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働き方

未経験のIT業界で働くクラシック音楽家という異能 – 国田健さん1

リプリパ編集部

オランダのロッテルダム在住の国田健さんは、リモートでBlueMemeの仕事をしつつ、バスクラリネット奏者として音楽活動もする、プロのミュージシャンでもあります。ユニークなキャリアを持つ国田さんに、仕事のことや音楽について、いろんな話を聞いてみました。3回の連載でお届けします。

企業間を仲介する、信頼できる交渉役として

― オランダの最近の様子はどうですか?
国田:コロナ禍は、日本よりもずっと前に落ち着いています。ウクライナ戦争の影響も、今はほとんどありませんね。一時期は、光熱費が2〜3倍になるなどの報道があったり、インフレ自体は続いていますが、戦争開始当時ほどの混乱はありません。

― そうなんですね。早速ですが、今、BlueMemeでどんな仕事をしているんですか?
国田:ビジネスアライアンスマネージメント(BAM)というチームに所属しています。仕事の内容としては、BlueMemeと他企業との協業を通してビジネスを発展させるものです。基本的にはBlueMemeと協業するパートナー企業との窓口として活動し、社内外のメンバーとのコミュニケーションが非常に大切な要素です。

― かなり幅広い仕事ですよね。
国田:そうですね。パートナーシップの締結を通して新製品の発売に必要な下地作りを行ったり、共同イベントの企画、パートナーとの継続的なコミュニケーション、交渉などが仕事内容に含まれます。また、それらに付随して、社内のセールスやプリセールス、セールス・アシスタント、サービスデリバリー、テクニカルサポートチーム、法務といった様々な部署との連携を行います。取り扱い製品の大半が海外製品なので、もちろん翻訳や通訳もあります。

― 普段はオランダからリモートです。
国田:そうなんです。オランダにいるのは私一人なんですが、BlueMemeのメンバーも別々の場所にいる人が多いんで、地理的に離れているからとか、周りに同僚がいないから特に困るといったことはないですね。
入社したのは、2021年10月でした。実は、BlueMemeで今ビジネスアーキテクトとして働いているEさんが、学生時代からの知り合いなんですよ。彼はベルギーに留学経験もあるピアニストなんですが、彼が入社して一年ぐらい経った頃に、社長の松岡さんに『実は、こんな面白いヤツがオランダにいますよ』っていう話を勝手にされてたみたいで(笑)。

― そういう経緯だったんですね。音楽家とIT業のつながりが、一体どこにあったのかと思っていました。
国田:お互いにいろいろ話を聞いているうちに意気投合して、何だか急に面談、そして入社という流れでした。2022年の11月~12月に日本へ行って、その時初めて神田錦町の会社へ出社し、皆さんに初対面しました。

IT業界初体験!しかも、オランダにいたまま!!

― オランダでは、主にどんな音楽活動をしているのでしょうか?
国田:ロッテルダム港沿いに「バタフィアハウス」という非営利団体の施設があるんですが、そこをメインに活動しています。財団がスポンサーになっていて、アーティストはいつでも、365日24時間無料で使えるようになっている、素晴らしい施設です。
録音スタジオもあれば機材もあるし、スタッフもいます。チームがあるので、コンサートを企画してやりたいってなったら、Webチームやソーシャルメディアチームが告知してくれますし、チケットの販売システムもあります。

ロッテルダム港沿いにある非営利団体の施設「バタビエハウス」
アーティストはいつでも、365日24時間無料で施設を利用可能

▼Batavierhuis|Batavierhuis公式サイト
https://www.batavierhuis.nl/

― 羨ましい!インキュベーション施設みたいなところですね。
国田:そうです!音楽系に特化したインキュベーション施設です。
管理者としては財団の人がいるんですけど、実際にやることは全部現場に回して、各メンバーが自律的に動いていくスタイルです。そういう環境で、どうやってタスクを効率的に回していくかというのは、プロジェクトマネージメントのノウハウが役に立つんです。出てきた沢山のアイデアを整理し、具体化させていくプロセスには、プロジェクトマネージメントの知見が生きています。

― そんな素晴らしい環境があるとはいえ、コロナ禍のヨーロッパは、やはり大変だったんじゃないですか?
国田:はい。実はその頃、ヨーロッパもコロナ禍に襲われて、日常のいろんなことだけでなく、自分の音楽活動も全部ストップしてしまったんです。当時、駆け出しのフリーランスとしては、単発で入ってきた仕事が止まったり、大事な人のつながりが疎遠になったのは本当に辛かったです。しかも、その先どれぐらい続くのか見通しが全然立たないわけです。
政府からの公的支援はあったとはいえ、いつまでもこれじゃいかんなと思っていたところでした。そんな状況もあって、そろそろ日本に帰らざるを得ないかと思ってたところに、EからBlueMemeの話を聞かされたという次第です。

― なるほど。国田さんの場合は、オランダ在住の音楽家のまま、IT企業の一員になった、と。
国田:社長の松岡さんに、『日本へ帰りましょうか?』って話をしたら、『そのままオランダに残っててほしい』と言われたんですよ。それで、じゃあ、とにかくリモートのままやってみようということで今に至っています。

― 日本でも、必ずしもコロナ禍だけが原因ではないでしょうが、音大や芸大の学生たちの進学や就職の苦労は見聞きする機会が増えた気がします。
国田:やっぱり、音楽家を志す人たちが、音楽で食べていくのは現実にはなかなか厳しいです。音楽系の大学を卒業して、オーケストラとかそういう音楽団体に所属したり、音楽教育で教える側として携わる割合って、5%ぐらいでしょうか。そういう立場なら、マネージメントの知識は必ずしも要りません。
一方、残りの約95%の人たちは、何らかの形で自分でプロジェクトを企画して運営していくことになりますが、残念ながら今の芸術系の教育って、そこまでカバーしきれていないんです。企画の立て方や資金集め、宣伝などの知識は全く持ち合わせていません。

