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テクノロジー

TESCREAL推進派の主張と、社会倫理や格差、安全性などを巡る課題

リプリパ編集部

人類とテクノロジーの未来を示す思想の集合である「TESCREAL(テスクリアル)」。この新しい言葉は、現代社会に生きる私たち全員にとって、避けては通れない課題を示す重要なキーワードです。知っているか知らないか、ビジネスかプライベートかの区別には関係なく、全員が影響を受けることは間違いありません。

前回の記事に引き続いて、今回はTESCREALを推進するテクノロジーリバタリアン(技術志向の自由主義者)たちの主張や言動、急速なテクノロジーの進化が抱える問題や懸念にスポットを当ててみましょう。

TESCREALで象徴的な人物

TESCREALは一貫したイデオロギーではなく、ITや他の分野で影響力を持つ人々の世界観や行動を形成する、緩やかなアイデアの集まりです。そのため、哲学的・観念的、場合によっては宗教的な面すらあり、捉えどころがないとも言えます。そこで、TESCREALの話題でよく名前が挙がる業界の著名人をピックアップしてみましょう。男性ばかりなのも象徴的ですが、その言動を見れば、TESCREALをよりイメージしやすくなるはずです。

  • サム・アルトマン:OpenAIのCEO、Worldcoin創始者。「時の人」で、2023年秋の解任と復活劇は記憶に新しいところ(具体的な詳細は結局不明)。ダボス会議2024にも参加し、AIのオープンソース化についても言及して話題に。AGI(汎用人工知能)がすでに視野にあり、GPT-5では処理能力やスピード、音声処理などさらに賢くなると宣言。急進的なAIの進化には自ら懸念を示し、後述するe/accの中では比較的穏健か?
  • イーロン・マスク:TeslaやSpaceX、Neuralinkの創業者で、Twitterを買収しXに変更(して大混乱に)。火星の植民地化やブレインマシンインターフェース(BMI)の実現など、トランスヒューマニストでシンギュラリスト、宇宙主義的な願望を持つ。AIによる人類滅亡の危機を主張していたのも、単にビジネス的な遅れを挽回したかっただけではという指摘あり。
  • マーク・ザッカーバーグ:Facebookの創設者でありMetaのCEO。さまざまなプロジェクトに数十億ドルを寄付し、xRプラットフォームであるメタバースを構築し、世界をつなぐ人工衛星を打ち上げるなど、効果的な利他主義的、宇宙主義的な取り組みでも知られる。次世代大規模言語モデルLlma 3をトレーニング中で、2024年中に大規模な計算インフラを構築計画。長期的にAGI(汎用人工知能)開発とオープンソース化を宣言。
  • マーク・アンドリーセン:古くはWebブラウザーNCSA MosaicやNetscape Navigatorの開発者であり、直近はベンチャーキャピタルAndreessen Horowitzの共同創業者。2023年10月に「テクノオプティミストマニフェスト」宣言を発表し、AIが文明の救世主になり得ると主張する急進派。彼の主張も、VCというポジショントークなのでは。
  • ピーター・ティール:PayPal、Palantir、Founders Fundの共同設立者で、寿命延長、海上自治国家Seasteadingなど、外向的、合理主義的、長期主義的な見解で知られる。

人物にスポットを当てると、アメリカの心理学者ティモシー・リアリー(1920-1996)のことも思い出させます。彼は、LSDなど幻覚剤の研究で追放や逮捕などの物議を醸す一方で(E.マスク氏も違法薬物の常用が報道されました)、意識の変容状態を誘発し、創造性や幸福感、精神性を高めることで、ヒッピーカルチャーやサイケデリックムーブメントのカリスマになりました。宇宙移民や知性増大、寿命延長の構想を練り、晩年は活動の場をコンピューター分野に移し、サーバーパンクにも大きな影響を与えました。もし存命中なら、彼もまた鍵となる人物だったでしょうが、そもそも、テクノロジーによる人間の変容や拡張は今に始まったことではありません。

新自由主義やグローバリゼーションとTESCREAL

TESCREALは、大まかに以下のような共通した姿勢があります。前述の人物たちの言動は、程度の差こそあれ、これらに近いと言えます。

  • テクノロジーを、ほとんどの問題の解決策であり、機会の源泉であるとみなす技術楽観主義的態度(ソリューショニズム)
  • 幸福の最大化と害悪の最小化を重視する、功利主義的倫理観
  • 漸進的な改善や控えめな目標ではなく、根本的な変革や壮大な挑戦を目指す先見的な野心
  • 頭脳明晰な人物や富裕層、権力者を優遇し、弱者や貧困層を犠牲にする実力主義的エリート主義

これらの考えは、政府による規制を最小化し、自由経済に任せることで社会全体に富が再配分されるとする新自由主義(ネオリベラリズム、ネオリベ)や、インターネットの普及や金融自由化によるグローバリゼーションと相性がいい面があります。

トランスヒューマニズムとエクストロピアニズム

個人の最適化と自己向上を重視する新自由主義に沿った思想である。人間の能力が向上すれば、アイデアやテクノロジー、資本の流れを促進できると期待される。

特異主義

人間の知性をAIが凌駕するシンギュラリティーが実現されることは、創造的破壊であるDXと、市場原理が進歩を促進するという新自由主義的な信念にフィットする。

宇宙主義と長期主義

人類の到達範囲と将来の世代を拡大するという焦点は、グローバリゼーションや新自由主義的な見方と一致する。先進国とグローバルサウスとの間に存在する課題を解決できる。

合理主義と効果的利他主義

費用対効果やエビデンスに基づいた意思決定を重視する、新自由主義に共通する。気候変動や資源枯渇といった、地球全体の課題への対応に貢献できる。

TESCREALが直面するさまざまな課題

逆に、そこまで楽観的に捉えられない人たちがTESCREALに警鐘を鳴らしているのは、前回の記事でも触れたとおりです。特に、人権とセキュリティー問題、社会格差をさらに悪化させる可能性、文化的対立、特定のグループが使えない差別に直面するリスクは非常に深刻な課題で、すでに現実の問題が起きています。

