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カルチャー

DJとはライブでマイテープを作っていくようなもの―DJ Tokinaga 2

リプリパ編集部

DJが趣味という技術トレーナーのDJ Tokinagaに、DJについての基本的な話から最近のトレンドといった話を幅広く聞いています。前回は、ひと言でDJといっても、いろんなプレイスタイルがある話や、自身がDJに興味を持ったきっかけなどについて聞きました。さて今回はどんなミックスを聞かせてくれることでしょう。

前回からの流れでお楽しみください。

ライブで「マイテープ」を作って聞かせる楽しさ

― 前回は、初めて買ったプレーヤーが、ビニールレコードではなく、CDをプレイするCDJだったという話を聞きました。それは、スクラッチなんかもできたんですか?
Tokinaga:いや、僕が買った機種はスクラッチはできなかったんですけど、BPM(テンポ)を調節したり、フェードイン・フェードアウトで曲をつなげることはできました。

― なるほど。
Tokinaga:僕は、どっちかって言うと曲のつなぎをやりたくて。多分、皆さんも経験があると思うんですけど、自分のお気に入りのミュージックテープとか作るじゃないですか、いろんなCDからお気に入りの曲を録音して。あんな感じです。

― マイテープ的な!?てか、Tokinagaさん、そんなのやってた世代なんですか?
Tokinaga:もちろんです。録音して友達に貸したりとか、この曲が良かったから聞いてみてとかって、その延長なんですよね。

― 凝りまくった「俺様ミュージック」の自己満足は、映画『バービー』を見た世の文化系男子には、なかなか厳しいモノがありますが…でも、わかり過ぎます。ほぼ徹夜で作ってデート中眠くなる、本末転倒のような。
Tokinaga:でしょう?例えば、この曲の出だしはあんまりかっこよくないけど、途中のここがすごく良いとか。歌の部分は別にそんなでもないんだけど、イントロ部分がめちゃくちゃ良いとか。そういうところをつないでいくと、自分なりのかっこいいところだけで構成できるんです。

― 完全に編集の世界じゃないですか!でも、そういうのって事前に仕込んどくんじゃなくて、その場でライブでやるんでしょ?…ということはまさかの、マイテープのライブ編集!?
Tokinaga:そうです。でもその当時、僕がやりたかったのは、1時間くらいのミックスを作って、友達に渡したりすることだったんです。当時はメディアとしてMDを使ってたんですけどね。

― ヤングなガールズとボーイズのために一応解説しておくと、SONYが規格化して1992年に発売した「ミニディスク(略称MD)」という録音再生用メディアがあったんです。70 mm角ほどのプラスティックケースに回転盤が入った外観で、カセットテープに代わるメディアとして一時代を築きました。驚きましたが、今でもAmazonで売られてるんですね!Tokinagaさんは、このMDにCDからの再生をライブで録音していった、と。

▼ミニディスク – Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9F%E3%83%8B%E3%83%87%E3%82%A3%E3%82%B9%E3%82%AF

Tokinaga:はい。予め横にCDを順番に積み上げておいて、CDの何番目のどの曲を使うかは事前に決めておくわけです。この曲はここからここまで、この部分で次の曲の頭を出して、みたいな感じで、CDを次々に入れ替えてはつないでっていうスタイルでやってました。

― ちなみに、その当時の音源って残ったりしないんですか?
Tokinaga:当時のやつは残ってるかな。実家に行って漁ったら多分MDはまだあるけど、さてどうやって再生するんだという状態でしょうね。

― メディアって、先祖殺しの歴史ですもんねぇ。

ヒップホップ誕生50周年の節目に

― MDの話も出ましたが、DJって完全に、音楽がある特定のメディアに固定されたからこそ、可能になった音楽表現だと思うんですよ。それも、富裕層ではなく、一般市民が気軽に入手できる媒体で。
Tokinaga:確かに、メディアとの関係はあると思います。ナマ演奏にしても、録音にしても、時代や文化で変わってきたわけですから。

― ライブ演奏しかなかった時代って、プレイバックの手法を変えることで、マッシュアップとして全然違うものができるなんて、思いもしなかったはずなんですよね。
Tokinaga:1973年8月11日、クール・ハーク(Kool Herc)っていうジャマイカからの移民が、ニューヨークのブロンクスでとある伝説のパーティーを開催したんです。”Back to School Jam” という、妹の制服の代金を稼ぐために、自宅にあったサウンドシステムを使ったパーティーだったんです。後にこの日がヒップホップの「ファーストディ」、そして彼は「DJの父」とまで呼ばれるようになりました。

― そして今年がちょうど、ヒップホップ誕生50周年!

