡市と、素材メーカーや製造工場を抱える北九州市のちょうど間やからね。
確かに、いろいろ有利な場所ではあります。
同じ福岡県内で明暗が分かれる福岡市と北九州市
福岡市は、こないだザ・リッツ・カールトン福岡が開業したやろ?
はい。さっきのFukuoka Growth Nextのすぐ北側にあるから中庭を抜けて出られますけど、九州初上陸の5つ星。最上階のスイートルームは、一泊250万円!らしいですよ。インバウンドの富裕層向けですね。ただ、福岡って、実は観光資源があんまりなくて…
何をいいよるかっ!最大の魅力として「食」があるやろが!
そっか!苺の「あまおう」やイチジクの「とよみつひめ」に、「豊前海一粒かき」。そして、西の糸島 vs 東の宗像という、日本の道の駅ランキング上位の地域も誇ってる。普段のご飯もそれなりにリーズナブルでおいしいこととか、首都圏の人にいわれて初めて、それが当たり前になってるのに気づきましたもん。
ただ、福岡は観光をアピールしたくても、海外から旅行客を迎える直行便がないのが弱点。博多湾をクルーズ船が停泊できるように改築したり、カジノとIRでごにょごにょやっとったけど…
一方、北九州空港は、24時間開いている海上空港ってのが強いですよね。都市部のど真ん中にあって便利なものの、門限が設定されている福岡空港に時間までに着けない、最終便の代替地としても最近スポットを浴びてます。2027年8月31日には、3,000mに延伸されるのが決まったし。
ポイントは、旅客だけやなく貨物やからね。重厚長大産業からの脱却を模索しよる北九州地区には、精密金型の三井ハイテック、産業用ロボットの安川電機、タイヤのブリジストン、陶器以外にハイドロテクト技術なんかも持つTOTOと、自動車関連は何でも揃う企業が集中しとる。本州側に海を越えればすぐ、山口の防府にマツダもある。高速道路の宮田スマートICなんか、ほぼ直結しとるトヨタが作らせたようなもんよ。
一方、南西に下れば、九州を縦横に結ぶ物流拠点の鳥栖市があります。Amazonの巨大物流センターを始め、あの地域は完全に福岡経済圏ですからね。さらに、その先にはこれまた海に面した有明佐賀空港もある。で、熊本まで行けば、台湾の半導体大手TSMCがソニーと合弁会社で工場を建設して、2024年の操業開始を目指してる、と。さらに、もう第2工場の話まで出てきて、期待値はさらに高まってます。
素材や原料の輸入や、できた製品を積み出す港湾や空港を、複数の箇所に持っとくのは強い。トライアルが絡んどるさっきのIT人材拠点にしても、新たなマーケットニーズや規模を見据えて、地方自治体やメーカー、地域ともしっかり連携しとる。DX人材の育成や雇用の面でも、エコシステムの中心やね。パートナー企業もどんどん積極的に募集しよるし、宮若市はもう都市作りシミュレーションゲームSimCityの世界やな。
北西の福津市も、福岡市のベッドタウンとして人気が高まって、人口が増えてるじゃないですか。こりゃ、ついに宗像も新時代が始まるんじゃないの!?
アフターコロナのワークライフバランスとは
空港といえば、アフターコロナで出社が前提じゃなくなり、出社とのハイブリッドも一般的になりました。エンジニア職だと、完全リモートも珍しくないですし。新幹線や飛行機代を負担する企業も話題になりましたよね。勤務地制限の撤廃で、交通費の片道上限も10万円台!
[nlink url=https://www.leapleaper.jp/2023/05/02/engineer-moved-to-okinawa-working-from-home/]
でも、そんな厚遇が許されるのはごく一部やろ。現実は、東京一極集中の解消が叫ばれとったのに、逆に加速しとるやろが。
だってしょうがないですよ。地方は仕事がない上にあっても給料は安いし、若者は自分たちと同じ世代が少ない。昨今、地方社会ならではの、閉鎖的で粘着質な人間関係という恐怖感もどんどん露呈してるし。子育てとか医療も含めたワークライフバランスを考えたら、便利で快適な都市部を離れられませんもん。
北九州市は18歳人口の流出が激しいし、かつての100万都市の人口は今や93万人。夏に毎年開催される「わっしょい百万夏まつり」は、今年、市政60周年という記念の年やのに。
▼わっしょい百万夏まつり
https://wasshoi.info/
100円ショップが、100円じゃ買えなくなったみたいなのの逆ですかね(涙)。とにかく、地方も緩やかに下降気味とはいえ、働く場所や働き方の選択肢が増えるのは救済です。以前、『都市部に海が近いから』という理由で大阪から移住してきた、サーフィンが趣味の人がいました。さっき食の話も出てたけど、関東圏から転勤でこっちに来て、胃袋を捕まれちゃったのか、そのまま「沈没」したまま戻らない人は、昔から珍しくないですし。
仙台や札幌と並んで、福岡は転勤や単身者の都市やけんね。ネットワークやデバイスも進化しよるし、仕事も生活もさらに多様化するんやないかな。俺はもう、あんなに人が多くて移動も面倒くさい大都会東京に行くのは好かん。
これからさらに加速する人口減で、辛うじて残る地方都市は、それこそ各地の支店経済の中心都市ですよね。仙さんでも東京に行きやすくなっている頃にはもう、他の都市は残ってないのかも…
その頃にはもう、俺がリアル仙人になっとるわ!
究極のリモートじゃないですか(笑)
郊外型の大型店舗は賑わっている一方、駅前の商店街はシャッターが目立つ。巨大なショッピングモールを歩き回るのは、高齢者にはなかなか厳しい。スマートカートやEC決済など、高齢者はデジタルディバイドで置いていかれる。介護以外の仕事先がないので、若い世代は都市部に出て行かざるを得ない。何より、働き手がいない。
高齢化と人材不足、交通インフラを筆頭に、地方都市が抱える深刻な課題はどこも似ています。続いてトークは、クルマ社会のことに続きます。
この記事の内容は、個人的な見解や感想であり、リープリーパー編集部や運営組織を代表するものではありません。
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この記事でインタビューをした方
宗像仙人 / Sennin Munakata
テクノロ爺
量子コンピューターやAI、常温核融合など、テクノロジー全般に関心が尽きない元ITコンサルタント。趣味も幅広く、万年筆やアルコールから、軍事研究、最新アニメ番組のチェックまで。福岡県宗像市のオススメは、沖ノ島と道の駅。
理人様 見ず知らずの者に温かいアドバイスをありがとうございます。 生物学の中だけ…
Soさん、ご質問ありがとうございます。 博士課程で必要な生物学の知識は、基本的に…
貴重な情報をありがとうございます。 私は現在データエンジニアをしており、修士課程…
四葉さん、コメントいただきありがとうございます。にんじんです。 僕がこの会社この…
面白い話をありがとうございます。私自身は法学部ですが哲学にも興味があります。 ふ…