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社会

物語で人を動かそう!ナラティブがビジネスにも重要な理由とは?

kotobato

日々、膨大な情報に溢れ、常に効率や競争、比較に晒されている現代。B2BかB2Cかに関わらず、企業がステークホルダーとつながり、良好な関係を築いて目標を達成するには、もはや単に事実や数字を提示するだけでは十分ではありません。スピードや件数、金額、比率などのスペックやロジックは、ビジネスでは非常に重要ですが、それだけでは人は動きません。

そこで重要な要素が、物語とそれを語る力です。ある程度一般に知られている「ストーリーテリング」に加えて、2010年代半ばから「ナラティブ」 という言葉や概念が提唱され、日本でも2020年以降、広く知られるようになりました。これらは夢物語のような付加価値ではなく、現代のビジネスにとって不可欠なツールの一つになっています。このナラティブについて、複数回にわたって考えてみましょう。

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ストーリーテリングとナラティブの違いとは?

物語に関係する単語として、まずストーリーテリングとナラティブについて整理しておきましょう。両者の境界線は曖昧になりがちですが、そのニュアンスを理解すれば、それぞれの長所をより効果的に活用できます。また、両者を組み合わせたり使い分けることで、人々の注目を集めて感情を呼び起こし、共有体験を生み出すさまざまなテクニックによって、物語に新たな命が吹き込まれます。

ストーリーテリングとは、特定の人物や組織、ブランドが主人公として語られる、一方向・自己完結型の物語のことです。過去から現在までで、終わりが完結します。『昔々あるところに…』の昔話は、まさにこのストーリーテリングとしての物語です。

一方のナラティブとは、一人ひとりが主人公となって自由に語られる、双方向・対話型の物語のことです。変化し続け、終わりがなく、未来をも含みます。今、ビジネスでは、従来のストーリーテリングに加えて、このナラティブが非常に注目されています。

ストーリーテリングナラティブ
主人公登場人物や組織、ブランド私やあなた
語り一方向・自己完結型双方向・対話型
舞台企業や業界社会
物語完結していて終わりがある常に変化し続け終わりがない

なぜ、物語がビジネスにとって有効なのか?

一見、ビジネスとは縁遠いイメージがある「物語」、しかもナラティブがなぜ重要なのか?前述の、ストーリーテリングとの違いや特徴を踏まえながら考えてみましょう。

コミュニケーションチャンネルとして

物語は、オーディエンスに合わせた優先順位や粒度、表現を工夫することで、複雑な情報も明確かつ簡潔に伝えられます。記憶に残る体験を作り上げたり、具体的な行動を促したりする場合に威力を発揮します。客観的な事実やデータ、記録を一つの流れに沿って客観的・中立的に示すことも可能です。汎用性が高く、報告書やプレゼンテーションなど、さまざまな目的に使用できます。

一方、ナラティブは、その人自身の言葉遣いや用語、表現によって、特定の視点やバイアスでメッセージを形成し、主観が挿入されます。ストーリーテリングほど十分に練られ構造化されていなくても、情報の受け手が新たな発信者となることで、透明性と信頼性が高まり、聴衆の行動を喚起します。

オーディエンスの心に訴え掛ける感情的つながり

ファクトは人の頭に語り掛けますが、物語は心に語り掛けます。感情的・魅力的なテクニックを使ってオーディエンスの感情を引き出し、記憶に残るインパクトのある体験を生み出します。挫折と成功、危機と安心、憎しみと愛情によって織り上げられた感情的なつながりは、信頼や忠誠心を育み、最終的には聴衆の行動へとつながります。

語り手→聞き手の関係が固定されるストーリーテリングに対して、自分も新たな語り手となるナラティブは、物語をより自分事化することで、語り手の技術を越えた内なる感情を刺激します。

ブランドアイデンティティーと差別化

自社のブランドを一つの物語として語ることで、自社の価値観やミッション、ビジョンを、ターゲットとなるオーディエンスに示せます。自社ブランドへの共感を形成することで、競合他社との違いを明確に示し、ユニークで本物の存在として位置づけられます。ただし、説得力のある物語は際立つものの、ストーリーテリングに頼るとユーザーを感情的に操作したり、非現実的な期待を抱かせる危険性があります。ユーザーも語り手にする冷静なナラティブは、独自のプロセスとビジョンを提示できます。

