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DX

取捨選択し意思決定する情報トリアージで、何を訓練・準備すべきか?

リプリパ編集部

1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災をきっかけに、負傷者を重症度に基づいて優先順位を付けて分類するトリアージの重要性が知られるようになりました。医療現場で普及したこの概念は、恐らく能登半島地震でも使われ、貴重な人命を救っていることでしょう。

予期しない急激な変化が増えている昨今のビジネスの現場でも、トリアージを意識したマネージメントが必要になることがあります。では、私たちは平時に何を訓練して備えておくべきでしょうか?前回の続きでお読みください。

活かすには続けるか諦めるか?BCPとDXにも関わるトリアージとは?

平時から訓練し、準備しておくことの重要性

混乱への対応は、ビジネスマネージメントで基本中の基本。インフォメーショントリアージを考慮して意志決定する場合、目指すゴールの相対的な優先順位に基づいて、リソースを配分することが不可欠です。突発的な変化や課題にも柔軟に対応し、学習しながら改善する能力を持っているチームや個人は、高いレジリエンス(回復力)を持ちます。次にまた同じような事態が発生しても、迅速かつ果断に行動する能力を発揮できます。

課題に効率的に対応するには、多様なチームによる部門横断的な相乗効果を発揮できる、ITテクノロジーが不可欠です。また、平時から現状に絶えず挑戦し、失敗を受け入れるチームのカルチャーも育成が必要です。

  • 予測不能なVUCAの時代:過去の事例にのみ従った「選択と集中」では対応できず、アジリティー(迅速さ)がさらに重要に。
  • 問われているレジリエンス:緊急事態に限らず、変化を抑え込むことは不可能。起きた変化への対応や回復が問われている。
  • デジタルレイバーとの協働:人でなくても処理できるタスクはシステムの自動化に任せ、人間の負担や属人化を避ける。
  • 人間のタスクのみに集中:貴重なヒューマンリソースは、人間でなければ判断できない意志決定のために確保しておく。
  • 現場の実情を知るのは現場:目まぐるしい変化にスピーディーに対応するには、ITシステムを現場で内製化する必要がある。
  • 平時あっての緊急対応:全てを機械的に自動処理できるとは限らない。緊急時の応急処置を常態化させてしまうのは危険。
  • 挑戦と失敗を許容する文化:判断とタスクは現場に委ねざるを得ないことも。安心できる日頃の信頼関係が、緊急時に活きる。

もったいない!?サンクコストという泥沼

ここで一つ、トリアージを考える上で注意すべきことがサンクコストのネガティブな影響です。サンクコスト(Sunk Cost 沈んだコスト)とは、すでに発生し回収できないコストのことで、プロジェクトの失敗にも深く関係します。

この文脈でよく知られる事例が、超音速旅客機コンコルドです。これは、1970年代にイギリスとフランスが共同開発し、当時の最先端技術が国境を越えて注ぎ込まれた、夢の旅客機プロジェクトでした。しかし、限られた客席数と高額なチケット代、騒音や大気などの環境負荷、航空需要の変化、事故などにより、運航は27年間で停止されました。コンコルドは、開発や保守、修理などの膨大なサンクコストが発生していたことに加えて、国家の威信もあったために上層部が中止を決断できず、さらに大きな負債を背負うことになりました。技術面では、その後の航空機開発に貢献したものの、始まったプロジェクトを途中で終わらせることの困難さを象徴する、時代のあだ花として散っていきました。

日本でも、国産初のジェット旅客機「スペースジェット」が相次ぐ延期の末に中止されたのは、記憶に新しいところ。また、今まさに、幾度となく増え続けるコストや開催意義から、大阪万博が問題視されています。

ITシステムのサンクコストと言えば、開発や運用、保守、教育などに、すでに消費してしまった費用が該当します。『折角、こんなに金と時間、人を使ってきたんだし…』と、昔から改修を重ねて使ってきたレガシーなシステムをいつまでも捨てられない。元の発案者が経営層にいるので、「猫の首に鈴を付ける」貧乏くじを誰も引きたがらない。そのため、そこがボトルネックになりDXが進まない…こういった話は珍しくありません。しかし、サンクコストを適切に判断して冷静に処理することは、合理的なトリアージに不可欠です。

