ローコード+AI時代にこれからのエンジニアに求められる資質とは
今はまだ、エンジニアなんて名乗れないけれど、ローコード開発で自己実現の幅を広げたい!今まで仕事してきた経験を活かして、上級エンジニアとしてのキャリアを目指したい!リスキリングで、年収アップを実現したい!人それぞれに、いろいろな希望や目標があるでしょう。
でも、「ローコードとAIで自動化・効率化・省力化できるのなら、ひょっとしてエンジニア—つまり、自分は要らないのでは?」…という不安はありませんか?テクノロジーの進化が加速する現代。AIの導入でホワイトカラーが大量失職という、衝撃のニュースも聞きます。人間としてのエンジニアに求められる資質とは?
ローコード開発ならエンジニアは本当に不要か?
ローコード・ノーコードで、ノーエンジニアになるのか?—もちろん、そんなことはあり得ません。
一見、矛盾するようなローコード・ノーコードの普及と、それでもやっぱりエンジニアが必要とされる状況とは、両立します。ただし、環境や仕組み、人の意識が変わる・変わる必要がある、という条件付きです。
これが、リープリーパーとしてのポジショントークでもない理由や背景を、以下で考えてみましょう。
スペシャリストとしての需要
現代社会は、BANIという概念で象徴される時代に突入しています。変化することが当然で、予測や理解すら極めて難しい状況が現実です。テクノロジーが進化する速度と割合、複雑さも増す一方。エンジニアリングの分野は非常に広範で、特定の技術や領域に特化したスペシャリストが求められています。
新しい技術的ニーズの高まり
AIやデータサイエンス、機械学習、クラウドコンピューティング、セキュリティーなど、各分野での専門知識が必要です。特に、AIやビッグデータの分野は急速に成長していて、これらの技術に精通したエンジニアに高い需要があるのは、前の記事で紹介したとおりです。
複雑な要件への対応
ローコードで複雑なビジネスロジックや特定の要件に対応できるかは、そのプラットフォーム次第。エンタープライズ規模のシステムやマルチプラットフォームに対応するには、経験豊富な専門職としてのエンジニアが重要です。エンジニアは、アーキテクチャー設計やシステム統合、データ管理など、より戦略的な役割へとシフトする必要があります。
品質保証とセキュリティー
前の記事では、今後、テスターの需要が高まることを紹介しました。ユーザーがアプリケーションを自作するということは、品質保証やセキュリティーチェックが重要ということ。非エンジニアに対して、セキュリティーやパフォーマンスの観点からのアドバイスできるプロの存在が不可欠です。
ビジネスの文脈の深い理解
非効率なプログラミング作業から開放されるのに伴って、エンジニアには、単に技術的な問題を解決するだけでなく、ビジネスの文脈を理解することが求められます。
ビジネスのゴールと将来を見据える力
ゼロからローコード・ノーコードを導入することは、まず無いはず。既存システムとの連携や拡張、置き換えを滞りなく進めるには、ビジネスの現場を詳しく知ることから始まります。ビジネス的なゴールを認識して初めて、適切なプラットフォームやツールを選定できます。
そこで重要な職種が、ビジネスアーキテクトです。
社内横断的な関心と調査
営業やマーケティング、サポートは、直接関係ないから各部署任せで無関心…とはできません。自分が開発したシステムがどのようにビジネスに貢献するかを理解することで、エンジニアからもより効果的な提案ができます。マーケティングや経営戦略、財務などの知識も不可欠です。
プロジェクト管理とリーダーシップ
プロジェクトのスムーズな進行を管理し、メンバーをリードする能力は、エンジニアには必須のスキル。自分のキャリアパスにとっても重要です。
アジャイルとスクラム
効率的な開発を実現するフレームワーク—アジャイルやスクラムを学ぶことは有効です。チームビルディングやコミュニケーションに関するトレーニングを受け、メンバーと信頼を築き、効果的なサポートを提供することで、チームの協力を促進できます。エンジニアとしてのリーダーシップを発揮すれば、チームの士気が高まり、プロジェクトの成功に貢献できます。
業務とシステムの仲介役
技術的な知識で、ビジネスユーザーが抱える課題を理解し、適切な解決策を提案する役割が、これからのエンジニア像。ステークホルダー間のコミュニケーションを円滑にし、プロジェクトの成功率を高める役でもあります。
変化に対応するコミュニケーション
技術や時代の変化に際して、人間であるエンジニアの価値は、柔軟に対応できるコミュニケーションにあるといってもいいでしょう。
リモートワークの可能性と制約
