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働き方

TSMC工場建設に沸く73万人都市 熊本の魅力と課題についての考察

リプリパ編集部

2023年11月も下旬に入り、そろそろ1年のまとめニュースが散見されるようになってきました。日経トレンディ「2023年ヒット商品」ランキングによれば、第1位はこれ以外にあり得ない「ChatGPT」でした。

ChatGPTを始めとするさまざまな生成AIに不可欠なのが、パソコンやスマートフォンの心臓部である半導体です。日本では、北海道千歳市に進出したRapidus(ラピダス)と、熊本県菊陽町に工場が完成間近なTSMCが、産業界を中心に話題となりました。今回は、BlueMemeが新たにオフィスの開設を進めている熊本市について、その現状や課題を紹介します。

なお、エンジニア職を始めとした、詳しい募集はこちらから。ご応募お待ちしています。

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TSMC・ソニーの合弁による半導体製造工場という熊本の特需

2年前の2021年10月、世界最大の半導体生産受託会社であるTSMCとソニーグループが、熊本市の東側に位置する菊陽町に半導体の新工場を共同建設する計画が報道され、期待が一気に高まりました。日本政府がこのプロジェクトに巨額の補助金を拠出していることもあり、2024年夏の稼働に向けて、大規模な雇用創出や消費増加、定住人口の流入、関連企業やサプライヤーの誘致、学術機関での研究開発や連携強化など、熊本市とその周辺地域に大きな経済効果をもたらすと見られています。

さらに周辺地域では、すでにソニーグループが新工場を視野に用地を取得し、TSMCの第2工場建設が、熊本県内に第3工場まで検討されている状況です。道路の拡張や新設、住宅の建設、鉄道の新駅構想や空港の整備案も浮上するなど、熊本では「半導体城下町」の特需に湧いています。工場の食堂で働く人の給与が、地方のITエンジニア職よりも高いことが、一時期大きな話題になったほどです。

コロナ禍やウクライナ戦争で世界的な半導体不足が懸念されていた中、怒濤の生成AIブームにより、世界的なチップの奪い合いが起きています。現在、最先端の半導体は、微細化・高性能化が進み3nm/2nmとなっています。一方、熊本に建設される第1工場は予定で、12/16 nmプロセスと22/28 nmプロセス、また第2工場では6 nmプロセス、また第2工場では6 nm、第3工場では3 nmプロセスの生産が予定されています。

比較的成熟した「枯れた技術」での生産拠点として熊本が選ばれた背景には、最先端だろうが数世代前だろうが、とにかく全てのチップが不足している需給バランスや、台湾の地政学的・政治的リスクなど、複数の要因が関係しています。

熊本の地元経済からの期待が高まる一方で、さまざまな課題も指摘さています。人材の確保と育成、地域の雇用創出と格差、発電施設と送電網の整備、持続可能な水資源の使い方、住宅や道路など生活インフラの整備のように、懸念材料もあります。しかし、元々「シリコンアイランド」として知られる九州の中核都市に巡って来たまたとないチャンスに、人々の期待は大きく熱気はまだまだ冷めません。

ワークライフバランスの取れた政令指定都市として

熊本市は、2023年(令和5年)1月1日時点の人口総数は、731,476人と3年前に比較して微減でした。ちなみに、北部九州の主要都市で見ると、福岡市が15,210人(令和4年中)と全国で2位の増加を示していた一方、北九州市は7,190人(同)と全国1位の減少と、はっきりした強弱があります。元々、九州・中国地方の就労・就学人口の一部は、東京や大阪などの大都市圏に出て行く代わりに、福岡市を選択する傾向があります。高速道路や九州新幹線の影響もあり、いわゆる「ストロー効果」として、労働生産人口が福岡市へ吸い上げられる地方一極集中が進んでいる結果だと思われます。熊本市は大きな変動はないものの、前述したTSMCの工場建設で人口増加が期待されています。

