脆弱な不安、非線形で理解不能…BANIな時代への対処と心構えとは?
深刻さを増す世界的な気候変動の影響で、日本は亜熱帯化しつつあります。10月に入りましたが、まだ台風と秋雨には注意が必要です。日本では号数という数字で呼ばれる台風ですが、アジアでは140個ある候補から順番にニックネームが付けられます。
時代の変化がさらに予測不可能で深刻さを増す、現代を示す概念であるBANI(バニ)。これは、確実に襲ってくることがわかっていた巨大台風の呼称のようなものです。避けようがないものの、進路や勢力がはっきりしないからといって、何も対策をせずに迎えるのは、危機感に欠けた無謀な判断です。また、予測精度がどんなに向上しても、専門家すら予想できない状況に変化するリスクがあります。さらに、直接は自分たちに関係ないように思えても、その影響が広範囲に及ぶ可能性が常にあります。
では、私たちは対策として何をすべきなのか?ぜひ、前回の記事から続けてお読みください。
VUCAからBANIへと移り変わる4つの要素
VUCA(ヴーカ)からBANIへの移行が推奨される理由は、現代の課題に対するより深い洞察を得るためです。ここで、両者を構成する4つの要素を順番に並べて、関連や対比を見てみましょう。
変動性は脆さにつながる
私たちを取り巻く状況が急速に変化し続けているのは、もはや大前提。しかし、現代のシステムや組織の多くは予測できない変化に対して脆弱で、リスクに耐えられない可能性があります。
不確実さが不安に連鎖する
未来予測が難しいことは、閉塞感や諦めとして個人やチーム内に心理的影響を与えます。情報洪水の時代に、選択肢が多すぎて処理できないことも、不安の一因となっています。
複雑なだけでなく非線形に
考慮すべき要素があまりにも多く絡み合って複雑なだけでなく、結果は原因と必ずしも直線的には結びつきません。単純な因果関係では、予測不可能な結果は説明できません。
曖昧なだけでなく理解できない
情報がはっきりしないことが原因でなく、情報があってもあまりにも複雑で、人知の範囲を超えています。急速な変化の中、過去の事例や従来の枠組みでは状況を理解しきれません。
BANIの現代、具体的にどう行動すべきか?
BANIは、絶望的な不確実さを前にした諦めや無計画の象徴ではありません。VUCAの限界を認識し、現代の複雑な社会状況やビジネスの変化を正確かつ冷静に反映し、より深く理解するために生まれた概念です。
不確実で複雑な状況に対して建設的な態度を持ち、具体的な行動を取ることは非常に重要です。では、自社にとって何を大切にすべきか?対策として何が欠けているのか?以下は、どれも一朝一夕には達成できず、組織によっても状況が異なります。しかし、BCP(事業継続計画)の一環として平時から準備や対策をしておくことは、持続可能性を持つ組織としての重要な責務です。
情報収集と分析
信頼できるソースから情報を収集し、状況を正確に把握することが重要です。よりよい意思決定のためには、データをリアルタイムに分析し、トレンドやパターンを見極めることが求められます。
柔軟で自由な発想
必ずしも前例が活かせない状況では、固定観念にとらわれず、柔軟に考えることが重要。新たな視点を取り入れ、さまざまなシナリオを想定することで、想定外の変化にも適応しやすくなります。
リスク管理と必要な準備
確実かどうかわからないことを前提にリスクを評価し、対策を講じることが必要です。リスク管理の計画を立てて準備することで、実際に問題が発生した際の影響を最小限に抑えられます。
コミュニケーションの強化
周囲の状況がよくわからない場合、情報共有と意思疎通が生存確率を左右します。チームやコミュニティー内でのオープンな対話を促進し、共通の理解を深めることが特に重要です。
メンタルヘルスの管理
不安な状況に晒され続ければ強いストレスを引き起こすのも当然ですが、共感とマインドフルネスによって和らげることができます。自分から早めにサポートを求めることも、スキルの一つ。
常に学び続ける姿勢
例えば、生成AIに関連したひと月前の情報は、古すぎてあまり役に立ちません。急速な変化に対する適応力を高めるには、常に新しい知識やスキルを身につけるマインドや機会が不可欠。
アジャイルな試行錯誤
大きな変更を一度に実施するのではなく、小さな実験を繰り返し、結果を見ながら調整していくアプローチが有効です。これによって、リスクを抑えつつ効果的な戦略を立てられます。
来ると警告されている変化に必要な対策を
台風は唯一、自然災害の中で進路と被害をある程度予測して、必要な準備ができる災害だといわれています。天気予報の精度の向上や防災アプリの普及、ハザードマップの認知だけでなく、交通機関の計画運休やサービス業の休業といった社会の理解も、ある程度定着してきました。日頃から、防災グッズを揃えたり、家族バラバラでもとにかく避難すること、そして地域コミュニティーの大切な機能も認知されています。
現代は例えるなら、熱帯低気圧だったVUCAが勢力を増し、新たな概念を必要とするほど強い影響力を持つBANIが警戒されている状況です。私たちは、必要な情報を常に細かくウォッチし、自分たちの掛け替えのない生命と財産を守るために、最大の行動をとる必要があります。
ただし、『古いVUCAは終わった!これからはBANIの時代だ!』といった極端な言説は要注意。複数のことを徒に対立させたり、古いモノより新しいモノを無条件に選ばせるのは、広告手法の定番です。何より、主語の大きな断言や強い煽り文句は、変化がより不確かなことを象徴する概念であるBANIとは相容れません。
新しいモノに無闇に飛びつく前に、何が、なぜ、どのように変わる必要があったのかを、丁寧に把握することも有効です。その深い理解が、ひいては自社や自分自身にどう関係するのか?具体的に何をすべきか?を考えるヒントになるはずです。日頃の備えと事前の対策、無意味な同調圧力への疑問が、被害を最小限に食い止めるポイント。アジリティー(俊敏性)とレジリエンス(回復力)を強化することが、スムーズな復旧と、次にまた必ずやってくる変化への、積極的な対応へとつながります。