リモート・コミュニケーション技術の進化もあり、世界のどこからでも働ける新たな機会が広がっています。 アフターコロナは出社へ回帰した企業もある一方で、若い世代を中心に、リモートワークができるかどうかが企業選択の重要なポイントに。
メンターシップの活用
経験豊富な先輩エンジニアや専門家から助言を受けて、実践的な知識やスキルを学ぶのもいい方法です。メンターは、ソーシャルメディアやイベントでも見つかるかもしれません。自分が目指すキャリアの方向性や成長のためのアドバイス、悩みを解決するヒントを提供してくれる貴重な存在です。もちろん、自分がメンターになることでも大きなメリットが得られます。
フィードバックの受け入れ
自分の成長のためには、他者からのフィードバックを受け入れる姿勢が重要。熟練者でも、知っているノウハウはすでに古くなっているかもしれません。上司や同僚、取引先からの意見を真摯に受け止め、改善点を見つけることが、自己成長につながります。
STEM以外の知識と関心
エンジニアには、STEM(科学、技術、工学、数学)に関連する知識が重視されます。近年は、「芸術」を加えたSTEAMの重要性も指摘されています。
例えば、心理学や倫理学などの人文科学的な知識や、デザイン思考やユーザー中心設計の原則は、ユーザー体験(UX)を考慮する上で不可欠です。また、技術が与える社会的影響を理解し、倫理的な観点からの判断を下すには、社会学的な興味関心も必須です。
異なる分野の知識を持つことで、エンジニアはより創造的な解決策を発見し、真にユーザーの生活やビジネスに実際に役立つサービスを提供できます。
新しいノウハウを学び続けるマインド
柔軟性を高めるには、異なるプロジェクトやチームで経験を積むことが有効です。エンジニアは多角的な視点を持つことができ、変化に対する耐性を養えます。
オンライン学習プラットフォームの活用
特定のサービスやプラットフォームは、公式の豊富な学習リソースを提供しています。また、CourseraやUdacity、Schooなど、MOOCsと呼ばれる学習プラットフォームを使って、最新の技術やトレンドに関する知識を得るのも有効です。専門知識を深めるだけでなく、ビジネスやプロジェクト管理に関するスキルも磨けます。
心強いのは、英語が苦手でも機能拡張や生成AIがあること。会社のプライバシー規約に抵触しない範囲なら、スマホや自宅で学べます。
業界イベントやカンファレンスへの参加
テック系のイベントやカンファレンスに参加するのもオススメ。他者との接点を通じて、貴重な情報や経験を共有できるのも魅力です。
また、前述の学習機会と同様に、自社で主催することもとても有効です。これは、自社の商品やサービスの紹介や、LTやプレゼンの練習、B2B/B2Cの糸口、有望な人材のスカウト、自分のキャリアにも有利です。
プロジェクトへの積極的な参加
今の自分の仕事に直結しないプロジェクトでも、積極的に参加してみるのもいいアイデアです。技術的なスキルだけでなく、チームワークやリーダーシップの経験につながります。
また、オープンソースや社外のプロジェクトに参加することは、自分のスキルの腕試しになる以外に、普段と違うコミュニティーを知る機会にもなります。結果的に、自分の仕事にプラスに作用することもあります。
結局、エンジニアとは、人間とは何なのか?
今、人気の開発言語や高い年収の職種も、永遠ではありません。
実際に、AIやローコード・ノーコード、量子コンピューター、ブロックチェーンなど、新しい技術が急速に進化しています。エンジニアは常に新しい技術やトレンドにアンテナを張り、変化に適応する必要があります。しかも、数年も待たずにさらに新たな技術が登場し、求められるスキルセットが変わることも既定路線。テスターがこれから人気だとしても、要求されるレベルはさらに上昇するはずです。雇用の流動化が進めば、価値のないエンジニアはリストラ対象になることも現実に…。
新技術や概念に関心を失うことは、ある意味「エンジニアとしての死」。特定の技術を習得することも必要ですが、新技術に関心を持ち、新たなノウハウを身につけるマインドセットが重要です。それは、「結局、エンジニアとは、人間とは何なのか?」という大きな命題に直面することに他なりません。
ローコード開発プラットフォームの普及で、シニアテスターが活躍しそうだという切り口で話をしてきました。ビジネス面の考察や開発や運用チームとの連携、テスト専用ツールでカバーしきれない計画の立案など、いろいろな役割が期待されます。
さて、その一方で、高度なレベルのタスクが自動化されたら、人間は一体何をすべきか?これは、仮想労働者であるデジタルレイバーを同僚として働くことになる私たちにとって、共通の課題です。
このデジタルレイバーとの働き方・付き合い方については、また次の機会に考えてみましょう。どうぞお楽しみに!