― その部分は、BlueMemeで今やっている経験や知識が役に立っている、と。
国田:はい。そんな現実もあるので、将来的には、ITのノウハウを活かした音楽系のプロジェクトの立ち上げや、楽団・団体のコンサルティングなんか、できるんじゃないかなぁとは思ってます。

IT業界未経験の芸術家という強み

― ちなみに、その頃ってITシステム開発のナレッジとか経験とかあったんですか?
国田:全くないですよ!すべてが未経験でした。IT業界どころか、そもそも企業に就職して働くこと自体が初めてでしたから。

― それにしても、大胆な決断でしたね!未経験のチャレンジって、ものすごく勇気が要る決断だったんじゃないですか?
国田:よく言われるんですが、元々、ビジネス的な活動には興味があったんです。それに、ビジネス活動と芸術活動って、実はそれほど差異がないと思ってるんです。

― というと?
国田:BlueMemeには、最新技術で常識を変えていく企業文化や理念があって、それは芸術や文化が辿ってきた歴史と重なる気がしています。マイクロマネージメントされずに、結構好き放題にしてくれるので、自分で考えて自律的に動けるのも自分には合っています。

― とはいえ、提供するサービスの技術面は、ある程度把握してないといけないわけですよね?
国田:そうですね。最初の頃は確かに大変だったんですけど、テクニカル系のナレッジを自分なりに調べたり、実際に使ってみたり、教えてもらいながら、非エンジニアとしての最低限の情報は把握していってます。

― なるほど。ビジネス的な交渉や調整スキルについては、それなりに自信があったと。
国田:はい。新しい技術を日本の市場環境に合わせて活用するために、国内外の企業同士の交渉を仲介するようなポジションは、業界や業種、環境、言語も全く違うとはいえ、その世界の本場で12年間揉まれてきたスキルが活かせそうな気がしました。
見込み顧客から、実際の顧客になってもらうナーチャリングを通じて、市場をさらに展開していく。社内で研究開発し、自社の開発の中に組み込んで自動化を進め、販売していく。長期的には、会社の成長に携わっていくビジネス戦略を立てる。そんな流れも、実はそれまでやっていたことに通じているとも感じました。

― ファンを獲得して良好な関係を築いていくだけでなく、その先も見据えていくわけですね。
国田:そうですね。例えば、BlueMemeの主力商品であるローコード開発基盤OutSystemsは、約10年程前に元々海外ベンダーから情報を得て、日本で初めて代理店販売をスタートさせました。当時ローコード技術は市場では注目されておらず、基幹システムへの使用などは想像することもできなかったようです。ところがBlueMemeは10年先の今日を見据えて製品の販売とサービス提供を開始し、今日では、DXや自動化技術が大きく注目されています。同じように現在BlueMemeでは、要件定義以外の開発工程がAIによってほぼ自動化される未来を見通し、自動化技術の研究開発や自動化技術の扱いに特化した人材育成を数年前から開始しています。こうした取り組みからも企業理念を感じ取れるのではないでしょうか。

― 国田さんの姿勢や考え方が、松岡さんの琴線に触れたんでしょうね…と、管楽器の話でいうのもアレですが(笑)。
国田:そうならいいんですけど、どうなんでしょうね。どこが響いたのか、実は今でもあんまりよくわかってないです(笑)。

働き方やマインドそのものが「アジャイル」

― 入社前後から今に至るまで、戸惑ったり、意識が変わったことは何かありますか?
国田:大きくかけ離れていることはないように思います。ゴールまでのロードマップがはっきり見えない中で、とにかくスピーディーにアウトプットを繰り返しながら物事を進めていく。自分がいろんな物事を全部はわかっていなくても、とにかくちゃんと進んでいってる、みたいな。その面白さは常々感じています。

― 確かに、仕事の進め方そのものがアジャイルですよね。
国田:そうですね。アジャイルなんて言葉も知らず、IT業界がまったく分かっていなかった最初の頃は、結構お腹痛くなってましたけど(笑)。
マネージメントの話でいえば芸術もそうなんですよ。いろいろ理想はあっても、どんどん状況が変化する中で、現実としてどうやっていけばいいかっていうのは、やっぱり手探りしていくしかありません。だから、音楽活動と今の仕事との間で、大きな違和感はあんまりないです。むしろ、プロジェクトの進め方ってこういうモノなんだなっていうのが、腑に落ちてきているイメージの方が強いかもしれません。

― でも、BlueMemeが「日本の普通の会社」だと思ってしまうと、それはそれで誤解ですよね(笑)。
国田:そうですね。BlueMemeは確かにいろいろ変わったところはありますが、多分、会社のカルチャー的にも、自分自身にも歓迎されているんだろうなとは思っています。
そんなカルチャーやマインドは、いろんな細部に反映されています。机の並べ方や配線の仕方、資料の整理、プレゼンのスライドから、建築家の名前が付いている会議室、投資家に公開している成長戦略に至るまで、常識をアップデートしていくスタンスには一貫性があると感じています。

この記事でインタビューをした方

国田 健 / Ken Kunita 
バスクラリネット奏者 × IT
オランダ・ロッテルダムでバスクラリネット奏者として活動する、メーカースペース「Het Batavierhuis」専属のアーティスト。BlueMemeで活動する以外に、音楽出版社Muse Pressにも所属。芸術家の資質とITの知見を活かした、新しい音楽家の在り方を模索中。

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