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AI

人類の希望?悪夢?生成AIへの期待とリスクが原子力並とされる理由

kotobato

早いもので、もう今年の8月も終わり。例年、8月と言えば、平和について考える機会も多い時期です。そこで避けては通れないのが、核—つまり原子力の是非。

重たく壮大なテーマですが、実は、生成AIが持つ可能性やリスクは原子力に例えられています。一見、関係が無さそうな両者の相関は、ますます強まっています。電気料金の値上がりや地震のときぐらいしか原発について考えたことがない人も、生成AIをあまり触っていない・関心がない人にも、広く知ってもらいたい視点です。

エネルギーの安定供給とGXとしての原子力

時代は、化石燃料を中心とした社会から、カーボンニュートラル(脱炭素社会)へのシフトが急がれています。原子力は、エネルギーの安定供給と経済社会システム全体の変革を目指す、グリーントランスフォーメーション(GX)やグリーン・ニューディール(GND)の鍵を握っています。

地球沸騰化対策のエネルギー源として

気候変動が私たちの生活を脅かしているのは、広く知られているとおり。2023年7月、国連のグテーレス事務総長が『地球温暖化の時代は終わり、地球沸騰の時代が訪れた』と発言したほどです。

原子力は、安定したベースロード電源として重要な役割を果たすだけでなく、深刻さを増す気候変動の解決策の一つと位置づけられています。2024年、世界の原子力発電所の発電能力が過去最大となりました(主力は欧米とは一線を画す中国とロシア)。

日本でも、21世紀の夢のエネルギーとして、長らく喧伝されてきました。SDGsの視点からも、再生可能エネルギーとの組み合わせによる、持続可能なエネルギー供給が期待されています。

過去の研究を踏まえた新技術への期待も

原子力は長年にわたって利用されてきた技術であり、既存のインフラやノウハウ、人材などが整っているのも、大きなアドバンテージです。

また、ビル・ゲイツ氏が創業したテラパワー社では、次世代型原子炉「ナトリウム高速原子炉」を建設しています。常温核融合など、より安全な新技術の実現は常に模索されています。

ビジネスを圧倒的速度で変革する生成AI

一方、生成AIは、プログラミングの自動化やコンテンツの自動生成、データ分析、意思決定支援など、多くのビジネスプロセスを急速に変革しています。

生成AIは、ChatGPT以前から研究開発が進んでいましたが、比較的新しい技術です。ChatGPTのユーザー数は、5日で100万人、2か月で1億人と驚異的なスピードでした。その後に続々と登場した競合も含め、過去のどんなテクノロジーとも比較にならないほど、圧倒的な速度で普及を続けています。

ビジネスへの導入と応用

例えば、カスタマイズされた顧客体験の提供や、新しい製品やサービスの開発支援など、AIの力を活用することで、ビジネスプロセスを大幅に改善できます。その応用分野も幅広く、医療や教育、ソフトウェア開発、マーケティング、サポートなど、業界や業種を問わず注目が集まっています。

システム開発では、ローコード・ノーコード開発やデジタルレイバー(ITを使った仮想労働者)と組み合わせることで、さらに効率的な内製化が実現すると予想されています。少子化により労働生産人口の減少がさらに厳しくなる中、一つのソリューションとして、大きな期待が寄せられています。

ビッグテックの参入

生成AIの分野へは、世界的に影響力を持つプレーヤーが一気に参入しています。ChatGPTを開発したOpenAIを初め、GAFAMにTeslaとNVIDIAを加えた「マグニフィセント7」と呼ばれる巨大IT企業が、続々と名乗りを上げています。ベンチャーキャピタルや新興スタートアップ、研究機関も加わり、目まぐるしさは増すばかりです。

以上は、主にポジティブな面ですが、光が強ければ強いほど、影もまた色濃くなります。

放射性物質の脅威と、管理の難しさ

広島、長崎への原子爆弾投下や東日本大震災による福島の原発事故を経験した私たちには、原子力のリスクは特に重い課題です。発電コストのメリットにしても、放射性廃棄物の処理や廃炉まで計算すると、当初言われていたほど安くないことも指摘されています。インフラの耐用年数を超えた運用と再稼働にも、批判が高まっています。

放射性物質の脅威

原発は、事故が起きた時の甚大な影響や放射性廃棄物の管理・処理といった、物理的・地理的なリスクがあります。技術的なミスや人的ミス、自然災害などが引き金となる事故の影響が甚大で、長期間にわたって環境や人々に被害を与えます。1997年に京都議定書で定められた気温上昇を1.5度に抑える目標も、徐々に実現が厳しくなっていますが、原発の環境負荷はまた別の大きな問題を孕んでいます。

