人口減同様に国土のインフラ維持がヤバい―宗像仙人だより 004
テクノロジーについて、ひと言いわずにおけない宗像仙人さん。前回は、ローコード・ノーコードツールを使った、アジャイルなソフトウェア開発手法は、これから必要な手段の一つだという話をしてくれました。つまり、需要なのは、テクノロジーを使って何をすべきか。そんな仙人が、今、一番気になっているのは、老朽化している各種インフラの維持やメンテナンス、新しいインフラへのリプレイスなんだそうです。
国土のインフラの維持管理は待ったなし
今年の梅雨も終盤ですが、またあちこちで被害が出ていますね。降らなければまた深刻な水不足になりますが、とにかく、読者の皆さんやご家族のお住まい・お勤めの地域で、大きな災害が起きていないことを願っています。
やっぱりね、最近一番俺が気になっているのは、日本の国土のこれからよ。
人口減少で地方都市がどんどん縮小して、活力も失われていくからやばいよって話は、ずっといわれてきたんですけどね。
いや、もしかしたら、その人口減より先に深刻な問題として表面化するかもしれんこと。
というと?
いきなりやけど、日本で橋の数っていくつあるか知っとる?
またそんな、Googleの入社試験みたいなこといって。大小、長短あれば、材質とか、車が通れるかどうかもあるし…って一応、考えるふり。
正解は、これ。道路橋で約73万箇所!
こんなの、間違いなく毎日どっかで通ってる場所が含まれてるじゃないですか!そうでなくても物流は、時間外労働の上限規制でモノが運べなくなる、2024年問題も控えてるっていうのに。コンクリート片が落下する事故も、時々聞きますし。
そう、つまり、橋だけじゃなく、高速道路や都道府県道、トンネル、上下水道、ガス管、鉄道なんかをどう管理していくか。
重要なインフラは、デジタルツインで効率的に遠隔チェックされていてほしいですけど。
でも、それがすべてに可能じゃない。とにかく、今から何するにしても、ライフラインをどう維持しつつ、更新していくかが問題なわけだ。
材料の質や製造技術は改善され、ノウハウも伝承されてきてるんだろうとは思ってますけど。しかし、東京都内の古い駅で、古びた壁や柱の傷から雨がダダ漏れしてる様子なんか見ると、びっくりしますよ。
でもさ、やっぱりここでも人がおらん。
あっちもこっちも、人材不足が課題か。しかし、人が足りなかったり検査が難しい設備や場所の一部には、何かセンサーが導入されてんじゃないの?または、最近だとドローンとか。郊外にはトレーニング施設ができたり、資格試験制度や法整備の足並みも揃ってるし。知り合いが資格を取って転職したな。
ところがさ、ドローンで検査したらそれはそれで困るわけよ。
ん?どういうことです?
悪いところが見つかりやすくなっちまう。
え?悪いところが見つかるんだから、いいじゃないですか。リスク管理としては。検査したら悪いところが見つかっちゃうから、見なかったことにしときたいって、健康診断嫌いな人みたい。放置したからって、健康になったりしないのに。
補修して使い続けられるぐらいならまだいいやろうけど、耐用年数を越えそうやったら新しい橋を架けんとならん。何もないところに橋を架けるのと、古い橋を何とかしながら新しい橋を架けるのと、コストはどっちが掛かると思う?
そりゃ、古い橋もメンテする方が別にコストが掛かるでしょ。古い設備を何とか維持しながら、同時に新しい設備も作りつつ、徐々にトランジッションしていくのは面倒。当然、新しい橋だけ作る方がいいでしょ。
やろ?だから、ドローンでちまちま検査するよりは、新しい橋だけ架けた方が楽。
福岡の歓楽街中洲の春吉橋なんて、まさにそれでしたね。交通の流れを止めるわけにいかないから、すぐ横の場所に交通をぐるーっと迂回させる場所を作って。今年の4月に新しい橋が完成して、やっと真っ直ぐ通れるようになりましたけど、7年掛かりの大工事でしたよ。
中洲もしばらく行ってないから、知らん。
もう古い橋はなくて、迂回路だったところは壊さずに、新しい憩いのスペースとして整備する計画らしいです。
古いインフラを監視するのも重要やけど、人材や予算が限られた中で、補修の優先順位を付けんといかんのは新しい課題やからね。
ビジネスに見合ったメリットとコストのバランスは?
ところでインフラでいうと、2022年9月に一部が開業した西九州新幹線どう思います?現時点で、日本最短の新幹線。
本当に必要なのかな?と。
ですよね。博多から武雄温泉まで行って、乗り替えて長崎へ。短縮できる30分に、総額6,197億円の建設費。北海道新幹線やリニアモーターカーも。
鉄道でいえば、国外に目を向けるとさ、東南アジアやアフリカとかいろんな国で新しい鉄道を建設するやろ?
いわゆるグローバルサウスね。他に、中東や中南米も含む、新興国や途上国。
一時期は、日本の新幹線の技術力が高く評価されてたけど、今は中国の圧倒的な経済力・政治力の前に見る影もないじゃん?
確かに。日本の鉄道技術は、高い品質の「正確かつ安全」まで含めたトータルパッケージですからね。ただインフラのハードウェアを作るだけじゃなくて、運行計画や人材教育、メンテナンスなど、ソフトウェアまで提供できるのがアドバンテージになってました。
日本の外交力も辛うじて残っとった。
今は、技術力の面でも、拮抗または追い抜かれてるのかも。ただ、一部の国々では、国土の基礎を支えるインフラを他国に依存し過ぎるリスクに、気付き始めているみたい…。
とにかく、今まで日本は、先進国という肩書きで文明を享受してきていい気になってた。でも、今から人口が減っていく中で、生きてる人たちに負担を割り振れるのか?若い世代に、いろんな負担が全部掛かってくるんやないか?
いろんなインフラの耐用年数がまとめてピークを迎えるって、なぜだか家電が一気にダメになるみたいなもんですね。エアコンと冷蔵庫、洗濯機なんかが、まるでお互いに示し合わせたかのように、立て続けに壊れる怪奇現象。予算には限りがあるんだから、勘弁して!
だから、これらが今からどういう影響を与えるか。いろんなテクノロジーを組み合わせて、自治体や企業、従業員レベルでそれぞれが対応していく必要があるやろね。俺はもう、30年後、50年後を考えると、重力制御や反物質の方に関心があるけど。
一気に、終着駅より先まで突っ走りますか!
形あるモノは壊れる、人が作ったモノは何れ失われるとすれば、橋は落ち、トンネルは崩落し、上下水道も機能しなくなってしまいます。今まで、これを避けられてきたのは、適切な維持管理や人材教育、技術革新が続いてきたから。
しかし、戦後から高度成長期にかけて一気に整備が進んだ道路や橋、トンネル、上下水道などのインフラが耐用年数の目安である50年を迎えつつあります。社会や経済が大きな打撃を受けるのは間違いありません。アップデートは間に合うのか?
次回、宗像仙人さんの話はもうちょっとプライベートな面に向かいます。
この記事の内容は、個人的な見解や感想であり、リープリーパー編集部や運営組織を代表するものではありません。
この記事でインタビューをした方
宗像仙人 / Sennin Munakata
テクノロ爺
量子コンピューターやAI、常温核融合など、テクノロジー全般に関心が尽きない元ITコンサルタント。趣味も幅広く、万年筆やアルコールから、軍事研究、最新アニメ番組のチェックまで。福岡県宗像市のオススメは、沖ノ島と道の駅。
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