もうただのアプリ連携じゃない!APIの7つのトレンドをチェック!
前回は、API (Application Programming Interface) の基本情報を紹介しました。APIは、いろいろなサービスやアプリケーション、データベースを接続して、横断的に便利に使える機能です。全ての機能を一つの環境の中に抱え込むのではなく、必要な機能は外部と相互に連携し合うことで、開発効率や柔軟性をアップさせたり、ユーザーが使い慣れた機能を提供することで、CX(ユーザーエクスペリエンス)の向上にもつながります。
技術的な進化に合わせて、実はAPIにもトレンドがあります。今回は、それをチェックしてみましょう。
APIのトレンドを把握することの重要性
まず、企業がAPIのトレンドを把握しておく主なメリットについて考えてみましょう。
- 十分な意思決定:ビジネスにどのサービスやテクノロジーを使う・見直すべきか、適切に判断できます。
- ビジネスチャンスの拡大:自社サービスに最適なAPIを利用・管理・開発することで、新しい機会に最適化できます。
- 既存のAPIインフラの把握:自社が利用している環境をチェックし、セキュアに保つのに役立ちます。
- サービス同士の連携拡大:従来は不可能だったSaaSの組み合わせが新しく実現することで、可能性が拡がります。
- 効率性の向上:APIを利用することで、タスクやプロセスを自動化することで、効率と生産性の向上やコスト削減につながります。
- 顧客体験(CX)の向上:APIを使って、顧客によりパーソナライズされたサービスを提供することで、顧客体験(CX)を向上させられます。
API関連で知っておくべき7つのトレンド
トレンド1:生成AIとマシンラーニングの進化
多くの人が真っ先に思い浮かべるのは、生成AIとの関係かもしれません。プログラミングにChatGPTが応用されて話題になっているように、新しいAPI開発の世界でも、AIの重要性が増しています。
例えば、下記の例ではChatGPTがAPIの仕様が書かれたドキュメントを正しく理解し、そこからAPIのリクエストを自動生成しています。しかも、グラフィカルなUIで直感的に操作しています。
既存の資料から必要な仕様を洗い出し、使われる傾向を監視したり、より効果的な改善ポイントを提供することで、エンジニアが作業に費やしていた時間とリソースを大幅に節約できます。これはまさに、APIのローコード・ノーコード開発です。
トレンド2:APIとチャットボットの台頭
カスタマーサポートや、Webサイトのファーストコンタクトで、ウインドウの右下にチャットの吹き出しを目にする機会も増えました。生成AIとの連携で言えば、用途の一つがチャットボットです。
チャットボットは、人間の会話をシミュレートするプログラムです。ユーザーのニーズを聞き、製品やサービスに関する質問に答えて、必要なリソースを示したり、より具体的または複雑な問い合わせには、途中から人間のオペレーターに引き継ぐような使われ方が一般的です。
チャットボットがAPIと統合することで、例えば、社内のPDFドキュメントをAIに読み込ませ、そこから適切な回答を自動生成するプログラムを連携できます。精度が高い最新の情報を、人間にとってより自然に回答することで、ユーザーに快適な体験を提供できます。
トレンド3:API-as-a-product(製品としてのAPI)
APIを、単なる異なるアプリケーション間の通信手段ではなく、一つの製品のように扱う考え方が広まりつつあります。それがAPI-as-a-productです(「AaaP」の様な略称にはなっていません)。
APIに対するこのアプローチでは、例えば、気象情報を提供するSaaS組織では、気象データのリアルタイムの天気フィードや過去の気象データ、天気予報など、アプリに基づいた異なるAPI製品を提供します。認証方式や利用可能コール数の設定、各種ポリシー、ルーティングの設定など、APIを製品として適切に管理することで、利用者は安心して自社サービスに機能を組み込めます。
トレンド4:APIアナリティクス(分析)
ビッグデータの台頭によって、企業はパフォーマンスとスケーラビリティーを改善することが求められています。APIアナリティクスとは、APIからのデータを収集、分析し、それに基づいて意思決定するプロセスです。これらのデータを分析することで、利用傾向を追跡し、エラーを特定し、API全体のパフォーマンスを向上させるられます。