国家間の交渉戦略として

核兵器は、最悪の状況になれば使われる可能性を想像させる、他国への軍事的圧力として利用されています。2023年6月のG7広島サミットでは、核の傘で守られている日本の立場を、原爆が投下された都市で首相が認めるという結果に、大きな議論を呼びました。

攻撃対象とされるリスク

原子力は、武器として使われるだけでなくターゲットになり得ます。核拡散やテロリズムなど、国際紛争のリスクも無視できない要素です。現実に、ロシアのウクライナ侵略では、ザポリージャ原発やザポロジエ原発が狙われました。

天然ガスの約40%をロシアに依存していたEUは、政策の大きな方針転換を迫られました。原発依存率が70%と高かったフランスも、50%にまで下げる計画を撤回するなど、影響は続いています。

生成AIが脅かすプライバシーや偽情報の蔓延

生成AIのリスクは、原子力のような物理的な被害は少ないことが一般的です。しかし、データの偏りや誤回答(ハルシネーション)、フェイクニュース、プライバシーや著作権の侵害、差別の助長など、情報セキュリティーや倫理上の問題が指摘されています。これらのリスクは、オフラインの世界で現実の脅威となっています。

不十分な倫理観と危うい社会正義

アルゴリズムの進化により、AIの能力は急速に向上しています。しかし、AIを開発・運営する各社は、何をどのように学習し、どのような結果を生成するか、プロセスや手法、倫理規定は完全には開示していません。そのため、性差別や人種差別など、意図しないバイアスや倫理的な問題がたびたび指摘されています。

学習ソースの著作権問題

同様に、学習ソースの盗用も大きな問題となっています。ビジネスユーザーとしても、社内のコアなノウハウや非公開情報が吸い上げられるのは脅威です。

日本では24年3月、文化庁がAIによる文章や画像などの著作権侵害に関する考え方を取りまとめました。しかし、アニメやマンガのキャラクターなどの、知的財産(IP)が明らかに侵害されています。外国企業に対して規制が甘い日本は、生成AIによる学習モデルの草刈場にされているという指摘もあります。

学習に必要な膨大な電力

比喩だったはずの生成AIと原子力の関係が、膨大な電力需要の供給や確保、環境負荷という点ではつながっています。

従来、IT x エネルギーといえば、データセンターで使われる膨大な電力が筆頭でした。巨大なサーバー群を稼働させるのに再生可能エネルギーを利用するGXも、一部で知られるようになりました。

仮想通貨ブームが過熱してからは、ビットコインの取引が正しく処理されたかを確認するマイニング(採掘)という作業に、膨大なコンピューティングパワーと電力が使われるようになりました。この作業は国境を越え、電力と人件費が安いグローバルサウスに押しつけられ、反社会的組織の資金洗浄とも結びつく、新たな社会問題となっています。

生成AIの学習や運用にも、原発単位で換算するレベルとも言われる、膨大な電力を必要とすることが指摘されています。大規模な発電設備やデータセンター、冷却システム、高性能GPUなど、総合的な仕組みが急務です。また、ユーザー側のデバイスで処理できるエッジAIや、コンパクトでより効率的なモデルに注目が集まっています。

AIが奪うのは仕事ではなく電力?生成AIのエネルギー事情 | docomo business Watch | ドコモビジネス | NTTコミュニケーションズ 法人のお客さま
https://www.ntt.com/bizon/gpu_power.html

意志決定と説明責任

AIによって、士業などホワイトカラーが失業すると警鐘が鳴らされています。しかし、AIに直接仕事が奪われるのではなく、AIを使える人に取って代わられるのが現実。

また、AIの判断に過度に依存することで人間の判断力が低下してしまう、ビジネス上の意志決定と説明責任など、新しい問題も指摘されています。これは、誤審が議論となったパリ五輪のように、プロスポーツの判定へAIを導入することの是非としても、注目されています。

セキュリティーの新たな脅威に

プログラミング機能にも優れた生成AIは、サイバーセキュリティーの脅威として悪用されるリスクも高まる一方。企業としては、ビジネスが停止する最悪の事態を避けるために、身代金の支払いを含む厳しい判断を迫られます。


国家プロジェクトである原子力行政と、巨大IT企業が開発して変化が激しい生成AIは、一つの企業まして個人が直接対峙しても手に余る壮大なテーマ。自分たちではどうしようもないことなので、状況に従っていくだけだと、無関心や無視を決め込むのも一つの態度です。

しかし、知ろうとしない意識や正しい情報を持っていないことが、リスクではないでしょうか?次回は、その辺りをもう少し考えてみましょう。

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リプリパ編集兼外部ライター
企画制作や広告クリエイティブ畑をずっと彷徨ってきました。狙って作るという点ではライティングもデザインの一つだし、オンラインはリアルの別レイヤーで、効率化は愛すべき無駄を作り出すため。各種ジェネレーティブAIと戯れる日々です。
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