Tokinaga:そうなんです。クールが発見したのは、人がどんな時にエモーショナルに踊るかっていうと、実は、曲のサビの部分じゃないってことでした。曲のサビとサビの間で、ブレイクって呼ばれるパーカッションとかリズムだけになる部分で、踊りがすごく盛り上がる。だから、そこだけつなげていけば、めっちゃ盛り上がるんじゃないかって考えたんです。そのブレイクをどんどんつなげていくのを、ブレイクビーツって呼ぶんです。

― おーっ!
Tokinaga:ブレイクビーツは、こっちのレコードでブレイクの部分が終わりそうになったら、こっちのレコードでまたブレイクに差し掛かる部分をつなげて、ずっとそのブレイク部分をループさせるわけです。例えば、こんな感じに。

Tokinaga:これは、どれぐらいの時間でその場を沸かせるかっていう、ちょっとバトル的な要素があるんですよ。だから、どんどんどんレコードを替えながら盛り上がっていってますね。

オーディエンスとの適度な距離感

― これまで話を聞いてきて感じているんですが、Tokinagaさんって、顔が見えない多数のオーディエンスを湧かせるというより、何となくでも顔が見える・知ってる人たちに聞かせるのを楽しんでるっていう印象を受けてます。
Tokinaga:そうですね、確かに最初は、クラブDJみたいな大人数が入るハコで客をノリノリにさせる!みたいな感覚は全くなかったですね。

― そうなんですね。
Tokinaga:それどころか、人前で回すとかも全然考えてなかったんですよ。とにかく、自分が聞きたいものを気持ちよく聞けるものを作りたいなって。

― やっぱり、誰か聞いてくれる人がいると楽しいもんなんですか?
Tokinaga:そうですね。自分で聞く用もあるし、自分が好きな感じを友達に共有するのもあります。僕、自転車で遠出するのも結構好きなんで、1~2時間とか乗っても、全然苦にならないです。そんな時に、自分で聞けたら気持ちいいだろうなって思って。同じように、友達が『すごく良かった』とかって言ってくれたら、それはそれで嬉しいです。

― 例えば、DJで曲をミックスする時、『この曲は、こっちの曲と合わせやすい!』っていうのは、聞いた瞬間のインスピレーションなんですか?それとも、『いつか、この曲に何か合わせたい』みたいなストックしていく感じとか?
Tokinaga:どっちもありますね。曲を聴いた時に、『この曲は、あの曲とつなげたら結構よさそうだな』とかってイメージが出てきたりするんですよね。もちろん、自分のお気に入りの定番曲もあるし。

― 技術的・音楽的なことはわからなくても、DJが卓上でいろんなスイッチャーやダイヤルをコントロールしながら、自分がノリノリで楽しそうにリミックスしてる姿は、それを見るのが心地いいなと感じます。


ヒップホップ誕生50周年のスペシャルイヤーに、まさかの「マイテープ」という、古代のワードが飛び出すとは思ってもいませんでした。黒歴史でなかったら、いや、黒歴史だったらなおさら、いつかぜひ「DJ Tokinagaビギンズ」的なアーリーミックスを聞かせてもらおうと、勝手に願ったところです。

熱いビートはまだまだ続きます!

この記事でインタビューをした方

DJ Tokinaga
元パーソナルトレーナーのDJ

中学生の頃にHip Hopに出合い、大学生からお宅DJに。社会人になってから人前でDJを行うようになり現在も月1でDJを行っている。現在はHip Hop、R&BにアニソンやJ Popを全てアナログレコードでミックスするプレイスタイル。家族で新宿や渋谷にでかけた時にレコード屋に寄らなくていいの?と聞いてくれる妻に感謝!!

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リープリーパー(略称:リプリパ)編集部です。新しいミライへと飛躍する人たちのためのメディアを作るために、活動しています。ご意見・ご感想など、お気軽にお寄せください。
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