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カルチャー

開演迫るIMAGINARC直前!ピアニート公爵たちに緊急インタビュー

リプリパ編集部

IMAGINARC「想像力の音楽」の開演6月4日(火)がいよいよ迫ってきました。IMAGINARCは、2台ピアノのコンサートをメインにした、音楽と小説のアンソロジーです。仙台から福岡、熊本、そして東京の5 Daysへと続く壮大な旅が始まります。そんな中、編曲の最後の仕上げとリハーサルに余念のない、ピアニート公爵こと森下 唯さんとBlueMemeの江崎 昭汰さんに話を聞きました。

「IMAGINARC麻痺」になってしまう出演者、続出!?

―   IMAGINARC開演まで、一週間を切りましたね。森下さんと江崎さんはお二人とも、ますます忙しいみたいですけど、今はどんな段階ですか?

森下:30曲の編曲に追われていましたが、もうすぐ全曲終わるところです。それからプログラム冊子が校了して、ほっとしました。途中、練習したり、リハーサルしたり。先日は、ナクソスジャパンのYouTubeライブに出演しましたが、とにかく最後の編曲を仕上げないといけないので、結構、切羽詰まってます。

【トークライブ】音楽と小説で演出するジャンルレスなコンサート「IMAGINARC 想像力の音楽」の、なにが画期的なのか? – YouTube

江崎:いや、編曲が終わらないって、リアルですよね……ってこんなことを、正直に言っていいものやら(笑)。

―   江崎さんについては、リープリーパーで連載記事を公開しています。読者の皆さんは、ぜひそちらも併せてお読みください。

江崎:はい、ありがとうございます。

江崎:現在、BlueMemeのビジネスアーキテクト(BA)としての仕事は、チームメンバーにかなり助けてもらってます。専門性が必要で他のメンバーに頼みにくい仕事や、地味な目立たない事務作業などに限定させてもらって、今はIMAGINARCの活動に多くのリソースを割かせてもらって、毎日夜まで練習してる状況です。このままだと、IMAGINARCとBlueMeme両方のメンバーから、生卵を投げられてしまうかもしれません(涙)。でも、森下さんは、何のかんの言いながら、スラスラ進んでますよね?

森下:いや、凄く頑張ってますよ!ただ、とにかく量が多くて。厳しい日々が続いていますが、前に進むだけです。

―   お二人とも大変そうですが、他のメンバーの皆さんは順調なんですか?

江崎:結構、苦しんでるみたいです(笑)。

森下:『こんな大変な譜面ばかり来るとは思わなかった』とみんな言ってます(笑)。でも、LINEグループで飛び交うメッセージを見てたら、結構みんな、苦しみながらも楽しんでやってくれているんじゃないかな。

江崎:この間のリハーサルで、「IMAGINARC麻痺」っていう言葉が飛び出したんですよ。

―   IMAGINARC麻痺?

江崎:そう、IMAGINARCでやる楽曲が難しすぎて、他の楽曲を弾いたときに『あれ、こんなに簡単だったっけ?』って思ってしまう、それが「IMAGINARC麻痺」。リストのレ・プレリュードが簡単に思えてしまう(笑)。

―   なるほど…(笑)。

森下:みなさんに苦労をかけてしまって…。

江崎:森下さんの編曲って、元の曲で鳴っている音はすべて拾ってしまおうというという編曲です。でも、だからといって音が多すぎるとかではなく、ピアニスティックな素晴らしい編曲なんですよ。でも、かなり難しい(笑)。ただ、弾けないってことはなく、だから完璧に弾けないと悔しい。楽しいですよ(笑)。

森下:そこは弾き手を信頼しているので!確かに『本当にこれやるの?』みたいな曲がいっぱいありますけど、楽しみながらやってます。こういう機会がないと、プロとしてもここまでの編曲はわざわざやらないので、そういう意味でもありがたいことです。

リモート時代でも、リハーサルは集まってやるしかない

―   参加メンバーの音楽家たちは、全員が、一緒に演奏したことがある方ばかりでもないんですよね?ソーシャルメディアには、Zoom会議の様子らしき写真がアップされてましたけど。

森下:そうですね。江崎さんが先に決めてたピアニストの中に、僕が初対面の方もいます。Zoom会議も、キックオフの時以外は単発でやっただけなので、リハーサルで初めて会った方たちもいます。

