生成AIでシンギュラリティーは前倒しされたか?―宗像仙人だより 010
AIが人間の知能を越える技術的特異点である、いわゆるシンギュラリティー。アメリカの思想家であり未来学者のレイ・カーツワイル氏が想定したAIは、AGI(汎用人工知能 : Artificial general intelligence)ですが、アメリカの大手コンサルティング企業マッキンゼー・アンド・カンパニーのレポートによれば、ChatGPTなどの生成AIによって、いろいろなことの実現が数十年単位で早まったともいわれています。さて、テクノロ爺の見解や如何に?
AIと人間の格差よりも早く広がるのは
またちょ~っと、キツい現実の話ばかりになりかけてますから、できればもう少し希望ある未来の話題も挟みましょうよ。
やっぱり、AIの話がしたいね。あとはやっぱりマインドの話。これからは、AIと心の問題がどうしても関係するから。
どっちも、結局は人間の話ですね。で、どんな話をしましょ?
人工知能学会の雑誌を読みよるけど、さっぱりわからん(笑)。でも、そこが面白い。
▼人工知能学会 (The Japanese Society for Artificial Intelligence)
https://www.ai-gakkai.or.jp/
わからないことを楽しめるってのは、凄いと思いますよ、素直に。人間、年を取ると、新しいことへの関心や失敗することを避けたがるのに。
人間は、質や量、スピードの勝ち負けでいったらAIには必ず負ける。今、AIに取って代わられる仕事とか心配しよる人がおるけどさ、AIと人間の格差よりも早く広がるのが、AIを使いこなす人と使わない・使えない人との格差やと思う。
なるほどね。私個人としては、生成AIを頭ごなしに否定するのはちょっともったいないなと思うんですよ。実際に自分で使ってみて、リスクやメリットを肌感覚として知った上で判断しないと、必要な知見も溜まらないし。技術を使うより、使われちゃうんじゃないかっていう懸念はずっとあります。正体がわからず、姿や名前もないものに、人は恐怖するわけで。
Googleの検索結果やWikipediaを無条件に信じている人が、未だにいるじゃん。それと同じことが、生成AIでも起きとる。
カーナビが一般に広く普及し始めた初期の頃にも、案内されたからって理由で計画中の道路にそのまま突っ込もうとしたり、示された通りに信じて無茶な田舎道を走ったりしてましたよね。
人が知りたいのは、知らないことやし、聞きたいのは、やっぱり予測と結果じゃん。例えば、渋滞はどこで起こる?とか、明日の天気どうなるの?とかの未来予測。
危機やリスクを避けたいのは、動物の本能ですもんね。
だから、ウェザニュースに毎月330円払ったりするわけ。
これから本格化しそうな夏秋のゲリラ豪雨は、雨雲レーダーが必須ですよ。複雑な東京都心や初めて行く場所を移動するのに、スマホや交通系ナビアプリがなかった時代が思い出せないような感じ。『15時から雨が降るから、前後の移動を調整しよう』みたいな判断ができるようになったのは、一日一回の天気予報じゃなくて、メッシュが細かくなって精度が上がり、自分の位置情報とクロスさせられるからこそ実現したものですし。
ドップラーレーダーの能力が上がれば、水平方向の緯度経度だけじゃなく、垂直方向の高さもさらに細かく判断できるようになる。ビッグデータを高速に解析ことで解像度が上がり、それを素早く解析して、より正確な予測に基づく判断ができるようになる。
雨が降るのをコントロールはできなくても、濡れて不快になるストレスや、身動きが取れなくなる不便とか、身の安全はできればマネージメントしたいですね。
シンギュラリティーが「池の表面を覆い尽くす」まで、後どのぐらい?
AIといえば、テクノロジーに関心があるとはいえ、研究者や専門家ではない一般人としての仙さん個人に敢えて聞いてみます。AIが人間の知能を越える技術的特異点―シンギュラリティーについては、どう思ってますか?
