日常生活に欠かせないIoTの仕組みと発展の背景、エッジAIへの期待
近年、AIは急速に発展しています。AIとは切っても切れない、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)技術や5G技術の高度化に伴い、日常のあらゆるモノがインターネットに接続され、人々がより便利な生活を送れるようになっています。今回は、そんなAI時代のIoTについて紹介します。
IoTと日常生活のつながり
IoTはここ数年で大きく進化し、仕事から家庭まで日常生活に広く浸透しています。代表的な応用例としては、以下のようなものがあります。
- スマートホーム:家庭に設置された機器で、照明や空調、掃除、防犯などを操作できます。
- スマートファクトリー:工場での品質検査やロボット制御、生産ラインの最適化などに活用されています。
- インテリジェント交通:交通システムにおいて、車両検知や交通量管理、自律走行制御などに利用されています。
- 医療:病理診断や手術支援、遠隔監視などの医療システムに活用されています。
- セキュリティー:顔認証や監視分析などのセキュリティーシステムで利用されています。
IoTの主要コンポーネントと仕組み
IoTの主要コンポーネントと処理のフローは、以下に示すとおりです。
- まず、センサーとデバイスがデータを収集
- 収集されたデータは、さまざまな接続技術を通じてクラウドに送信される
- クラウドでは、AIなどデータを分析
- その分析結果に基づいて、アクチュエーション(動作や状態の変更)処理
- ユーザーインターフェースを通じて、ユーザーは情報を確認したり、システムを制御
- センサーとデバイスにフィードバックされ、サイクルが完了
IoT技術の急速な発展
近年の急速なIoTの発展は、主に3つの技術が支えています。
1990年代、AIの研究者たちは機械学習アルゴリズムを組み込みシステムやモバイル機器に適用し始めました。しかし、当時の無線ネットワークやハードウェア技術は、スマートデバイスでの演算をサポートするには、まだ成熟していませんでした。それ以外にも、さまざまな理由から、IoT技術の開発は遅れていました。
近年、コンピューターの演算能力やストレージのメモリ増加、クラウドコンピューティングの進化により、スマートデバイスの発展が進んでいます。これに主に貢献したのは、以下のような技術です。
- チップ:近年、マイクロプロセッサーやシステムオンチップ(System on-a-chip、SoC)の高性能化・省電力化が進み、デバイスの小型化・低価格化・省電力化が進んでいます。
- ディープラーニング:ディープラーニング技術の発展により、画像認識や音声認識など多くのアプリケーションがデバイスに実装され、より高い計算能力を実現することが可能になりました。
- クラウドコンピューティング:スマートデバイスとクラウドをシームレスに接続し、スマートデバイスがクラウドのリソースをフルに活用することで、その能力を高めることが可能になりました。
- 通信技術:無線通信技術の発展により、デバイスの遠隔接続や他のデバイスとの通信が可能になり、デバイスの機能がさらに強化されています。
現在、スマートデバイスで動作する機械学習アルゴリズムを研究する研究者が増えてきました。コンピュータビジョンや音声認識を中心に研究され、CNN(Convolutional Neural Network)やRNN(Recurrent Neural Network)といった深層学習モデルの利用が含まれています。
しかし、研究者たちは、スマートデバイスのハードウェアの制限により、既存のAIで関連タスクを実行することは不可能であることがわかりました。そこで、生まれたのがエッジAIという概念です。
エッジAIの仕組み
エッジAIは、スマートデバイス上で動作する人工知能技術で、インターネット接続なしにデータを処理できるAIです。つまり、情報処理などの操作は、データをクラウドに転送したり、データを保存したりする必要がありません。本来はクラウドで実行する情報処理業務をスマートデバイスに任せることで、結果として低レイテンシー(低遅延)でリアルタイムの処理が可能になります。また、重要なデータのみクラウドに転送することで、データ転送量を減らし、通信が途絶えたり、情報漏洩のリスクを最小化できます。
例えば、自動運転車では、監視カメラやセンサーから得られた大量の情報を、高精度かつ最小限のレイテンシーで処理する必要があります。エッジAIは、クラウド上で予め訓練されたモデルを用いて、デバイス自体で推論と予測を実行します。人間にはできない速度で道路状況を分析したり、危険を検出できるのです。
エッジAIを設計する際に考慮すべき要素には、以下のようなものがあります。
- 計算能力:スマートデバイス上で大量のデータを処理するのに十分な計算能力
- 通信機能:必要なときにデータを転送できる、他のデバイスやシステムとの効率的な通信
- ストレージ容量:大量のデータを保存し、素早くアクセスできる十分なストレージ容量
- 消費電力:限られた電力バジェットの中で動作させる、消費電力を最小限に抑える機能
- サイズと重量:小型・軽量でありながら高性能を発揮するデバイス
- セキュリティー:不正アクセスやデータ漏洩を防止するセキュリティー機能
- スケーラビリティー:データの量と複雑さの増加に応じて拡張できる計算能力
現在市場にあるスマートデバイス
スマートデバイスの性能は、主にプロセッサー、メモリ、バッテリーなどのハードウェア性能に依存します。一般に、ハイエンドのスマートデバイスは、処理能力とストレージ容量が高く、バッテリー寿命と駆動時間も長い特徴があります。また、スマートデバイスは、カメラやマイク、GPSなどの他のセンサーを装備できます。これらのセンサーも、スマートデバイスの性能に関係しています。
現在、市場には多くのスマートデバイスブランドがあり、それぞれの得意分野や対象市場によって強みを持っています。例えば、産業用途ではSiemensやABBが強く、消費者向けではAmazonやGoogleが人気です。また、AIに特化したエッジコンピューティングでは、GPUの製造で世界的に話題のNVIDIAが強いポジションを占めています。
時代を牽引するIoTとAI
AI同様、IoTには多くの可能性がありますが、その課題は技術的な問題だけでなく、社会的、倫理的、法的な側面にも及んでいます。今後、IoTの発展に伴い、これらの課題を克服することが不可欠だと考えられます。引き続き、注目していきましょう。