ローコード・ノーコード

数十名で10万人規模のサービス運用!?情シスが挑む自動化・効率化

リプリパ編集部

情報システム部門(情シス)に十分な人数がいることはまずありません。今後もDX人手不足が続く厳しい現実はある一方で、ローコードやAIの普及、クラウドの浸透、アウトソーシングの質の変化などによる、自動化・効率化が進んでいます。開発・運用するサービスが、社内のシステムか顧客向けかを問いません。

今回は、情シスの現場に見るデータドリブンな意思決定とチーム運営について解説します。

前回の記事では、経営層のスリム化と企業のスピーディーな意思決定を、テクノロジーの進化が支えていることについて解説しました。先行きが全く予測不可能な現代では、企業経営には質と速度の両方が求められています。柔軟で高機能、セキュリティーやレジリエンスの面でも頼れるシステム開発と内製化を、ローコードやAIが支えています。これは情シスでも同様です。

少人数で運営される巨大サービスの例

以下は、少人数の情シスで大規模なシステムを運営していると見られる著名企業です。人数は公式には開示されておらず、ビジネスの成長に変わって構成も変化しているはずです。ただ、わずか数十人規模の情シスで、100万〜1億人規模のサービスを運用している様子は、たびたび伝えられています。

目覚ましい成長を遂げている企業はすべて、限られた人材で高度かつ複雑なシステムを管理するために、最大限にテクノロジーを活用しているという点は、間違いないでしょう。

  • OpenAI:ChatGPTを開発する企業で、少数のトップエンジニアがAIモデルの開発をリードし、世界的な影響力を持つ企業へと成長。
  • Netflix:AIを活用したレコメンデーションにより、パーソナライズした視聴体験を提供。最適なコンテンツ配信を少人数のチームで管理。
  • Stripe:決済プラットフォームを提供し、金融業界で極めて少人数のチームでグローバル展開を実現。クラウドベースのシステムを活用し、効率化。
  • Shopify:Eコマースプラットフォームの提供において、クラウド化による業務自動化と開発の効率化を推進し、情シスの負担を最小化。
  • Airbnb:ユーザー体験のパーソナライズをAIで強化し、最適な宿泊先を自動提案。データ活用によるマーケティングの最適化で従業員数をスリムに。
  • Tesla:車両の性能を、リモートでソフトウェアアップデート。生産・販売後も継続的な製品改善を可能に。
  • Instagram(初期):Facebook(現Meta)に買収される前は、13人のチームで1億人のユーザーを支えるサービスを運営。
  • TikTok:ByteDance社が運営するプラットフォームで、AI主導のアルゴリズムによるコンテンツ管理と広告運営を行い、従業員数を抑えつつ高い収益を確保。
  • Cursor:AIを搭載した注目のコードエディター。2024年9月時点でわずか12人のエンジニアと研究者という小規模な組織だったが、史上最速で普及したSaaSに。
  • Bluesky:分散型ソーシャルネットワークのプロジェクトで、3,200万人が使うサービスを運営しているのは、正社員21人のチーム。

企業の平均的なIT人材の比率は約1:27

では、そもそも情シスの人数や規模は、組織全体に対してどれぐらいが妥当でしょうか?アメリカIndeedによれば、平均的なIT人材の比率は、IT人材1人に対しておよそ従業員27人(1:27)の割合。業種や企業の規模、アウトソーシングなどによって違いはありますが、全体として、従業員規模が大きくなるほど、スケールメリットと効率性が求められる傾向にあります。SIer依存比率が高い日本企業では、この比率は少し低くなると思われます。

従業員数別のIT人材比率の例

従業員数(人)比率
500 未満1:18
499~9991:25
1,000~4,9991:23
5,000~9,9991:25
10,000 以上1:40
出典:What Is the Ideal Ratio of IT Staff to Employees?
https://www.indeed.com/hire/c/info/best-it-ratio-staff-to-employees

情シスの縮小化と価値転換が進む現実

かつての情シス部門は、数多くの人数と多層的な構造が不可欠とされていましたが、今では少人数でも巨大で複雑なシステム管理を実現できる時代になりました。これは単なる人材不足による影響だけではなく、デジタル技術による組織運営の自動化が進んでいる結果です。