  • 損益分岐点を分析する:新しいプロジェクトを始める前に、潜在的コストと長期的利益を考慮した費用便益分析を実施する。
  • 明確な撤退基準を設定する:サンクコストのしきい値を設定し、それを超えれば損切りして、代替オプションにスイッチする。
  • サンクコストの認識を深める:迅速でタイムリーな状況判断によって意思決定する重要性を、チームメンバーに教育する。
  • 集中とリソースの再配分:余計な情報を除外し、発生したサンクコストより真の影響を考慮して、残ったリソースを活用する。

トリアージだけでは解決できない!注意点と対策

コロナ禍で、急なリモートワークに切り替えたり、プロジェクトが大きな変更に追い込まれた4年前を思い出してください。残念ながら、トリアージの意識や訓練だけでは、すべての問題を解決できるわけではありません。医療では、人命には常に倫理という重いテーマが関係するのと同様に、ビジネスの緊急対応は品質やサービスの低下を避けられません。インフォメーショントリアージは非常に効果的・合理的に思えますが、それを平時のビジネスオペレーションの規範にするのは、非常に乱暴な考え方です。

トリアージに過度に依存すると、本来そうあるべき前提で設定されているはずの、時間や手間が必要なステップを省くことになります。結果として、品質やサービスの低下につながる可能性は常にあります。また、無謀なやり方では後々チームに禍根を残す可能性もあり、慎重に使われるべきものです。

災害と同じように、平時の入念な計画や明確なコミュニケーション、冷静な情報分析、効果的な資源配分が必要です。適切な情報に基づいた意思決定の枠組みを作って、協力体制を育むことで、ベストプラクティスが維持できます。チームが一体となって混乱した状況を乗り越え、以前よりもさらに強い未来を築くことができます。

  • 失敗からの学習:混乱した状況を記録・分析して、同じような状況を避ける貴重な教訓を引き出し、新しい環境へ適応する。
  • チームの教育と支援:メンバーに基本原則を教育し、自ら情報を選別して、優先順位を付けられる学習機会を提供する。
  • 実践的トレーニング:実際のシナリオを想定したシミュレーションを定期的に実施し、トリアージプロセスに慣れる。
  • テクノロジーの活用:プロジェクト管理やコラボレーションツール、コミュニケーションアプリなどで、情報共有を効率化する。


Appleの創業者スティーブ・ジョブスが、黒い長袖のシャツにジーンズというほぼ同じ服装をキープしていたのは、その日の服装の選択に余計な判断力を浪費しないためだと言われていました。人は、何かを「決めること」には、たとえそれが小さなルーティーンであってもストレスが伴うからです。

トリアージは、元々は救急医療の現場のために開発された概念ですが、ビジネス分野でも応用が可能です。それも、パンデミックや事件・事故、災害、サービスの停止や障害など、外的な出来事に限りません。チームにとっての緊急事態なら、メンバーの急な離脱や製品の重大な不具合、納期の前倒し、予算の削減、社内の対立、予期しない市場の変化などがあり得ます。トリアージは、プロジェクトの規模や影響度、時間軸、種類など、さまざまなリスクに対しても有効です。

ビジネスでは、災害医療の現場ほどの厳しい状況にあることは稀です。少なくとも、誰もがそう願っているでしょうが、AIの加速度的な進化と普及は、現実に人の生命や財産を脅かすまでになっています。また、AIが高度に発達した時代に人間に残された大きなタスクは、説明と結果責任を負うことだとも言われています。しかし私たちは、AIが出した結論と反する決断を下せるでしょうか?

組織人として、リーダーやマネージャーの指示を待つのが正しいのでしょうか?それとも、被害の拡大を黙って見過ごさないためには、自分の判断と責任で何か行動すべきでしょうか?平時のルールは、緊急時にも機能するでしょうか?そして、見込みがないタスクに『やめなさい』と冷静に指示を発することができるでしょうか?簡単に答えが出ないことを、各自がこれからも考え続けながら行動していく必要があります。

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