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カルチャー

DJのかっこよさって上手さのことじゃないから!―DJ Tokinaga 3

リプリパ編集部

DJ Tokinagaの、穏やかな語りの中にも、楽しんでプレイしている様子が感じられるトークが続いています。しかし、機材やテクノロジーが発達して、誰でも手軽にそれっぽく振る舞える現代、グッとくるDJプレイって何なんでしょうか?DJに使わないまでも、LPレコードやプレーヤー人気が高まっている背景とは?

そんな今回もCheck This Out! 前回のプレイはこちらからどうぞ。

DJとしてのかっこよさは上手さじゃない!

Tokinagaさんは、定期的にクラブみたいな場所に出入りしてプレイしてるんですか?
Tokinaga:はい。銀座のバーで土曜日の夜にやってます。BlueMeme社内の人も、何人か来たことありますよ。最近、あんまりクラブに行ったりはしてないですけど、好きなアーティストが海外から来た時は見に行くことがあります。

― いいですね、アウトプットがあるっていうのは。そのバーで掛ける曲のチョイスって、オーディエンスとしての客層に合わせて考えたりしてますか?
Tokinaga:今の店は、選曲を結構任せてもらってるんで、オーディエンスのことはそこまで意識せずに自由にやってます。ただ、夏は西海岸の曲や夏がテーマの曲、冬は東海岸の曲を多めにといった季節を意識したり、常連の人が好きな曲を持って行ったりはしてます。

― なるほど。そもそもTokinagaさんが感じる、上手いDJプレイのポイントって何なんですか?
Tokinaga:もう、とにかくかっこいいかどうか。

― でも、かっこよさって人によって違うじゃないですか。
Tokinaga:まぁそうなんですけどね。かっこよさは上手さじゃないんですよね。

クールなフレーズ、きた!
Tokinaga:例えば、前回の記事でも紹介したビデオで、実はDJが途中でちょっとミスってるんですよ。でも、別にそこはどうでもよくて。正しくプレイすることより大事なことがありますから。

― なるほどなぁ。かっこよさで言うと、前回触れた世界最大のDJの大会「DMC」のDJバトルに出場していた中学生と高校生のDJ姿を見たとき、彼らは彼らで、私が想像もできないような新しい解釈や表現に触れて、体験の幅が広がっていくんだろうなって、ちょっと羨ましく感じてもいました。
Tokinaga:今の若い世代って、インプットとしての曲の種類や量、入手のしやすさ、そしてアウトプットとしての場所やチャンスは、僕らの比じゃないですからね。

Tokinagaさんが言ってるかっこよさって、曲のチョイスだとかミックスの演出、機材のセッティングとかだけじゃなくて、オーディエンスとの関係も大事だったりするんですか?
Tokinaga:それがなかなか難しいところで、正直『別に、この人たち全員に楽しく踊ってもらわなくてもいいかな…』みたいなのもあるんですよ。全員が踊ったり、音楽を聴きに来ているわけではないので。

― 何をするでなく、ただそこにいるだけの心地よさ、わかります。踊ると言うより、ビートに揺れてる感じとか。
Tokinaga:『わかってくれるあの人だけ踊ってれば、別にいいかな』みたいなとこもあって。

― 「すべての人たちにメッセージを伝えようとすると、誰にも伝わらない」のにも通じてるかも。
Tokinaga:そうですね。オーディエンスがどれくらいノってるかっていうのは確かに大事ですけど、聞いてる側が全員、僕が好きな音楽が好きだとは限らないですから。

― ちなみに、DJ用のレコードって何枚くらい持ってるんですか?
Tokinaga:よく聞かれるんですけど、正直、数えてないんですよ。プレイする時には、ある程度の枚数をケースに入れてコロコロ引っ張って行きますが、家では壁一面を本棚のようにして、LPもシングルも両方レコードを置いてますが、自分でも何枚あるか分からないです。

― そのうち床がたわんで怒られるヤツだ(笑)。

素人クリエーター乱立の時代だからこそ

― DJミックスで使うのに、好きな音楽系のジャンルとかあるんですか?
Tokinaga:僕は元々がヒップホップが好きなんで、やっぱりヒップホップやR&Bが多いですね。それに、ヒップホップのトラックは、ジャズとかソウルから音を取ってきたりもするんで、その周りも結構聞きます。DJでは、時々、そこにJ-POPを混ぜたりとかもしますけど。

― そっか!よく歌謡曲とかちょっと意外なブレイクを挟んで、つなぐ人とかいますよね!
Tokinaga:はい。同じような路線だと、確かに綺麗にまとまって気持ちいいんですけど、結局、一本調子だと飽きちゃうんですよ。なので、いきなりアニソンかけたりすると、また盛り上がったりとかします。

― 意外性が生む高揚感ってありますよね。素人の私でも『この曲の後にこんなことできるんだ!』って驚くことはあります。
Tokinaga:それです。

― 以前、カウンターだけのこぢんまりしたバーを貸し切って、プレイしていたDJの人と話したんですけどね。すごく興味深かったのが『昔の歌謡曲って、実はとてもリッチに作られてたことがわかるし、歌番組だってフルオーケストラが当たり前だったのは凄い時代だった』っていう話でした。Tokinagaさんも、何かそういう変化を感じたりしますか?
Tokinaga:そういうのはあると思いますね。今って、言ってしまえば、素人が作った音楽が商品になる時代ですよね。昔は、音楽って本当に限られたプロしか作れなかったんです。作曲だけじゃなく、作詞にしてもそう。だから、古くても結構良質なものが多い気がするんですよ。