重要なのは、ローコード+AIによる自動化・省力化によって、人間に求められる価値が変わりつつあるという点です。

情シスを取り巻く環境の変化

  • AIの普及拡大:生成AIが日常業務レベルに普及。これまで情シスが支援していた業務の一部が自己解決。同時に、AI導入のためのインフラ整備やリスク管理、社内展開のガイドライン策定など、新たな業務が発生。
  • ローコード・ノーコードの普及:AIと共に「開発の民主化」が進み、エンジニアに依頼しなくても、ビジネス部門が直接開発できることが当然に。「開発工数提供部門」としての情シスの役割が相対的に後退。
  • シャドウITのリスク拡大:ソフトウェア開発やAI利用のハードルが下がり、管理されない「野良AI」「野良SaaS」「野良RPA」が乱造。セキュリティーやガバナンス面での新たな課題が発生。
  • アウトソーシングの増加:システム運用やセキュリティー管理を外部に委託し、情シス部門の規模を抑えながら高度なIT管理を実現。IT部門=社内の「何でも屋」から「選定と統制のプロ」へ。
  • ゼロトラストセキュリティーの導入:少人数の情シスでも高いセキュリティー基準を維持するため、「すべてを信用しない」前提のゼロトラストモデルが浸透。アクセス制御やログ管理の精度が求められる。
  • クラウド技術の発展:オンプレミスからクラウドベースの管理へ移行し、(理想上は)ITインフラの運用負担が軽減。スケーラビリティーと可用性の両立も。

情シスの構成や目的の変化

  • 「問いの設計者」としての価値:AIそのものは汎用だが、「業務で何に使うか」を定義し、データの出し入れやプロンプト設計を支援する役割が期待される。「使える人が使う」から「会社全体で使えるようにする」ための伴走者へ。
  • 自動化とクラウド化の常態化:バックアップやパッチ適用、監視など、かつて人手を要していた作業がクラウドと自動化で運用可能に。情シスは「管理から設計」へ役割をシフト。
  • アウトソーシングの功罪:複雑なシステムの開発・運用は外部委託で効率化できる反面、内製化が求められる分野(DX、AI活用、業務要件の抽象化など)との境界線が曖昧に。
  • 戦略的役割の強化:単なるIT運用から、ビジネス戦略に直結する意思決定支援、プロジェクト推進、ガバナンス設計など、社内コンサルタント的な役割が拡大。CIOやCDO(Chief Digital Officer)との連携も重要に。

情シスにも求められる迅速な意思決定

情シスは、単に表面的な人数減っているのではなく、求められる役割が大きく変わっています。例えば、意思決定はその一つ。これは、経営層だけの話ではなく、情シスにも求められている重要なタスクです。リープリーパーの記事でたびたび解説しているように、意思決定は質だけでなく速度が組織の競争力を左右する時代です。

ITシステムの管理・運用だけでなく、顧客への安定した価値提供、そして新しいイノベーションのためには、テクノロジーを活用してスピーディーに対応することが不可欠です。

  • データ分析による迅速な意思決定:リアルタイムデータの活用により、根拠のある意思決定を短時間で
  • AIと自動化による業務効率の向上:AIとローコードを活用したプロセス最適化が、意思決定の精度を向上
  • IT × 業務要件の翻訳力:社内外への幅広い展開設計と提案、人材育成まで視野に入れたマネージメントスキル
  • OODAループの高速化:観察→方向付け→決定→行動で、変化に対応する継続的な調整と素早い判断が必要
  • セキュリティーとコンプライアンスの両立:複数の選択肢を即時に比較し、リスクを正しく判断する技術の活用

少人数でも巨大システムを開発・運用できる鍵

「育てようと思っても、途中で辞めていく」「人が辞めても、次が入ってこない」「ギリギリの人数で何とかこなしているうちに、それがデフォルトになった」…よく聞く話は、情シスも例外ではありません。

その一方で、ローコードとAIに代表されるテクノロジーの進化により、情シスはこれまでよりも少人数で運営が可能になっています。ただし、だからといって仕事が劇的に減ったり楽になるわけではないのが、なかなか辛いところ。

元々、人でなくてもよかった非効率な作業や、もはや人間には不可能な量と質のタスクは、ローコードとAIに処理を任せることで、情シス担当という人間でなければならない価値が変わりつつあります。情シスとしての迅速な意思決定はその一つ。

企業が競争力を維持するには、データを活用した経営判断の精度向上が不可欠で、それを支えるシステム開発・運用の最適化にも、熱い注目が集まっています。


企業の意思決定の最適化を現場レベルからサポートするBlueMemeは、何を社内で内製化し何をアウトソースできるか、御社に最適な提案が可能です。豊富な実績を元に、経営層の希望と現場の実情のマッチングにも自信があります。どうぞ、お気軽にご相談ください。

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