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カルチャー

クラシック音楽が退屈なんていわせない!常識と違う衝撃の5曲

伊風太欧

「クラシック音楽」と聞くと、どんなイメージを持ちますか?伝統と格式による厳格なスタイルに縛られていて、上質でハイソ。自由度が制限されていて、ちょっと退屈…。実は、そんなことはありません!今回の記事では、さまざまな観点から「音楽の常識」を改めて考えてみてみます。

自由すぎる作曲者の時間感覚は、超スケーラブル!

皆さんは、クラシックの演奏会に足を運んだことはありますか?大抵の演奏会は、休憩込みで、1時間30分~2時間ほどで終演します。演奏会で取り上げられる一般的な曲の長さも、1曲または1楽章あたり長くて20分ほど、短くて5分ほどです。それらが一般的な楽曲の長さだと思っているかもしれませんが、とんでもない!時間の常識を逸した作品を、いくつかご紹介します。

ジョン・ケージ作曲 -「Organ²/ASLSP」

アメリカの作曲家であるジョン・ケージによって作曲されたオルガンまたはピアノのための作品。ちなみにケージは、テレビ番組「トリビアの泉」でも取り上げられたことがある「4分33秒」の作曲家でもあります。

「Organ²/ASLSP」は、ピアノだと1時間前後で演奏が可能ですが、ジョン・ケージが楽譜に記載した指示の解釈の方法によっては、オルガンだと無制限に演奏できることが分かりました。ドイツのブキャルディ廃教会で2001年9月5日に演奏が開始され、639年かけて演奏されるこの曲は、2640年9月5日に演奏の終了が予定されています。

▼Halberstadt Germany ASLSP 2006-01-05-17h.ogg – Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Halberstadt_Germany_ASLSP_2006-01-05-17h.ogg

エリック・サティ作曲 – 「Vexations」

フランスの作曲家であるエリック・サティが作曲した20世紀最大のピアノ曲。サティ本人もとんでもない変わり者で、『私に対する作曲の委嘱料が高すぎる!』と出版社に激怒して値下げ(!)を要求したこともありました。傘が濡れることを嫌って、持っている傘を雨でもささなかったり、白い食べ物や飲み物(チーズ、お米、牛乳など…)しか食べなかったり、手紙の年月日を自身の死後の年月日で書いたり、とにかく変わった方だったそう。今回ご紹介する「Vexations」は、変わり者のサティを象徴する作品だと思います。

「Vexations」の楽譜には、以下のような解説がサティによって記されています。

Pour se jouer 840 fois de suite ce motif, il sera bon de se préparer au préalable, et dans le plus grand silence, par des immobilités sérieuses.

(この主題を840回繰り返して演奏するために、前もって準備が必要だろう。最大の静寂と厳粛な不動性によって。)

楽譜より(著者訳)

この840回の繰り返しを真面目に捉えて演奏すると、なんと約18~25時間かかります。数人でシェアして演奏されることは度々あるものの、一人で演奏される機会はそうそうありません。とあるピアニストが一人での演奏を試みたところ、途中で幻覚症状が出てきて演奏を中断したそうです。

2021年、ドイツのピアニストのイゴール・レヴィットが演奏の様子をYouTubeでライブ配信し、クラシック音楽界では話題になりました(以下は、その時の様子を11分に編集したショートバージョンです)。ちなみに、「Vexations」の意味は「いやがらせ」です。

お行儀いいお作法なんてぶっ飛ばす、ピアノ演奏スタイル!

ピアノの鍵盤を押す手段と言えば、皆さんはどのような方法が思いつきますか?多くの方は「手」「指」と答えるでしょう。「手」で演奏する、これがピアノの世界に限らず一般では常識的な演奏手段とされています。しかし、この常識を打ち破るような作品が、この世の中には意外と多く存在しています。私の知る限り、2000年代までピアノ作品において「手」以外を使う作品は見かけたことがありません(もし見かけたら、こっそりコメントで教えてください)。今回、「手」による演奏の常識を打ち破った作品を紹介します。

木山 光作曲 -「スリー・シェルズ」

音量注意!現代作曲家・木山光が生み出した画期的な作品である「スリー・シェルズ」は、なんと一人の人間による3本の手のために書かれています。『人間って3本手がある?あれ…?』という疑問を持った方。一度動画をご覧になってみてください。本当に3本の手によって演奏されているように聞こえます。

この演奏を聴いたら『どうせ適当に弾いているのでしょ?』と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、かなり正確に演奏されています。いつかライブを聞いてみたいですね。ちなみに、木山光は「塵肺症」(これまた風変りな作品名!)というピアノ作品も作曲していて、これもまたなかなか聞きごたえのある曲です。

アーロン・ジェイ・カーニス作曲 -「スーパースター練習曲 第1番」

ピューリッツァー賞とグラミー賞を受賞した、アメリカの作曲家であるアーロン・ジェイ・カーニス。これもまた彼の代表作、そして比較的知名度もあるために、演奏の機会にも恵まれている作品です。途中からピアニストが足を上げ、ピアノの最低音あたりに豪快かつスーパーマンらしいチョップ?をかましています。そして最後はスーパーマンらしく大声をあげクライマックスを飾ります。ちなみに、この動画はピアノのコンクールの様子だそう。コンクールでこの曲を演奏、まさに常識破りです。

▼Superstar Etude No. 1
https://aaronjaykernis.com/work/superstar-etude-no-1/

マルク=アンドレ・アムラン作曲:「サーカス・ギャロップ」

普段、ピアノを聞かない人でも、一度はどこかで聞いたことがあるかもしれません。賑やかなサーカスの光景を描いたこの作品は、自動演奏ピアノのために書かれています。サーカスにおけるさまざまなシーンが描かれ、華やかなエンディングを飾ろうとしたところ、唐突に終わってしまいます。楽譜を見ると、作曲家により” THE FATAL ACCIDENT(突然のアクシデント)”という記載が。エンディングを飾っているところ、突然の事故によりサーカスが中止となってしまったのでした。ユーモア溢れる作品です。


前半は、作曲方法、後半はピアノ演奏について紹介して、フリーダムなクラシック音楽の世界をご紹介しました。

これからピアノを始めようと考えている方や、すでに手元にピアノをお持ちの方も、新しいことにチャレンジしてみませんか?お手本を正確に再現することだけが、楽しみ方ではありません。ピアノはあなたを独創的な世界へといざなってくれます。

シュルホフ作曲:未来にて(『5つのピトレスク)よりの楽譜(一部)
シュルホフ作曲:未来にて(『5つのピトレスク)より

もちろん、楽器を演奏しない人の楽しみ方も自由です。アフターコロナの生活へと徐々にシフトして、制限付きながら、コンサートやライブイベントも戻ってきています。クラシック音楽のコンサートへ出掛けたり、ストリーミングのライブ配信を見たり、YouTubeで興味がある演奏をチェックしたり、現代ならではの新しいスタイルで自由なクラシック音楽の世界を楽しみましょう。

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伊風太欧
伊風太欧
ITと音楽をやっている人
ある日、全くITとは関係のない業界からIT業界に飛びました。現在はお客様にヒアリングを実施し課題の解決、業務の分析や定義といったお仕事に従事しています。毎日、音楽と業務分析のことばかりを考えています。最近はまっているゲームはDetroit: Become Human。
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