―   そのリハーサルについて、テクノロジー的な話をちょっとすると、ネットを通じた音合わせというかセッションって難しいんですよね? 回線速度やデバイス、使うソフトウェアなどの条件でレイテンシー(速度)が変わるので、『せーの!』でやれないんじゃないですか? YAMAHAが、遠隔地のメンバーとリアルタイムに音楽セッションができるサービスSYNCROOM(シンクルーム)を出して、コロナ禍にはかなり使われたとも聞きますけど。

森下:はい。今回のIMAGINARCでは、SYNCROOMのようなサービスでは厳しいので、音合わせは直接現場に集まってじゃないとできません。なので、それぞれが自分の担当するパート練習を家でやって、予定した日時に集まって、同じ空間でリハーサルする感じです。

―   このリハーサルの動画を見て思ったのですが、2台ピアノの音ってけっこう分厚いんですね!

森下:ピアノは1台でオーケストラができると言われるくらいなところ、2台を目一杯に使っていますからね。実際に、コンサートホールで聴くとけっこうな迫力です。今回は照明にも趣向を凝らしているので、単なるコンサートと思って来るとびっくりするかもしれません。ぜひ、会場に足を運んで体験していただきたいですね。

ゲームやアニメ、映画音楽など幅広い曲をピアノアレンジで!

―   ところで森下さん、いや「ピアニート公爵」ですよ。そもそもの話ですけど、なぜそう呼ばれてるんですか?公式サイトとWikipediaにもしっかり書いてはありますけど(笑)、ここで改めてお尋ねしてみます。

森下:その名前、自分で作ったわけじゃなくて、後付けなんですよ。2007年頃、自分がピアノを演奏する様子をニコニコ動画にアップしたら、視聴者から『お前は何者なんだ?』ときて。自己紹介に『ニートです』みたいなことを書いてるのを受けて、『ニートじゃなくて高等遊民だろう!』みたいなコメントが拾われて。『じゃあ、それにちなんだ名前を付けてやろう』という流れで、ユーザーたちに勝手に「ピアニート伯爵」と名付けられました。

江崎:完全に遊ばれてましたよね(笑)。

森下:それから、『ビデオの再生回数が10万回増えるごとに、爵位を上げていこう!』みたいなことを言い出す人が現れて、「伯爵」から「公爵」になりました。さらにもう10万回増えたときに、『もう公爵ではなくて大公にしないと!』とか言われて、一度は「大公」になったんですけど、『いや、爵位がなくなるとやっぱり分かりづらいな』とか言われて、「公爵」に降格されて、結局ここに定着したみたいな謎の流れがあったんです。

―   ふざけたり叩いたりすることもあるけれど、スキルやキャラが認められると自然とコミュニティーが形成され、応援されたり派生形が生まれて拡がっていく。そんな下地は、2ちゃんねるやニコニコで培われたようなものですからね。

森下:そうですね。結果的にそのままドワンゴからCDを出しました。でもその名前での活動をメインにすることに、自分としてはそこまで熱意を見出せていなくて。マイペースでずっとやった結果、スタジオミュージシャンのような演奏家としてのポジションに落ち着きました。でも、そうやっていろいろやってきたおかげで、今回、IMAGINARCで幅広い作品を取り上げる音楽会を企画することにつながったと思っています。

―   ピアノの卓越した才能とジャンルのバラエティーという点で、江崎さんにとって「ピアニート公爵」は最高の人選だったわけですね。

江崎:はい。元々、IMAGINARCでは、奇をてらったような選曲には興味がなかったんです。最初の頃は、アニメやゲーム色が強かったんですけど、基本的に『いろんなジャンルの素晴らしい曲を扱いたいよね』っていう方向性を持っていました。森下さんに入っていただいたことで、実際により深く、より広い選曲になっていると思います。

―   ゲームの演目には、スクウェアエニックスの名作ゲームがたくさんありますね。

森下:そうですね。僕は、YouTubeにあるSQUARE ENIX MUSIC Channelで、FINAL FANTASYやCHRONO TRIGGERなど、ピアノアレンジのシリーズをかなりの割合手掛けているのですが、そうした曲目もプログラムにとりいれてみました。興味がある人はぜひ、ピアノカバーの再生リストで聞いてみてください。