統計ダッシュボード – 熊本市のレーダーチャート - 総務省統計局
統計ダッシュボード – 熊本市のレーダーチャート – 総務省統計局
https://dashboard.e-stat.go.jp/radarChart?screenCode=00560&regionCode=43100

コンパクトシティー化と、子育て世代の流出入

熊本市は、富山市と並んでコンパクトシティーとして、よく名前が挙がります。人口集中地区に住む人口の割合である「集住率」が上がることで、公共インフラの整備や行政サービスが効率化できると期待されています。熊本市は2020年時点で集住率の10年間上昇幅が+1.9ポイントでした。

子育て世代とされる30~40歳代の流出入は、2021年時点で転入超過数は448人、率で0.24%と、人口減の中にあってほぼ現状維持でした。他の都市部への人口一極集中という強い影響は見られません。

地図で見るコンパクトシティー化と子育て世代の流出入– 熊本市
地図で見るコンパクトシティー化 – 熊本市
地図で見るコンパクトシティー化と子育て世代の流出入– 熊本市
地図で見るコンパクトシティー化と子育て世代の流出入– 熊本市
出典:ふるさとクリック:日本経済新聞
https://vdata.nikkei.com/newsgraphics/regional-regeneration/population-density-map/
https://vdata.nikkei.com/newsgraphics/regional-regeneration/population-transfer-map/

市区町村魅力度ランキングは過去最高の39位に上昇

民間シンクタンク「ブランド総合研究所」の調査によれば、熊本市の魅力度が39位と過去最高に上昇しました。熊本地震からの熊本城天守閣の復興や、アフターコロナのインバウンド需要の回復、海や山という大自然へのアクセスなど、いろいろなプラス要因がありそうです。

プラス要因の一つとして、熊本市の医師・看護師数は非常に多く、一般病床や療養病床も豊富です。最寄りの分娩取扱医療機関(病院と有床診療所)への運転時間も、概ね15分以下。慢性期医療や在宅ケア施設にも、かなり余裕があるようです。ただ、アフターコロナの現在の環境でどのように変化しているかは、気になるところです。

▼地域の医療提供体制の現状-都道府県別・二次医療圏別データ集- (2020年4月第8版) APPENDIX更新(2021年1月) | 日本医師会総合政策研究機構https://www.jmari.med.or.jp/result/working/post-266/

熊本市の長所や期待と、短所や懸念

最後に、熊本市の主な現状や課題を簡単にまとめると、以下のとおりです。今回はこのうち、ポジティブな面を中心に見てみましたが、もちろんネガティブな懸念材料もあります。長所と短所のトレードオフになっている点もあれば、熊本市ならではの環境もある一方、地方の中核都市であればどこでも直面している課題もあります。

長所や期待

  • 手頃な都市規模:約73万人の政令指定都市であり、北部九州のハブ都市である福岡市へのアクセスも良好。
  • 自然の美しさ:自然と歴史遺産に恵まれた美しい景観があり、住むにも訪れるにも快適な都市である。
  • 純粋な地下水:人口50万人以上の都市でありながら、世界的にも珍しい純粋な地下水に依存している。
  • 経済発展:TSMCとソニーの合弁会社による大規模な工場の設立により、大きな経済成長が期待される。

短所や懸念

  • 人口減少:多くの地方都市と同様に、労働人口生産の減少や若い世代の都市部への流出が社会問題に。
  • 雇用と賃金:人手不足にもかかわらず、就業できる仕事が限られ、最低賃金や給与がなかなか上昇しない。
  • 交通渋滞:企業誘致は渋滞をより悪化させるが、郊外は車が生活に欠かせず、公共交通機関の利用も低調。
  • 災害復興:熊本地震や水害、新型コロナウイルスなど、避けられない災害が重なり、復興が重い負担に。


次回は、後者の短所や懸念にスポットを当てながら、IT x 地方都市での新しいワークスタイルやワークライフバランスについても考えてみます。

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