マーケティングと営業活動の強化

スペック訴求で売り込もうとしている手法と、世界観を共有しているスタイルでは、大きな差があります。優れたプレゼンテーションには、必ず魅力的なストーリーが含まれているもの。物語は、注目を集め、潜在顧客を惹きつけ、リード(見込み客)を売上につなげる一つの方法です。また、顧客のリアルな課題や願望を主体にした、ユーザー中心のナラティブを作ることは、顧客の心に深く響き、提案をより受け入れやすくする下地を作ります。

従業員のエンゲージメントも促進

物語は、外部だけに向けたものではありません。社内コミュニケーションの強力なツールとなり、社員のモチベーションを高め、鼓舞することにも効果を発揮します。会社のストーリーや個々のチームの努力、サクセスストーリーを共有することで、士気が高まります。チームとしてのコラボレーションが促進されれば、業績を向上させることもできます。B2Cの場合は特に、従業員やその家族が、新たなナラティブの語り手になる可能性もあるでしょう。

社会的影響と支持のエンパワー

メッセージ性の強い物語は、自社のビジネスだけでなく社会に変化をもたらし、人々の意識を刺激して行動をエンパワーします。企業の物語が、企業の社会的責任への取り組みにつながることで、志を同じくする顧客やステークホルダーを惹きつけ、社会にプラスの影響を与えていきます。

『昔々あるところに…』物語のいろいろなスタイル

テーマを深く掘り下げていく前に、「物語」そのものを定義しておきましょう。物語とは、一連の関連した出来事や経験を、聴衆や観客を引き込み、感情移入させるような方法で説明した話です。子供向けの絵本や昔話から、小説、演劇、映画など、全て物語の形態です。

さまざまな表現型式

伝承文学や祭が、古くから人々の生活に根ざしてきたように、物語は書き言葉だけでなく、まさに語りとしての話し言葉や音楽、ダンス、映像などでも表現できます。迫力あるライブパフォーマンスを通して語られる魅惑的な物語が、世界中に溢れています。

ストーリーテリングは、完結した物語なので、ビデオやカタログなど、パッケージ化されます。一方、ナラティブは、進行中の物語なので、ソーシャルメディアが最適です。同じYouTubeでも、アーカイブビデオは前者、ライブ配信とコメント、ソーシャルでの引用や拡散は後者が該当します。

リニアとノンリニア

物語は、一般にイメージされるように時系列(リニア、線形)で展開することもあれば、時系列を飛び越える(ノンリニア、非線形)こともあります。ストーリーテリングはリニアで、ナラティブはノンリニアです。

例えば、映画館は、一旦始まったら停止やスキップができないリニアな体験です。一方、Amazon PrimeビデオやNetflix、YouTubeで倍速視聴・スキップするのは、ノンリニアな体験です。テクノロジーの発達は、作り方や演出、再生方法にも大きな影響を与えています。ドラマティックな効果を狙って、フラッシュバックやフラッシュフォワード、タイムワープが使われる映像作品も人気です。ゲームでも、プレイに合わせたマルチエンディングなどがあります。

ノンフィクションとフィクション

ドキュメンタリーや伝記はノンフィクションで、お伽噺やファンタジー、スリラーはフィクションですが、どちらもビジネスで有効です。企業はこれら両方を活用し、理想的なブランドストーリーを作り上げたり、製品やサービスの訴求、実際の顧客の声を共有します。

一つ注意しておきたいのは、物語とはただ空想や事実を語ることではありません。また、フォーカスが当たっている場所や角度、編集には、必ず送り手の意図が反映されている以上、ドキュメンタリーも事実とは限りません。物語の重要な役割とは、聴衆の感情を呼び起こし、想像力をかき立て、時に危機感を煽り、最終的には印象に残る体験へと形作ることです。そして、ここがまさにビジネスに関係している点なのです。

ストーリーテリングはノンフィクションとフィクションの両方が使われる一方、ナラティブは進行形のノンフィクションです。


トークが立て板に水だったり、資料がリッチなことがプレゼンテーションの本質ではないように、魅力的な構成や情感豊かな語りだけが、物語の魅力ではありません。さぁ、物語は始まったばかり!次回は、ナラティブを活用した成功例をいくつかチェックしてみましょう。

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リプリパ編集兼外部ライター
企画制作や広告クリエイティブ畑をずっと彷徨ってきました。狙って作るという点ではライティングもデザインの一つだし、オンラインはリアルの別レイヤーで、効率化は愛すべき無駄を作り出すため。各種ジェネレーティブAIと戯れる日々です。
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