[FF10] Piano Cover: Fight With Seymour [FF35th] – YouTube

[CHRONO TRIGGER] Piano Cover: Corridors of Time – YouTube

素晴らしい先人の叡智をエッセンスとして編曲に取り入れて

―   ゲームやアニメ以外の演目だと、映画『砂の器』の名前が目に入りました。

森下:『砂の器』といえば、加藤 剛のピアノシーンですよね。今回自分が選んだ曲は、ほぼ、これまでの人生で触れてきた作品が中心になっています。

ただ、例えば、世界に知られる伊福部 昭さんの『SF交響ファンタジー』には、『ゴジラ』のテーマだけでなく、伊福部さんが関わってきた映画作品のテーマが多数登場します。そのすべてを人生の折々に鑑賞してきたかといえば、必ずしもそうではないのですが、今回編曲するために、なるべく触れてから臨みました。

―   編曲やリハーサルもあるけど、音楽が使われていたコンテンツにも目を通しておかねば、と。

森下:はい。編曲中、作曲家からは、いい刺激をたくさんいただいています。伊福部さんの他には、例えば『赤毛のアン』の三善 晃さん。アカデミックな作曲の世界でも、群を抜いた天才として名を残している作曲家ですが、その天才性は、親しみやすさを目指した作品でも遺憾なく発揮されています。今回も、素晴らしいスコアを見ながら取り組んだので非常に勉強になりました。

それから、菅野 よう子さん。『∀ガンダム』『アクエリオンEVOL』『カードキャプターさくら』などのアニメや、ゲーム、民族音楽、ブルースまで幅広く活躍していらっしゃる方です。お二人とも、作品の緻密さなど、ものすごいレベルの完成度だなと、編曲しながら改めて驚かされています。

三善 晃: エピターズ[ナクソス・クラシック・キュレーション #365日 Calendar Classic] – YouTube

光栄ゲームミュージック・ワークス~菅野 よう子 コレクション 1993 – YouTube

―   森下さんは編曲メモをnoteに記事として書かれていましたね。

森下:備忘録でもあるんですが、IMAGINARCはいろいろな深さで楽しんでいただける企画だと思っています。深入りするための手掛かりも残しておきたいので、書いてみました。

森下:原曲によっていろんなアプローチの仕方を取るんですけど、そういう意味では、2台ピアノの譜面としても、新たな価値を創造できるんじゃないかと思っています。この辺りを語り始めると結構複雑な話になってくるんですけど、とにかく、今回は改めて僕もすごい物をアレンジしてますよ。ご期待ください!

音楽だけでなく、小説によっても生み出される世界観との相乗効果

―   今回のIMAGINARCでは、作曲家5人に新曲を、小説家11人に新作短編を書きおろしてもらうとか。なかなか他に類を見ない企画ではないでしょうか?

森下:そうですね。既存の、さまざまな音楽をフラットに扱うときに、ジャンル以外の新しい軸として「詩的なテーマ」で集めることを考えました。それが東京公演の5夜に割り振られていて、「天命」「魔法の庭」「異形たちの輪舞曲」「都市の墓標」「懐かしい星」の5つです。その5テーマにそって既存の曲を集めるとともに、そのテーマに寄せて、メンバーには新曲と、新作短編を書いていただきました。

森下:小説の世界には、アンソロジーという、いろんな作家の作品を集めた形態の本が存在します。要はそのアンソロジーを、音楽と文学と、ジャンルを超えてやってしまおうというのが、このIMAGINARCという企画だと思っていただければいいのかなと。作曲家も小説家も、そうそうたる面子が揃っていますので、かなり楽しめると思いますよ。

―   小説の方は森下さんの監修のようですが、音楽サイドからのテーマや世界観を伝えて自由に書いてもらってるのでしょうか?逆に、書き手から提案されたりとかは?

