複数のAIを接続するMCPとは?AI時代のUSB-Cとして注目される理由

生成AIの普及が進む中、注目されているのがMCPです。これは複数のAIやコンポーネントを相互接続できる共通プロトコルで、「AI時代のUSB-C」とも例えられるほどに、次世代の標準インターフェースとして期待されています。
一方、サービス間の接続といえばAPIが広く知られています。では、MCPは何を目的に生まれ、APIとどう違うのでしょうか?今回の記事では、その基本と注目される背景を解説します。
「AI時代のUSB-C」MCPとは何か?
MCP (Model Component Protocol) は、さまざまなAIモデルやエージェント同士を標準仕様で接続するための、共通プロトコルです。統一された方法なので簡単に相互に連携でき、個別にカスタマイズする必要がありません。プラットフォームの垣根を越えて、ChatGPTやClaude、Geminiなどの再利用性と相互運用性を高められます。自然言語処理のLLM(大規模言語モデル)や画像認識モデル、音声生成エンジンなど、異なるAIモジュールを自由に接続することで、複雑なタスクもより効率的に処理できます。
この利便性から、MCPは「AI時代のUSB-C」に例えられています。以下の記事の中で使われている図が概念として非常に分かりやすいため、いろいろなサイトやソーシャルメディアで引用されています。
出典:What is Model Context Protocol (MCP)? How it simplifies AI integrations compared to APIs | AI Agents That Work – Norah Klintberg Sakal
https://norahsakal.com/blog/mcp-vs-api-model-context-protocol-explained/
MCPの主な特徴
- 共通プロトコル:異なるAIモデルやツール間のやりとりを標準化することで、簡単に接続可能
- 再利用可能な構造:一度開発したモデルを、他のアプリケーションでもそのまま流用できる
- モジュール化:AIモデルやツールを部品として連携・組み合わせるアーキテクチャーに最適
- 標準メッセージ形式:コンテキスト(入力)とアウトプット(出力)のやり取りが一貫した設計
- 柔軟な拡張性:単一モデルだけでなく、エージェント間連携(A2A)にもスムーズに適用
MCPは2024年1月、Anthropic社がClaude用に構想を発表したことを手始めに注目を集め始めました。その後、OpenAIやLangChain(次回の記事で解説)などもMCPのような設計を取り入れ、新たな技術トレンドとして、同年春~夏にかけて広がりました。 2025年5月末時点で、1万3,000件以上のさまざまなMCPがポータルサイトに登録されています。
MCPが求められた背景
パソコンやスマートフォン、ディスプレイ、モバイルバッテリーなど、さまざまなデバイスを1本のケーブルでつなげるUSB-Cは、ITデバイスを接続するデファクト・スタンダードになりました。異なるメーカー・異なる機器間でも簡単にデータや電力をやり取りできます。
同様にMCPは、複数のAIツールやモデルを標準的に接続できる仕組みです。
そもそも、MCPが求められる背景としては、以下のような課題や制限がありました。
- モデルやエージェントの数が増えるにつれ、統合コストが増大しつつあった。
- LangChainやAutoGenのように、モデル間連携が前提となる開発が主流になっていった。
- マルチモーダルAI(テキスト+画像+音声など)の普及で、データ構造が複雑化していた。
- REST API(Webシステムを外部から利用するための規約)では、リアルタイム性や柔軟性に限界があった。
これらを解決するソリューションとして、「AI同士の共通言語」であり、開発の再利用性とスピードを飛躍的に高める設計思想が必要でした。その結果、「最初から連携を想定した標準仕様」である、MCPの人気が高まるに至りました。
MCPとAPIはどう違う?比較して見えてくる特徴
MCPとある部分で似ているのが、API(Application Programming Interface)です。APIは、Webサービスやアプリケーション間を接続する標準的なインターフェースとして広く使われています。
現代のビジネスは、APIなしでは成立しないといってもいいでしょう。例えば、オンライン会議をZoomで作成し、Googleカレンダーに登録し、さらにSlackで通知するような便利な連携は一般に使われています。ユーザーが意識しているかどうかにかかわらず、これらの連携はAPIによって実現されています。
しかし、APIは基本的に「サービス同士の個別接続」を前提としています。そのため、接続先ごとに専用のエンドポイントと仕様が必要であり、規模が大きくなるとメンテナンスが煩雑になる弱点を抱えています。
MCPとAPIの違い
MCPを「USB-C規格」に例えるなら、APIは「それぞれのデバイス専用の変換アダプター」のような存在です。
確かに、複数のデバイス同士を相互に接続できる仕組みが、便利なことに違いはありません。ただ、APIは接続先ごとに最適なアダプターや専用ケーブルを予め用意しておく必要があるようなものなので、その種類だけ仕様や管理が増えていきます。AIが高度化・多様化するにつれ、APIだけでは限界が見えてきたのも事実です。
一方のMCPは、「どんな機器にもケーブル1本でつながる世界」を目指した仕組みです。
項目 | MCP | API |
目的 | AIモデルやツール間の共通仕様連携 | サービスやアプリ間の連携 |
構造 | 独自定義のプロトコル構造 | HTTP/JSONなどのREST仕様 |
運用 | 自前またはMCP準拠サーバーの構築が必要 | ベンダーが提供するAPIエンドポイント使用 |
拡張性 | 統一仕様により複数モデルと自由に連携可能 | 接続先ごとに個別対応が必要 |
MCP導入の注意点とサーバーの課題
MCPは、ユーザー側でサーバーを構築すれば簡単に接続できるのがアドバンテージです。サービス提供者が仕様を用意する必要があるAPIよりも、柔軟性という点で優れています。
その一方で、実は、MCPがUSB-Cに例えられる点は、便利な点だけではありません。USBという規格の詳細な仕様が乱立してわかりにくかったり、信頼性に課題がある製品が一部にある状況も、MCPに通じています。APIが公式な仕組みなのと違い、MCPはサーバーの準備や、運用の安定性・信頼性、セキュリティー設計などの負担が発生します。
現在のMCPの仕様では、AIシステムが機密性の高い企業データにアクセスする際の強固な認証が欠けていることや、不正なプロンプト・インジェクション攻撃を受けやすくなる可能性、複数のMCPサーバーが同じAIエージェントに接続する場合、悪意のあるサーバーが信頼できるサーバーへの呼び出しを傍受するツール・シャドウイングのリスクなどがあります。
これらのリスクを回避するには、適切な権限を付与する厳格な認証を導入して、機密性の高い業務の承認には必ず人間が関わり、MCPを通じたAIのアクションを包括的にモニタリングすることが重要だと、専門家は指摘しています。
MCPの注意点
- 連携品質に直結するサーバーの信頼性やレスポンス速度
- セキュリティーリスク(データ漏洩、なりすましなど)への対策
- エラー処理やバージョン管理の標準化
MCPは、さまざまな課題を抱えながらも普及が進んでいます。その一方で、安易な導入に警鐘を鳴らすプロフェッショナルがいるもの事実です。
Anthropicからは、MCPのトレーニングコンテンツも公開されました。今後、AI大手各社が、公式なMCP対応の接続口であるエンドポイントを整備することによって、改善されていくことが期待されています。
さて、MCPに関連する技術として「LangChain」や「A2A(Agent-to-Agent)」という構造的概念も存在します。これらを理解することで、MCPの真価がさらに見えてくるので、次回の記事で触れてみましょう。
MCPについて理解し、APIなどと組み合わせて実装できるエンジニアは、今後間違いなくシステム開発の中心的な存在となるはず。それを、ビジネスのソリューションとして提案できることも重要です。
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