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統計から見えるワーキングマザー×ITエンジニアの課題

kotobato

日本のIT業界で、女性エンジニアが子育てをしながら、自分のキャリアを築いていくには、いくつものハードルがあります。長時間労働や労働生産性、労働形態と賃金格差などの雇用の問題、結婚や出産などのライフイベントと待機児童など育児の問題、そして、ジェンダーギャップやハラスメントというそもそもの大きな社会問題が横たわっています。その一方で、IT技術は高速かつ複雑に変化していきます。母の日を直前に控えた今回は、「お母さんから生まれたすべての人」と一緒に考えてみましょう。

日本の、都道府県のジェンダーギャップ指数

毎年、世界経済フォーラム(WEF)が発表している世界のジェンダーギャップ(性差)指数ですが、日本は2022年のレポートで、146ヵ国中116位と相変わらずの絶望的な低さです(東アジア太平洋地域で最下位)。この指数は、次の4つのインデックスで算出されていますが、日本は、「教育の達成」は高く「健康と生存」もそれなりな一方で「経済活動への参加と機会」が低く、「政治的な権限の付与」に至っては見る影もありません。

▼Global Gender Gap Report 2022 | World Economic Forum 
https://www.weforum.org/reports/global-gender-gap-report-2022/digest

ジェンダーギャップ指数といえば、先日、日本の各都道府県のランキングが話題になっていました。算出基準は前述のWEFに準じた4分野で、トップはそれぞれ「政治:東京都」「行政:鳥取県」「教育:高知県」「経済:沖縄県」です。東京の政治といえば、4月に実施された統一地方選挙では東京の女性区長3人が誕生し、過去最多の6人になりました。歩みは遅いとはいえ、変化は進んでいるようです。

ちなみにこのページには、いろいろなインフォグラフィックスが表示されていますが、データや算出方法がソフトウェア開発のプラットフォームGitHubで公開されているのも、興味深いですね。自分が生活する都道府県が何位なのか、ぜひチェックしてみてください。

そもそも、子育てに対する寛容さはあるのか?

一方で、そもそも子育てに対する寛容さという点で、日本はどうなんでしょうか?

大学ランキングなどを発表しているメディアU.S. Newsは、「子育てに最適な国」ランキングも毎年発表しています。「人権に配慮している」「家族に優しい」「男女平等の環境が整っている」「幸せだと思われている」「所得が平等」「安全」「公教育や公衆衛生システムが発達している」という、8つの属性で評価されます。2022年のランキング(データは2021年)では、北欧の国々をトップに、日本は78ヵ国中20位と微妙な位置です。

▼Best Countries to Raise a Family | U.S. News
https://www.usnews.com/news/best-countries/best-countries-to-raise-a-family

「世界幸福レポート」も見てみましょう。こちらでは、「1人当たりGDP」「社会的支援」「健康寿命」「自由」「寛大さ」「腐敗」という6つの要因にプラスして、その人が人生をどう評価しているかという質問への回答に基づいて評価されています。日本は、過去3年間の「幸せスコア」6.10で、137ヵ国中47位です。

▼World Happiness Report Data Dashboard | The World Happiness Report
https://worldhappiness.report/data/

これらの数値をどのように評価するかは、議論の余地があるかもしれません。しかし、定期的に公共交通機関でのベビーカーの扱いが議論になったり、公園でボール遊びなどの禁止事項が列挙されている様子がシェアされ、子ども関連の施設がNIMBY(必要ではあるが自分の近隣に来てほしくない迷惑施設:Not In My Back Yard)扱いされるのは、なぜなんでしょうか?

