働き方と仕事術

分析と改善で健康も生産性もUP!活動量計を使ったプログラム事例

リプリパ編集部

個人でも使われるウェアラブル・デバイスが、仕事にも使われている例をご存じですか?

スマートデバイスやモバイルアプリ、AIを活用することで、従業員のパフォーマンスが可視化されます。フィットネスのトレーナーのような適切なフィードバックにより、自主的な健康増進や改善意識が促進され、働き過ぎの防止やメンタルヘルスの安定につながります。さらに、仕事の生産性向上やチーム内コミュニケーション、医療費の削減にも貢献しています。

これも、効果的でポジティブなマイクロマネージメントの例。そんな国内外の著名な例を見てみましょう。前回までの記事もどうぞお忘れなく。

フィットネスや歩数、睡眠管理は、体づくりの基礎!

デスクワーカーの皆さん、定期的に運動していますか?

現代人は、どうしても椅子に座ってディスプレイを見る時間が長くなりがち。マイクロマネージメントの悪しき例として、パソコンのキーストロークやマウスの動きの追跡、アプリケーションの起動時間の計測、Webブラウザーで表示しているURLの記録などが知られています。コロナ禍での強引なリモートワーク化では、特に顕著でした。

その一方で、机からほとんど動かない人に適度に注意を表示するスマートウォッチなどの機能は、ロコモティブ・シンドローム(運動器の障害で移動機能が低下した状態、いわゆる生活習慣病)や、ピントフリーズによる疲れ目の回避に有効です。

スマートフォンでも、モーションセンサーや位置情報を使ったアクティビティーに応じて、適度な運動や休憩を促すアプリがあります。歩数の記録や快眠度の分析、マインドフルネスの向上、夜はソーシャル系のアプリを起動できなくするブロッカーなども、広く健康管理に役立っています。これらは、適切なマネージメントです。

これらの個人の運動や健康管理に使われているのと同じような仕組みが、従業員の健康管理プログラムとして、いろいろな企業で実施されています。

企業が導入する健康増進プログラムの特徴

IBMやSamsung、J&J、アクセンチュア、NTT、ロート製薬など、名だたる企業が、ウェアラブル・デバイスを活用した健康増進プログラムを実施しています。

これらの健康増進プログラムには、大まかに以下のような共通点や特徴があります。

  • 使用デバイス:Fitbit、Pixel Watch、Garmin、Apple Watchなどの活動量計(アクティビティー・トラッカー)やスマートウォッチ。
  • 収集される情報:歩数や移動距離、睡眠、負荷レベル、ストレスなど、従業員の健康指標。
  • 企業データに統合:収集されたデータは、企業の健康管理プラットフォームに統合されて分析。
  • データの透明性:従業員側にも、リアルタイムのデータと健康指導へのアクセスを提供。
  • インセンティブあり:特定の目標を達成した人や成績優秀者には、保険料の割引や健康関連の報酬、ギフトカード、ボーナスなどを提供。
  • 適度な競争心を煽る仕掛け:ソロまたはチームで競争し合う、健康チャレンジ・コンテストを開催。ゲーミフィケーションによる演出効果。グローバル企業では世界規模で実施。
  • 拡張された福利厚生:バーチャル・フィットネスクラスや健康モニタリング、パーソナライズされたコーチング、睡眠改善プログラムなどに役立てられるケースも。保険加入者の健康管理や健康リテラシーの向上を目指す事業ともリンク。

これらの事例は、従業員の健康意識の向上や生活習慣の改善を促進し、企業の生産性向上や医療費削減にも寄与しています。ウェアラブル・デバイスを活用することで、従業員は日常生活の中でシームレスに、自身の健康状態をリアルタイムで把握。企業は、集約されたデータを基に、効果的な健康支援策を講じられます。

注目すべきは、マイクロマネージメントだからといって健康管理を強制したり、過度に危機感を煽ってはいない点。むしろ、個人の仕事をエンパワーしたり、楽しさやインセンティブとしての「実利」がセットになっています。細かなデータがリアルタイムに把握されることと引き換えに、具体的かつ持続的なサポートやアドバイスが得られるように設計されています。

人材確保や新たなビジネスチャンスにも

参加者も納得できるメリットと透明性、具体的なサポートにより、結果として仕事の生産性の向上にもつながります。それが、個人の健康促進だけでなく、チームワークや企業の持続的な成長に寄与する有効な手段だと、前述の事例は示しています。 

また、従業員の健康増進は、人材確保・育成の点からも非常に重要です。個人を大切にする仕組みがある働きやすい企業であることは、人の採用にとって一つのアピールポイント。前回の記事でも触れたように、プライベートも充実させたいZ世代にとっては特に魅力的です。

また、折角採用した貴重な人材を大切に育て、企業の成長に貢献し続けてもらうためにも、従業員の肉体的・精神的な健康管理は重要なテーマ。トータルで見れば、採用・教育コストを抑えることにも貢献します。

このことは、従業員のパーソナルデータのセキュアな管理や生命保険会社との連携などが、一部の企業にとっては、新しいビジネスチャンスにもなっていることが証明しています。

AIによるマイクロマネージメントの変化

さらに、AI技術の発展により、健康管理や仕事でのマネージメント手法も変化しています。

  • AIによるモニタリングの自動化:AIが従業員の行動や業務データを一次分析し、異常を検知
  • 管理者側の負担低減:AIが一次処理した結果を人間に引き継ぎ。必要に応じて、ミーティングや1on1の面談へ
  • AIによるパフォーマンス評価:定量データに基づいた評価が可能になり、主観的な評価のバイアスが減少
  • チャットボットやAIアシスタントの活用:上司が細かく指示を出す代わりに、AIが業務のアドバイスを提供
  • メンタルヘルスのモニタリング:AIが従業員のストレス状態を分析し、適切なサポートを提案
  • カスタムアプリ開発:自社システムに連動するカスタムアプリのコーディングを、AIが支援

企業のマイクロマネージメントはより精密化し、業務の可視化や効率化が進んでいます。一方で、相変わらず過剰な管理は、従業員のストレスや創造性の低下を招くリスクを抱えています。パラノイアのような「コントロール依存」状態にあるのが個人の場合もあれば、組織がそれを望んでいる場合もあり、改善は一朝一夕には進みません。

何の目的のために、どんなデータを取得するのか?逆に、どんな状況では監視をしないのか?許諾と拒否は、どのように判断されるのか?テクノロジーを適切に活用し、従業員の自由度と業務効率のバランスを取りながらビジネスのゴールを達成することが、ますます求められています。


御社で取り組まれていたり、個人で意識している健康増進の仕組みはありますか?ぜひ、コメント欄でお聞かせください。ソーシャルメディアでの言及も大歓迎です。

さて、いくらメリットがあるといっても、やはりマイクロマネージメントに抵抗がある人にとっては、ウェアラブル・デバイスは「首輪」を着けられるようなもの。パーソナライズした適切なサポートを提供するには、具体的かつ瞬時に状態を把握する必要があります。管理・統制と支援・伴走をどのようなバランスで共存させるかは、企業文化次第です。

また、細かなマネージメントの対象は人間だけでなく、モノや環境に対しても非常に効果的です。それが、モノのインターネットIoT。遠隔地や計画中の環境をそのままデジタル空間に再現するデジタルツイン(電子化・仮想化された双子)も、ますます精度が向上しています。センサーとAIによって、製造や物流、エネルギー、医療などの現場を効果的にサポートする仕組みは、ビジネス環境を大きく変えています。次回もお楽しみに!

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