シンギュラリティーを提唱したのは、アメリカ人でAI技術研究者のレイ・カーツワイル氏やん。発表された当時、シンギュラリティーが起きるのは、2045年頃とされとった。元々、シンセサイザーで音楽を作りよった人ってのも面白いけど。
▼Amazon.co.jp: シンギュラリティは近い[エッセンス版] 人類が生命を超越するとき : レイ・カーツワイル, NHK出版: 本
ChatGPTやMidjourneyなど生成AIの爆発的な普及は、シンギュラリティーの入口だという人がいますよね。その一方で、まだまだ先の話だといってる人もいます。実際、専門家の間でも、見解はいろいろですが。
シンギュラリティーは、そりゃいずれ確かに起こるやろうけど、いつってのは専門家でもわからんよね。それが早まるか、遅くなるかっていう全体的なことも、一概にはいえんかな。まぁ、部分的に細かく見ていくと、例えば自動車におけるシンギュラリティーだとか、早い遅いがあるやろ。社会全体に対して、シンギュラリティーが起こるのを待ったらもっと先やろうけど。
歴史的転換点ってのは、それを過ぎてある程度時間が経ってからじゃないと分かりませんもんね。でも、1個ずつのパーツは、ちょっとずつ揃ってきてる気はするんですよ。ちょうど、池の表面を蓮の葉が覆うまで何日?って、よく知られたクイズのような。蓮の葉が一日で2倍に増え、30日で池を覆い尽くすとき、蓮の葉が池の半分を覆うのは何日目か?ってヤツ。
29日目。全てが覆われる前日。
それ!しかも、実際には倍々ゲームではなく、指数関数的的に一気に増えてる。生成AIなんて、今まさにそうで、1週間前の情報が古くなる爆速スピードで進化してますもん。もう『明日で、池は全部覆われてしまうよ』っていうところまでにならないと、人は自分事として気がつかないのかもなぁ。
シンギュラリティーのヒントになるかもしれんけど、未来学者Frank Dianaさんが描いたこの図なんかも非常に面白いと思うよ。ちょっと古いけど。
仙さんが好きな、ガートナーのハイプサイクルとはまた違う手法で、いろんなテクノロジーにスポット当たってんですかね。
そう。左上のインターネットに始まって、ソーシャル、モバイル、クラウド、ビッグデータと来て、下の部分はスマートグリッドやコネクテッドカー、スマートホーム、そして狭義のAIと。
前回出た話にも関係する、スマートシティーも名前が挙がってますね。今、ちょうどこの辺りって感じですか。
そうやろね。過去から現在、近未来、そしてちょっと遠い将来のテクノロジーが並んどる。最終的には、右上の方にある総合的なAIやヒューマン2.0っていうのまで行くと思うよ、俺も。
そうやろね。過去から現在、近未来、そしてちょっと遠い将来のテクノロジーが並んどる。最終的には、右上の方にある総合的なAIやヒューマン2.0っていうのまで行くと思うよ、俺も。
そう、ある日突然に思えるけど、ちょっとずつ、しかし着実に変わっていくやろ。ある部分はリスクも増すが、いろんな技術革新のブレークスルーも、同時多発的に起きていく中でね。
生成AIの登場で、いろんな課題が数十年単位で前倒しに!
そういえば、マッキンゼーの興味深いレポートを目にしましたよ。技術で達成できる人間のパフォーマンスレベルが、生成AIの爆発的な普及によって20~30年前倒しになってるとか。
そうかもしれんね。
この図が示しているのは、生成AI開発前の2017年に専門家が推定していたのが、右側のグレーの●と―なんです。
それが、2023年の生成的AIの開発によって、ブルーのマーカーの位置まで全体的に左方向へ前倒しされとるな。
そうなんですよ。元々、項目でいえば「新しいパターンやカテゴリーの生成」などは、比較的早期…といっても2030年代だったんですけど…割と早く実現することが期待されていました。
ところが。
注目すべきは、従来はこれらの項目の中でも、実現がかなり先の未来だと思われていた「社会的・感情的推論」や「創造性」も、一気に前倒しされてる点なんですよね。
シンギュラリティーも、同じような時間軸で前倒しになったことは間違いないやろね。
専門家の予測ですら、数十年単位で前倒しされる事態が起きるなんて…。きっとこの現実は、ドミノのように、次の何かを確実に推し進めているに違いありません。
冒頭で、宗像仙人さんがいっていた話したいテーマのうち、AIの話はいろいろ出たので、次回はマインドの話へ。
この記事の内容は、個人的な見解や感想であり、リープリーパー編集部や運営組織を代表するものではありません。
この記事でインタビューをした方
宗像仙人 / Sennin Munakata
テクノロ爺
量子コンピューターやAI、常温核融合など、テクノロジー全般に関心が尽きない元ITコンサルタント。趣味も幅広く、万年筆やアルコールから、軍事研究、最新アニメ番組のチェックまで。福岡県宗像市のオススメは、沖ノ島と道の駅。
理人様 見ず知らずの者に温かいアドバイスをありがとうございます。 生物学の中だけ…
Soさん、ご質問ありがとうございます。 博士課程で必要な生物学の知識は、基本的に…
貴重な情報をありがとうございます。 私は現在データエンジニアをしており、修士課程…
四葉さん、コメントいただきありがとうございます。にんじんです。 僕がこの会社この…
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