― ふと、最近の料理レシピサイトの傾向を連想しました。素人の怪しい調理法というノイズが増えてアクティブユーザーが減る一方、プロが監修してクオリティーコントロールが効いた情報の価値が上がっている。コンテンツの作り方として、どこか通じている気もします。

レガシーメディアを使った新しい演出と価値

― ビニールというフィジカルメディアは、レコード針が直接接触するから、どうしても使うほどに劣化していくわけですよね?程度の良い中古を見つけるって、なかなか大変だったりしないんですか?
Tokinaga:酷すぎるのはよっぽどですが、そこまで盤質にはこだわっていないので大丈夫です。

― そういえば私、去年の秋に、長崎県西海市の山奥にある音浴博物館っていうところに行ったんですよ。そこは元小学校の分校の跡地を改装して、レコード博物館にしてるんです。プレーヤーが3箇所に置いてあって、どのレコードも自由に引っ張り出して聴き放題。流石に、DJプレイしていいようにはなってないんですけど(笑)。

Tokinaga:そこ、何か聞いたことがある気がします。

― はい、いろんなメディアにも取り上げられたり、地元の観光施設の一つになってます。で、膨大なレコードの整理が追いつかないほどらしいんですが、わざわざ買い取って集めたりしなくても、終活だとか配偶者が亡くなって、レコードを処分する人がガバーってまとめて寄贈するらしいんですよ。
Tokinaga:DJは、そういう中から、まだ誰も見つけてないかっこいい曲を見つけるのが楽しいんですよ。

― 何ですか、その墓泥棒みたいなテンションは(笑)。
Tokinaga:誰も知らない曲を現場で掛けて、その場が『何だかやべぇ!』なみたいな雰囲気になるのがいいんですよ。例えば、そういう誰も知らないような楽曲Aをサンプリングして作られた、別の楽曲Bが流行ったりすると、『Bのサンプリングの元ネタになった、Aという曲があるみたいだ』と噂になり、それまで見向きもされなかったAの人気が爆上がりするようなこともあります。

― おーっ!もしかして、株取引のチャートってクラブフロアに似てるとか(笑)。
Tokinaga:例えば、山下達郎の「FOR YOU」っていうLPは、一時期18,000円以上もしてたんです。今は、Amazon限定版が出ているみたいですが、それでもでも8,000円します。僕が買った時は、レコード屋じゃなくて古本屋の一角にあるダンボールに、価値が分かってない人が無造作に置いてたんで、数百円でした。

▼Amazon.co.jp: 【Amazon.co.jp限定】FOR YOU (完全生産限定盤) (アナログ) (ジャケット絵柄メガジャケ付) (2次生産分) [Analog]: ミュージック
https://www.amazon.co.jp/dp/B0C5R5QM8Q

― うわ、ホントだ!懐かしの鈴木英人イラストジャケット。CDだと1/4の値段じゃないですか。
Tokinaga:でしょう?今って、海外の人がめちゃくちゃ買い集めてるから、中古のLPレコードでも平気で1万円くらいするんですよ。実は先日、さっき言った僕が週末にプレイしに行くバーで、その山下達郎の「FOR YOU」を掛けていて、レコードのジャケットもオーディエンスから見えるように置いてたんです。そうしたら、外国の方がめちゃくちゃガン見してたので、ちょっと怖かったです(涙)。

― リラックスするはずの音楽で緊張感が走ってる(笑)。最近、80年代の日本のシティポップも、世界的に大人気だと聞きました。

Tokinaga:そうなんです。だから、当時50円とか100円とかでいっぱいあったサンプリング元のレコードが、今めちゃくちゃ高い金額で取り引きされてます。

― なるほどなぁ。
Tokinaga:だから、DJたちのマインドとかカルチャーって、古い曲を使って演奏してる面もあるんですけど、新しい形で曲を流行らせる媒介になってる面もあります。

― まさに仲介役としてのメディアだし、民間主導のCool Japanじゃないですか。そして、実は世の中に全くのオリジナルなんてない ”Everything is a Remix” でもある!


ChatGPTの可能性はますます広がっていますが、文章から音楽を生成できるText-to-Musicもいろいろなサービスが登場しています。誰でも簡単に、高品質な音楽を作ったり再生でき、流通コストも限りなくゼロになっています。だからこそ、そうじゃない側の相対価値が上がっているのは、音楽に限らずいろいろなコンテンツで起きていること。

盛り上がってきたフロアは、このまま連載最後のステージへと続きます!

この記事でインタビューをした方

DJ Tokinaga
元パーソナルトレーナーのDJ

中学生の頃にHip Hopに出合い、大学生からお宅DJに。社会人になってから人前でDJを行うようになり現在も月1でDJを行っている。現在はHip Hop、R&BにアニソンやJ Popを全てアナログレコードでミックスするプレイスタイル。家族で新宿や渋谷にでかけた時にレコード屋に寄らなくていいの?と聞いてくれる妻に感謝!!

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リープリーパー(略称:リプリパ)編集部です。新しいミライへと飛躍する人たちのためのメディアを作るために、活動しています。ご意見・ご感想など、お気軽にお寄せください。
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