森下:テーマの言葉だけをいくつか僕から渡して、『ここから発想して書いてください』と取り掛かってもらいました。でも皆さん、今回音楽の演奏会だからっていうことで、演奏する曲目リストに上がってる曲を聞いたり、編曲の原作を見てくれたようです。いろんなことをやってくださって、その結果、何となく緩やかに世界観や親和性が生まれてるように感じています。文学と音楽、それぞれの作り手の捉え方があるんですけど、その違いを見るのも一つの面白さにつながっていると思います。

―   編曲メンバーから上がってきた譜面は、お二人でチェックして、場合によっては、編集で何往復かするんでしょうか?

森下:基本はそうしてますね。実際、いくつか注文をつけて戻した曲もあります。小説に関しては僕がやっているんですけど、譜面に関しては江崎さんと僕で共同でやってます。どちらも一応トータルで見て、注文つけるところはつけて、ちゃんとプロデュースという形で完成させていきます。

江崎:そして、8回の全公演で演奏するのは、私たち2人だけです。初演6月4日(火)の仙台に関しては、前日に現地入りしてリハーサルをみっちり夜までやる予定になっています。

仙台から福岡、熊本、そして東京へ…誰でも楽しめるIMAGINARC

―   仙台と福岡、熊本はそれぞれ出演者と演目が異なり、東京は、5夜連続公演ですよね?これって、どこか一日だけ参加しても十分楽しめる内容なんでしょうか?

森下:もちろんです。自分の好きな公演だけでも面白く体験してもらえると思います。ただ、IMAGINARCは、それぞれテーマによって毎日ちょっとずつ色合いが違います。「音楽と小説のアンソロジー」って銘打ってるので、会場で入手できる小説を手に、聞き比べ・読み比べてもらえるとなおオススメです。

江崎:ピアノ曲やクラシック音楽だけじゃなく、物語やゲーム、アニメの世界観みたいなものが好きなタイプの方なら、みんな楽しめると思います。それから、『普段は音楽とか全然わからないけど、小説を読むのが好き』という方とか、いろいろなタイプの方に楽しんでもらえると思っています。

―   練習や準備も大変でしょうが、どうぞ体調管理などに気をつけて臨んでくださいね。

森下:ありがとうございます。まあ、何とかかんとかやってくって感じです。

江崎:風邪なんて引けないですよ。引いても黙っときます(笑)。

森下:ダメですよ。リハーサル現場にリスクを持ち込まないで!

江崎:全員倒れたりしたら、みんなにめっちゃ怒られる(涙)。無理をするのは、すべてが終わった後だけにしておきます。

―   そこは、『ひくのは、ピアノだけにしておいてください』ぐらいベタなことを言って締めさせてください(笑)。

江崎:SQUARE ENIX MUSIC Channelの森下さんの演奏を紹介しましたが、IMAGINARCではよりパワーアップした、しかも生演奏です。そもそも、ゲームに使われてる曲のピアノアレンジで、森下さんと同じぐらいかそれ以上にいろいろやってる人は、いないです。アレンジだけとか演奏だけなら、全くいないわけではないでしょうけど、敢えてピアノアレンジで、っていうのは他にいない。期待してもらっていいと思います。

森下:ありがとうございます。自分でもけっこう優れたアレンジができたと思っているので、他の人にも弾いてもらいたい気持ちがあって、今回はそれが叶えられるので嬉しいです。

―   素晴らしい! これからのリハーサルと、もちろん本番も楽しみにしています!

この記事でインタビューをした方

えざき しょうた 
ビジネス・アーキテクト/ピアニスト/楽譜蒐集家
5年間のベルギー留学が終わり、東京と千葉で約1年半の放浪の末にあることをきっかけにBlueMemeに入社。平日はITのことばかり、土日は音楽のことばかり考えています。

この記事でインタビューをした方

森下 唯 
ピアニスト・作編曲家
クラシック分野を中心に演奏活動をするほか、スタジオ・ミュージシャンとしても多くのレコーディングに参加。ほか、映像作品等への楽曲提供や文筆まで幅広く手がけている。ソロ・アルバムに「アルカン ピアノ・コレクション」(ALM RECORDS)シリーズなど。ゲーム、アニメの公式アレンジアルバム等で多くの編曲、演奏を担当し、動画サイトでの活動から生まれた「ピアニート公爵」名義でクレジットされることも。東京藝術大学卒業、同大学大学院修了。調布国際音楽祭アソシエイト・プロデューサー。東京藝術大学非常勤講師(指揮科演奏研究員)。

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