女性の社会進出について語られる時、マイクロアグレッション(小さな攻撃性)というキーワードを目にすることがあります。これは、意図的・明示的ではないものの、何気ない言動で相手を差別したり、傷つける偏見や差別的な態度のことです。子供の進学に合わせて新しく参加したママ友グループ、都市部から地方へ移住した人たち、また性別に限らず日本で生活する外国人など、『みんな笑顔で優しく、丁寧に接してくれるものの、絶対に受け入れられない壁が立ち塞がっている』エピソードは、同質性が高い日本のコミュニティーでは事欠きません。あからさまな差別とは違うため、表面化し辛く、より根深い問題になっています。

IT業界の男女格差が解消されるまで、約132年…

令和3年(2021年)の総務省「労働力調査」を見てみると、働く女性のうち、情報通信業に従事している人の割合は28.5%です。また、雇用者総数に占める女性の割合は、情報通信業が28.5%です。過去5年間で微増は続けているものの、変化は緩やかです。

情報通信業に従事している女性の割合は28.5%
情報通信業に従事している女性の割合は28.5%
参考:令和3年版働く女性の実情|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/josei-jitsujo/21.html

これは日本だけなのかというと、そうでもないようです。まず、テクノロジー業界で働く女性たちの統計を公開するサイトを見たところ、現行のペースで男女の経済格差が解消されるまでの日付がカウントダウンされています。開いた時点で約132年(!)。孫世代まで掛かる、なかなか気が遠い話です。

▼Women in Technology Statistics: Where are We? | Women in Tech Network
https://www.womentech.net/en-us/women-technology-statistics

別のサイトの記事では、調査対象となったソフトウェアエンジニアのうち25.1%が女性で、業界平均の26%とほぼ同じであると報告されています。しかし、IT企業の4分の3以上が男女均等ポリシーを制定しているものの、CEOやシニアリーダーのうち、女性はわずか10.9%に留まっています。2020年から2022年にかけて、IT企業における女性の割合は大手で2.1%、中小では5.1%と大きな減少を示しました。これは、コロナ禍で女性エンジニアの方が離職しやすかった・させられやすかった、厳しい現実を示しています。

▼70+ Women In Technology Statistics (2023)
https://explodingtopics.com/blog/women-in-tech

近頃流行(?)のリスキリングは現実的なのか?

昨今、急にスポットが当たっているキーワードが、リスキリングやリカレント教育です。テクノロジーの進化やビジネスニーズの変化、働き方の多様化などに伴って、自分が培ってきたスキルを切り替えよう、学び直そうという機運です。しかし、『子育てしながらのリスキリングなんて、できるわけない!』として、非難囂々だったのは記憶に新しいところ。

そもそも『仕事に直結して、稼ぐことができる以外のスキルは意味がない』と迫るような雰囲気は、リスキリングやリカレントの本質なんでしょうか?組織や社会の支援体制がない中で、個人的な努力だけに期待するのは、非常に厳しいのでは?

技術革新と競争が激しいIT業界の現場からしばらく遠ざかっていた女性の中には、復職したい気持ちと育児との間で行き詰まりを感じて、復帰に消極的な人も少なくないはずです。無駄に焦らされたり落ち込むことなく、雇用経済対策と、文化教養的な知識との関係について、専門家が語る意見に耳を傾けておいた方がいいでしょう。

リスキリングとAI社会 -「生涯学習」から何が変わっちゃったんですか – 岩崎 久美子(放送大学 教養学部教授) #1087 【朝ポキ】朝日新聞のポッドキャスト・インターネットラジオ配信


ある程度覚悟はできていたとはいえ、今回は厳しい現実と課題ばかりが浮き彫りになってしまいました。記事のタイトルとは裏腹に、働く母親ITエンジニアにとっての課題ではなく、どう考えても私たち全員の課題です。では、具体的に私たちは、何をどうすればいいでしょうか?今すぐに解決できないとしても、取り組むべき姿勢とは?次回は、その辺りについて考えてみます。

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リプリパ編集兼外部ライター
企画制作や広告クリエイティブ畑をずっと彷徨ってきました。狙って作るという点ではライティングもデザインの一つだし、オンラインはリアルの別レイヤーで、効率化は愛すべき無駄を作り出すため。各種ジェネレーティブAIと戯れる日々です。
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