トレンド5:API管理のニーズ
APIの人気が高まるにつれ、企業のAPI管理を支援するツールのニーズも高まっています。API管理とは、APIに関するドキュメントの作成や公開、文書化、管理のプロセスです。API管理ツールは、APIの利用状況の監視やアクセス制御の管理など、タスクを自動化するのに役立ちます。
トレンド6:さらなるAPIセキュリティーの重要性
APIの数と種類が増えるにつれて、APIを不正アクセスや悪用、ハッカーから保護するための対策がより重要になっています。SQLインジェクションなどの脆弱性攻撃や、DoS(サービス拒否)やDDoS(分散サービス妨害)攻撃、認証エラーによる攻撃を受けるリスクがあります。標準的な対策としては、認証や認可、レート制限、スキーマの検証、WAF(Webアプリケーションファイアウォール)ルールの設定などがあります。
▼APIセキュリティとは?| Web API セキュリティ | Cloudflare
https://www.cloudflare.com/ja-jp/learning/security/api/what-is-api-security/
トレンド7:iPaaSの台頭
APIだけでなく、チャットボットやRPA(ロボット)など、統合的なシステムインテグレーションを実現するiPaaS(integration Platform as a Service)の人気が高まっています。1,000種類以上のアプリケーションと接続する「コネクタ」を使って、条件分岐やループ処理などの複雑なロジックを自動化できます。サービス同士の連携は「レシピ」として管理され、任意のトリガーでアクションに設定されたイベントが発生します。レガシーなシステムや、RPAでは処理できない作業も柔軟に自動化できます。
ワークスペースとは? | はじめてのWorkato – YouTube
この7つのトレンド以外にも、Meta(旧Facebook)によって開発された、Web APIを開発するためのクエリ言語GraphQLの人気が高まっています。GraphQLは、API呼び出し(リクエスト)が実行されるエンドポイントが1つあればよく、直感的に記述できるアプローチです。これにより、各サービスが独立して開発され、スケーラビリティーと柔軟性が向上します。REST APIはしばらく使われると予想されていますが、Web Push API、gRPC、GraphQLといった新世代のAPIが開発者の間で人気を集めています。
APIのトレンドをビジネスに導入するには
最新のAPIトレンドを把握したら、それらをどのようにビジネスに導入するかを考えてみましょう。
- 既存のAPIを評価し、改善や置き換えが可能かどうかを検証する。
- AIを使って、API開発プロセスに関連するタスクを自動化する。
- Webサイトやアプリにチャットボットを導入し、カスタマーサポートやサービスプロモーションに使う。
- APIを不正アクセスや悪用から守るために、必要なAPIセキュリティー対策を講じる。
- オープンソースのAPIを利用して、開発コストを最適化する。
- エッジコンピューティングを活用してパフォーマンスを向上させ、待ち時間を短縮する。
- コンテナ化を利用してアプリケーションをパッケージ化し、デプロイと実行をシンプルにする。
- ローコード・ノーコード開発プラットフォームを導入し、開発者以外のメンバーでも、APIを開発・操作できる環境を整備する。
IoT(モノのインターネット)やセンサーの利用が拡大することで、デバイス同士やデータを接続できるAPIのニーズはさらに高まっています。また、エッジコンピューティングやサーバーレスアーキテクチャーなどについて考える場合でも、APIの存在は重要です。
APIの価値とは、もはや単なるアプリケーションやサービス同士の連携だけではありません。ITシステムを利用する上で不可欠なプロダクトの一つです。APIを中心としたデータ交換のサイクルは「APIエコシステム」という一つの生態系を形作っています。次回は、この話をしてみましょう。
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