  • 社会的不平等:「技術で強化された個人」という階級の誕生は、新たな優生思想となり、不平等なアクセスにより弱者はさらに疎外され、社会格差を拡大させる。
  • 倫理的ジレンマ:人間の性質を強化したり変化させる技術を許容する判断や利害関係、リスクと不確実性、個人の自由と社会的責任のバランスをどう取るべきか。
  • 身体の自律性と合意:遺伝子工学やブレインマシンインターフェイス(BMI)のようなテクノロジーも、身体の自律性とインフォームドコンセントの点で懸念がある。
  • プライバシーとセキュリティー:AIや遺伝子工学のような技術は、プライバシーの侵害やデータの搾取、個人データに基づく潜在的な差別というリスクを内包する。
  • 雇用の自動化・流動化:技術の進歩による自動化は、雇用をさらに多様化・流動化させ、切り捨てや奪い合い、ギグワーク(単発低賃金の仕事)の増加につながる。
  • 異文化間の対立:技術の採用や普及は、地域や社会の伝統や慣習、異なる文化の価値観や規範、個人や集団のアイデンティティー、宗教観や信仰の多様性と衝突する。

AI時代のラッダイト運動となるリスクも

AIの導入を理由に、ホワイトカラーが大量解雇されるニュースが増えていますが、実際の背景はより複雑でしょう。ただ、TESCREALが想定する急速な変化が、大きな混乱と不安を引き起こしていることは事実です。

産業構造の変化に対する抵抗は、ラッダイト運動を思わせます。1810年代にイギリスで起きたこの運動は、産業革命によって失業することを不安視した労働者たちが、織物工場の機械を破壊した抗議活動でした。

現代でも、技術の進歩から取り残される・脅されていると感じる人々たちによって、抗議キャンペーンや妨害行動、過激な暴力行為まで、さまざまな形に発展するリスクは否定できません。急進的かつ圧倒的な技術革新に対して、潜在的なリスクやマイナス面が不安視されるのは当然です。ただし、懸念や課題を指摘すること自体を、技術への無知と無理解だとレッテルを貼られる面もあるので、注意は必要です。

懸念へのバックラッシュとしての、EA対e/acc

さらに、これに対するバックラッシュ的な動きもあります。それがTESCREALの一つ「効果的利他主義(EA Effective Altruism)」に対抗する、「e/acc 効果的加速主義(Effective Accelerationism)」です。同じ頭文字の言葉遊びとして両者を区別するために、後者は「e/acc(イーアック)」という略号で示されています。

EAは、テクノロジーの進化に対して、高度かつ急激な進化は予測不可能で危険だとする慎重な姿勢です。これに対してe/accは、悲観的・保守的になる必要はなく、進歩を推進することが人類にとって最適な選択であるとする主張です。e/acc提唱者の一人は、元Google社員で量子機械学習の研究者ギョーム・ヴェルドン氏。規制を嫌うギークやナード(テクノロジーオタク)の気質にも合い、システムとマーケットの発展に任せることで、倫理的にも理想的な発展を促進できるとしています。

「テクノロジー自体に罪はない」と言い切れるか?

アメリカで銃乱射事件が起きるたびに、全米ライフル協会(NRA)が出す定型的な声明があります。

『ただの道具に過ぎない銃を悪者にしても、問題は解決できない。人を傷つけることにも、危険な状況にある人々を助けることにも使われる。銃が犯罪を犯すのではなく、人が犯すのだ。善悪を決めるのは、それを使う人間次第だ。悲観的ヒステリーを起こすべきではない』

TESCREALについて語られるとき、推進派からはこれと同じような主張が繰り返されます。しかし、一般の用途に幅広く使われるテクノロジーもあれば、明らかに特定の意図(悪意)を持って使われるテクノロジーもあり、これらを混同すべきではありません。

E.マスク氏と言えば、SpaceXが提供する衛星通信サービスStarlinkが、ウクライナでライフラインとしての情報通信を提供し、一躍ヒーローとしてスポットを浴びました(ガザや能登でも使われています)。しかし、コストを理由に提供停止を示唆すると今度は一転、世界を緊張・混乱させました。またX(Twitter)は、人々を連帯させて希望をつなぐことより、フェイクや誹謗中傷が放置されたりジャーナリストがブロックされるなど、人命を危険に曝してもいます。

TESCREALとは、テクノロジー時代の希望と不安、夢と悪夢を反映した、魅力的で挑発的な矛盾した現象です。固定化された概念でもなく、むしろ常にダイナミックに変化しています。IT企業やVCのトップ、大学教授など、それぞれの人によって考え方が異なります。また、技術を握る権力者やプラットフォーマーの気質やビジネス的な都合で、善悪どちらにも簡単に振れるのも現実です。軋轢は今後さらに強くなっていくでしょうが、賛成であれ反対であれ、TESCREALの存在と影響力は無視できません。


さて、主語の大きな話はそれとして、リープリーパーで推進しているローコード・ノーコード開発プラットフォームとTESCREALの関係も、少し考えてみましょう。そして、結局、私たちは何をどうすべきなのか?もう少しお付き合いください。

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